道枝駿佑が自身のパブリックイメージを覆す!『マルス』脚本家&演出家が作品に込めた思いを明かす

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武藤将吾、平川雄一朗
武藤将吾、平川雄一朗

道枝駿佑がゴールデン帯連続ドラマ初主演を務める青春“クーデター”サスペンス『マルス-ゼロの革命-』(テレビ朝日系、毎週火曜21:00〜)。本作の脚本を担当する武藤将吾と演出の平川雄一朗に取材を実施。2人が語る本作の見どころとは?

本作は道枝演じる謎多きカリスマ転校生・美島零(みしま・ぜろ/通称:ゼロ)に導かれ、「マルス」という動画集団を結成した落ちこぼれ高校生たち7人が大人社会に反旗を翻していく姿を描く爽快な新感覚青春ドラマ。桜明学園高校3年生・逢沢渾一役で板垣李光人、貴城香恋役で吉川愛、二瓶久高役で井上祐貴、桜庭杏花役で横田真悠、呉井賢成役で山時聡真、桐山球児役で泉澤祐希が出演。さらに、ゼロと対峙する大手通信事業グループ・クロッキーコミュニケーションズの社長にして、日本におけるSNS産業のカリスマ的存在でもある國見亜門役で江口洋介が出演する。現在民放公式テレビ配信サービス「TVer」では、本編のほか、記者会見の様子、ダイジェスト、キャラクター動画など多数配信中。

武藤は『3年A組―今から皆さんは、人質です―』や『家族ゲーム』、映画『クローズZERO』(2007年ほか)といったヒット作を世に送り出してきた人気脚本家。その武藤が今回、タッグを組むのはNetflixドラマ『御手洗家、炎上する』や、『義母と娘のブルース』『ROOKIES』などを手掛けた実績豊富な平川監督だ。2人は今後の展開や作品に込めた思いなどを熱っぽく語ってくれた(※取材は第1話放送後に実施)。

※以下、ネタバレが含まれますのでご注意ください。

印象的なシーン

――第1話~第4話のこだわった場面、印象に残っている場面があれば教えてください。

武藤:1話はマルスの登場の仕方だと思います。あのシーンをどう具現化してくれるのだろうという気持ちがありました。オンエアで見たときに、自分が思っていた以上のマルス感というのを感じて嬉しかったです。演出するのが難しいシーンですし、書いていて無責任だと思ったんですが、やったことがないのでやってみたいという思いがあってああいう形にしたんです。1話で実際に確認して、監督、役者共に一丸となってやってもらえたというのがすごく印象に残りました。

2話目はラスト。普通のドラマだったら、そこはまだやらないだろうみたいなものが2話のラストで出てきます。それは、僕も「たぶん早いけどやりたい」と思っていたことで、皆さんと話し合って、それをやるかどうかも含めて話し合いで決めました。2話のラストには注目してもらいたいです。

3話はいよいよマルスと國見の対立構造が出来上がります。1、2話目は学園ものですが、3話は初めて学園から飛び出していく話になります。3話で作品のスケールが急に変わるところをチェックしていただきたいです。

4話は動画集団をやっているものとして、いい面もあれば悪い面もあるというところを描いたつもりです。ネットの表と、裏の裏の部分が露呈されていく。ヒーローとして描かれていたマルスが、ここで一気に、みんなに祭り上げられていく……。ある種の分岐点で、これからの國見との対決という意味でも重要な回になっていると思います。ヒーローとして駆け上がった彼らの転換期みたいなところが注目ポイントです。

――平川さんは1話の演出を終えて印象的な場面はありますか?

平川:1話はやはり武藤さんの書かれた長台詞です。2話はゼロという人物の奥行きが見える回なのかなと僕は思っているんです。もちろん謎だけだと見続けられないので、「こういう人なんだな」という人間性が想像ができるところが2話の見どころです。ただぶつかっていくだけでなく、そこには根拠があるという道枝くんが見れる。「普通のドラマにしたくない」と、武藤さんはすごくチャレンジングなんです。2話以後も印象的なシーンがたくさんあります。

道枝駿佑の魅力

――主演の道枝さん演じるゼロはいかがだったでしょうか?

武藤:キャスティングを聞いた時、思い描いていたゼロと彼のパブリックイメージがかけ離れているなと思っていたんです。彼がそれをどうひっくり返してくれるか、すごく楽しみにしていました。監督と2人で作り上げていく中、たぶんご本人もいろいろと悩まれただろうなと思います。自分としてはクリエイティブな部分を抜きにして、皆さんが思っている道枝さんの役者像をひっくり返せることに喜びを感じながら脚本を書いていたので、それをワクワクしながら確認していました。実際に、オンエアを見た時に、皆さんが知らない道枝さんを表現できたのではないかというところに強く喜びを感じました。

武藤将吾、平川雄一朗
武藤将吾、平川雄一朗

――平川さんは実際に道枝さんと現場で撮影をされていました。

平川:実はクランクイン前、道枝くんと相撲をとったんですよ(笑)。道枝くんは大きいけど、細くて優しそうだし、どのくらい強いのかなって。その時は負ける気がしなかったです。

この間アフレコの時、最後の「宣戦布告だ!」の部分を撮り直したんですが、自分から「もう一回いいですか」と言って来て、録り直したときに僕はぞわっと鳥肌がたちました。「道枝くんがどんどんゼロになっていく」と。若いので成長がすごいんです。日々ゼロになっていく。今は相撲とろうなんて思わないですよ。負けるのがわかっているから(笑)。

――道枝さんの役者としての成長を感じたということですね。

平川:成長をすごく感じました。強くなっていくし、たくましくなっていく道枝くんを日々見ていると、こちらも頑張ろうと思うし、そんな道枝くんの作品への熱が視聴者にもきっと届くと思います。みなさんに、こんなに(道枝が)頑張っているんだから、僕も頑張ろうという気持ちで見てもらえたら嬉しいと思います。

――キャラクターに関して、7人の描き分けとかキャラクターの描き方、描写で意識しているところはどこですか?

武藤:ゼロに関しては、カリスマ性でしょうか。あまり饒舌に語るというよりは、「この人は一体何を考えているんだろう」というミステリアスな部分があって、道枝さんのビジュアル含め、それがすごく彼の魅力的な部分だと思うんです。その対比として、渾一がみんなの思いなどを代弁する。視聴者が共感するのは渾一の心情だと思います。ゼロに振り回される渾一でありつつ、そこから渾一も成長していく。そのあとのメンバーについては、2話以降でそれぞれのキャラクターに焦点が当たるので、個々のキャラクターを知ってもらい、好きになってもらえたらいいなと思っています。

――そんなキャラクターを若手俳優が演じていますが、彼らに演出する上で、意識されていることはありますか?

平川:「とにかく一生懸命やってほしい」、それだけですね。キャラクターを生きるために必死に役に没入するというか、なりきるというか、なんでもいいから爪痕を残すみたいなことをしないとキャラが立ってこないので。それと、ずるくないとね。爪痕を残すことは大事なんです。

伏線や注目ポイント

――本作を書くにあたって参考にしたもの、資料はありますか?

武藤:参考にしたものはあまりないです。自分が見たいと思ったもので、他でやっていないことをしようという思いが強かったんです。設定が新しいというより、テーマは不変でという……。そうしないと視聴者はついてきてくれないと思っていました。

携帯やネットに費やす時間が多くなると見落としてしまうものがあるということや、別のことにその時間を使えたらもっと豊かになるかもしれないということを伝えたかったんです。もちろん、今を否定するわけではなく、今を肯定しながらです。「こういう友達付き合いもある」「こういうぶつかり合いもある」「それで傷つくこともあるけど、後々得られるものもある」ということを。

ある種、今の子たちにとってリアルではないものを、若い人たちが演じることで作品の中ではリアルになる。こういう高校生活を送ってみたいなという仲間感が芽生えてくれたらいいなと。それが個人的なテーマです。

武藤将吾、平川雄一朗
武藤将吾、平川雄一朗

――平川さんはどうですか?

平川:プロデューサーからこの若者のお話をもらった時は、少し躊躇したんです。もっと若い人がやったほうがいいのではないかと思うところがありました。でも、実際にやっていくと、僕らが今、若者のツールを使って、若い人たちに伝えたいことを伝えることができるんだということを、やってみて強く感じました。

今、演じている人が逆に僕らぐらいの年齢になった時に、また新しいツールが出て来て、それを使って、教わってきたことをさらに下の世代に伝えることが重要なのではないかと。大きなフィクション作品ではあるのですが、演じる一人ひとりはリアリティを持ってやってほしいし、演じる人たちの心がけが本物であってほしいなと思います。そこは演出面でもすごくこだわって作っている点です。ドラマを見てぜひそういう部分にも注目して見てもらえたら嬉しいです。

――1話完結のドラマですが、改めてドラマ全体の見どころを教えてください。

武藤:このような話を書くときに、昔だったらデジタルやネットの世界と、高校生の青春みたいなものは、切り離したり、あえて対比で描いたりするのが普通だったんです。でも、(社会の変化もあり)今は切り離せない時代です。そんな状況の中、どう人と人が向き合っていくのかという普遍的な物語が描かれます。一方で、クーデターサスペンスのような感じで、学園ものとしてスタートしていますが、話の規模がどんどん大きくなってもいく。そのスケールとともに、謎がストーリーとどう関わっていくのかというところは、こちらも頭を悩ませて作りました。そういうところを考察しながら、楽しんで見ていただけると嬉しいです。

平川:武藤さんがおっしゃったように考察です。武藤さんの頭の中にしかない謎が散りばめられていて、僕も追いつくのが大変です。これからみなさんにも一緒に謎を考察してほしいですね。

1話の最後に「ぶっ壊す」「最後まで付き合ってもらうぞ」と言う展開があって、僕も「え? どんな最後なんだろう」って(笑)。僕が視聴者として、どんな最後になってしまうんだろうと不安を感じました(笑)。ですが、そういう風にいろいろなことを考えながら、感じながら、みなさんにも見てもらえたら楽しいのかなと思いました。

――考察というキーワードが出たので聞きますが、伏線ポイント、注目すべき点はありますか?

武藤:1話では今のメンバーがなぜ集められたのかとか、最後、國見が画面を見て何を思ったのかが描かれています。國見の表情が何を示すのかは後々書かれていくのですが、放送を見ると、その伏線となる登場人物の表情がよく撮れているなと思いました。画面を見ると(出演者の表情に今後の展開が)ちゃんと反映されているんです。さりげなく「こうですよ」と本で書くことに加え、「ここはさらっとしてください」みたいなことを打ち合わせの時に演出にお願いしていたんです。今回初めて演出を含めてそういうご相談もしていますが、ぜひ目を凝らして見てもらいたいです。

――表情が伏線になっているということですね。

平川:武藤さんと話していて、「え? そこ?」みたいな。國見さんとゼロの対決シーンがあるんですが、そんな2人の表情に何が隠されているのかというところを視聴者の人にも興味を持って見てもらいたいです。「ひょっとしたらこれ……」といった、僕も気づかなかったみたいなことがこれから起きますから。そこを推察してもらいながら見てもらえると嬉しいです。武藤さんに言われたことはきちんとそう撮っています。「気付く人いるかな……たぶんいないでしょ」と思いながら(笑)。

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