『不適切にもほどがある!』コンプラ重視の映像業界に苦言?規制をかいくぐる“昭和演出”は異色のテロップがカギに

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痛快なクドカンワールド全開! 1月26日放送の『不適切にもほどがある!』(TBS系、毎週金曜22:00~)第1話は、さっそく小川市郎(阿部サダヲ)が昭和から令和にタイムスリップ! ギャップや共感が止まらない、意識低い系タイムスリップコメディがスタートした。

コンプラ重視の中でも面白い作品を届けるクドカンの覚悟

「この作品には不適切な台詞や喫煙シーンがふくまれていますが 時代による言語表現や文化・風俗の変遷を描く本ドラマの特性に鑑み 1986年当時の表現をあえて使用しています」

異色のテロップからスタートしたのは、まさにコンプラ時代・令和のドラマである証。ただ、この文言があるおかげではちゃめちゃな描写も許されるんだからありがたい。だって舞台は今ではなく1986年。体罰は愛のムチ、セクハラ発言は笑って流して、タバコはどこでも吸い放題の時代を映像化している。

主人公は「地獄のオガワ」の異名を持つ中学教師の市郎。開始3分もたたないうちに学校で教師たちがバンバン喫煙するシーンが登場してびっくりした。実は阿部サダヲ、宮藤官九郎脚本の大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』で愛煙家の田畑政治を演じたときも、複数人いる車内や食事中に喫煙するシーンがあった。それに対して、「受動喫煙を世間に容認させることにもなる」と「受動喫煙撲滅機構」からNHKに抗議を受けた経緯がある。それでもあえて喫煙シーンを入れるクドカン、すごい!

向坂キヨシ(坂元愛登)、小川市郎(阿部サダヲ)
向坂キヨシ(坂元愛登)、小川市郎(阿部サダヲ)

テレビドラマにコンプライアンスがふりかざされると、逃走犯はシートベルトをきちんと締め、不良高校生たちもタバコや酒をやらないというある意味“架空の世界”しか描けなくなる。もちろん映像化においても、時代のルールで面白いものを作る、規制があるからこそ新たな面白さが生まれるという考えは一理あるが、そのルールのせいで作品としてのクオリティがぼやけてしまう状況は、つくり手や役者からしたら嘆かざるを得ないことだろう。

もしかしたら今作はつくり手として抱える現在の悔しさをなんとか晴らしたいという、クドカンなりの思いもあったのではないかと想像してしまう。だったら存分にやっていただろうじゃないか。「これが昭和だ(った)」という描写の数々を! もちろん、「今ではありえない」という前提で。

ミュージカル「話し合いましょう」開幕

まさかバスがタイムマシンだなんて。市郎がバスごと2024年にタイムスリップすることで物語は動き出した。車内タバコは今の時代NGだし、息をするように出てくるセクハラ発言もNG。市郎にとっては普段通りのこの様子はSNSで拡散され、大炎上してしまう(本人はスマホがないからお構いなしだけど)。

38年という年をまたいだことを知り、時代の変化を知る市郎。昭和のおじさんなのに、飲み込みが早く適応能力に優れていてびっくりする。そこで出会うのが、シングルマザー・犬島渚(仲里依紗)と、「頑張れ」と言ってパワハラ認定されてしまった会社員の秋津(磯村勇斗)だ。今回は特に秋津との接点を中心に描いていた。

令和にやってきた小川市郎(阿部サダヲ)はシングルマザーの犬島渚(仲里依紗)と出会う
令和にやってきた小川市郎(阿部サダヲ)はシングルマザーの犬島渚(仲里依紗)と出会う

「相手が不快に思ったらハラスメント」が今の常識。それを耳にした市郎が放つ「こんな時代にするために俺たち頑張って働いているわけじゃねえよ」にはインパクトがあった(バイトの時給が上がってないと景気をチクリとするところも◎)。寄り添えという時代の風潮も「気持ち悪い」と一蹴。根性論はかび臭いけど、案外今の若者には響いてしまうものなのだろうか。

そして突如はじまった秋津の「話し合いましょう」ミュージカル! クドカン脚本でTBSで放送されていた昼ドラ『吾輩は主婦である』でも、劇中で突如ミュージカルパートがはじまる演出だったから、違和感はないです。むしろクドカンミュージカルは好きすぎる。この物語、大切なことをミュージカルパートで伝える手法だろうか。

居酒屋で秋津(磯村勇斗)の愚痴を聞いていた小川市郎(阿部サダヲ)は…
居酒屋で秋津(磯村勇斗)の愚痴を聞いていた小川市郎(阿部サダヲ)は…

今回はいろいろな意見があるからこそ「話し合い」が大事だというメッセージがしっかり盛り込まれていた(ただ「多様性」とは差別している側も認めろとか何でも受け入れろということではなく、社会的弱者の声をすくい取ることだから言葉の使い方に注意してくれ!)。

一方で話し合いではなく拳と拳で語り合っていたのは、昭和にタイムスリップした向坂キヨシ(坂元愛登)と“ムッチ先輩”こと秋津睦実(磯村二役)。一通りやりやって、二人は満足げだ。ムッチ先輩、現在の秋津の父親だろうか。市郎の娘・純子(河合優実)が母親だとしたら市郎はおじいちゃん? そのあたりも気になる。

時代を完全再現した1986年パートにも期待

2024年に来たものの、戻れなくなってしまった市郎。これから2024年の市郎と1986年のキヨシと母のサカエ(吉田羊)、それぞれのタイムスリップをベースに別次元で二つの時代が描かれていくのだろうか。今作は令和の感覚からすると、昭和の世界観を体現した服装や髪型、街の様子を見比べらえて結構楽しい。『11PM』やセーラーズなど、時代を感じる小ネタもそうだし、20歳の尾美としのりはくせっ毛だったとか、キョンキョンで時代の変化を感じるとか、『あまちゃん』で夫婦役だった二人が80年代の象徴的に語られているのおもしろかった。

小川純子(河合優実)、小川市郎(阿部サダヲ)
小川純子(河合優実)、小川市郎(阿部サダヲ)

キヨシは昭和の利点として「テレビでおっぱいが見れる」と挙げていた。女性を蔑視するような表現や扱いは人権問題だと本当は知るべきなんだけど、そもそもキヨシの昭和あこがれは近年の昭和レトロブームの影響なんだろうか。

カルチャーとして昭和が好きでも、実際に来てみたら苦労するのは目に見えている……と思っていたけど、スケバン高校生の純子を好きになるし、体罰にも耐えていたし、殴り合いしていたし、意外に根性があってびっくりする。今の若者にとって、実は昭和は生きやすいものなのか? これからどう「粗暴で差別的でセンスのない大人たちばっかり」(サカエ談)の昭和を、魅力的でユーモラスに描いていくのかにも注目したい。

(文:綿貫大介)

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