男の「クソデカ感情」を喰らえ!『恋愛のすゝめ』が描く愛すべき男たちの友情と青春

公開: 更新:
男の「クソデカ感情」を喰らえ!『恋愛のすゝめ』が描く愛すべき男たちの友情と青春

ドラマストリーム『恋愛のすゝめ』(TBS系、毎週火曜24:58〜)がいよいよクライマックスを迎える。

歴代の内閣総理大臣を輩出してきた超名門進学校・開明学院。その生徒会長であり、創設以来最強の天才と謳われる超エリート男子高校生・鳳啓介(綱啓永)が恋におちた。だが、開明学院において恋愛は校則違反。バレたら即退学という逆風の中、鳳は初めての恋を成就させることができるのか。

これまでのエピソードを振り返りながら、『恋愛のすゝめ』が描いてきたものを語りたい。

なぜ私たちはチーム男子感に焦がれるのか

ここでクイズ。『恋愛のすゝめ』の一番の魅力と言えば何か。

多くの人は、天才・鳳啓介が恋愛の真理を解き明かすべく奮闘する姿と、ヒロイン・高田華子(矢吹奈子)との恋の行方を挙げるかもしれない。もちろんそれも面白い。カラオケで無心で『千の風になって』を歌い続ける鳳の四角四面ぶりも、華子に許婚がいることを認めたくなくて、頑なに「井伊直弼」と聞き間違える鳳の奇人変人ぶりも、最高にチャーミングだ。

タイトルにある通り、『恋愛のすゝめ』とは恋愛の物語なのだろう。だが、ここでは敢えて違う面を推したい。むしろ『恋愛のすゝめ』で私がいちばん熱くなるのは、そんな鳳の奇天烈な恋をなんだかんだ言いながら応援する友たちの姿――そう、『恋愛のすゝめ』とは、愛すべきボーイズたちの友情と青春の物語だ。

『木更津キャッツアイ』(TBS系)、『WATER BOYS』(フジテレビ系)、『Stand Up!!』(TBS系)、近年で言うなら『今日から俺は!!』(日本テレビ系)や映画『帝一の國』など。男子をメインとした集団群像劇というのはいつの世も私たちをときめかせてきた。

なぜ人は男子のチーム感に焦がれるのか。そこには、男子特有のピュアでストレートな心の躍動がある。観ているだけで平和な気持ちになれるおバカな一生懸命さがある。私たちがほしくても決して手に入らないもの。あるいは、もう失ってしまったもの。だから、画面の中にいる彼らが眩しくて仕方ない。『恋愛のすゝめ』もまたこれらの系譜に連なる作品だと思う。

その中心となるのが、鳳を囲むクイズ研究会の面々だ。校則違反である鳳の恋に、仲間たちはみんな反対していた。けれど、鳳の真剣な想いに打たれ、一人またひとりと味方になっていく。

最初の応援者となったのが、獅子丸公平(若林時英)だ。要領の悪い獅子丸は勉強合宿で赤点をとり、ひとり居残りとなる。だが、獅子丸が勉強に不安を抱えていることをいち早く見抜き、わざと自分も満点を逃して一緒に残ったのが鳳だった。鳳から自分に合った勉強のやり方を教えてもらった獅子丸は、お礼にラブレターの書き方をアドバイスする。仲間を想う鳳の気持ちが、仲間の心を動かしたのだった。

亀岡忍(ひょっこりはん)もまた、鳳に心を動かされた一人だ。幼い頃に失恋を経験した亀岡は、恋がどれだけ心を傷つけるかよく知っていた。だから、鳳の恋にも反対した。けれど、解けない難問に対して異常にあきらめの悪い鳳は、華子に許婚がいると知っても、めげずに恋を貫き通す。その狂気的にポジティブなさまに、亀岡は恋は失恋してからが勝負だと思い知る。

そして、クイズ同好会が分裂することを恐れ、最後まで鳳に味方することをためらっていた虎松草太(一ノ瀬ワタル)も、華子の許婚・鯨井孝弘(植村颯太)が元全日本ジュニアの強化選手であると知りながら、明らかに分の悪い柔道勝負に挑む鳳の姿を見て、心を変える。反対していた人が、いつしか味方になるのは物語の常套手段。王道だからこそ、やっぱり胸が昂る。それが、嘘も駆け引きもない男子高校生たちならなおさらだ。

つまり、『恋愛のすゝめ』の一番の魅力とは何か。正解は、鳳の恋を時に心配そうに見守り、時に呆れながらツッコミ、いつの間にか自分のことのように一喜一憂するクイズ同好会の友情なのだ。

男の「クソデカ感情」ほど滋養強壮にいいものはない

だが、実はこの回答だけではまだ正解だとは言えない。なぜなら、最も重要な人物の存在が抜けているからだ。鳳の一番の親友であり、鳳の恋を誰よりも反対している男。クイズ研究会副会長であり、開明学院の校長令息である龍崎賢司(本田響矢)だ。

龍崎は、恋におちた龍崎を厳しい言葉で糾弾する。なぜ龍崎はこんなにも鳳の恋に反対なのか。てっきり龍崎が鳳を理想の偶像に押し込めているからだと思っていた。鳳は、龍崎の上をいく天才。地位も学力もある龍崎は、きっと初めて自分より優秀な存在に出会ったんだと思う。そんな鳳が恋愛なんて陳腐な戯れで堕落してしまうことが許せなかった。鳳には、いついかなるときも超えられない壁でいてほしかった。そんな肥大化した崇拝が、龍崎を錯乱させているのだと思っていた。

けれど違った。第6話で龍崎は鳳に告白する。龍崎は夢見ていた。鳳が、いずれこの国を背負って立つ大人物になることを。そして、そのときは自分が右腕として鳳を支える。鳳の夢が叶うことが龍崎の夢であり、鳳の幸せこそが龍崎の幸せだった。もはやライバル心でも嫉妬心でもない。言うならば、内助の功。山内一豊の妻である。鳳と『功名が辻』をやるのが龍崎の理想なのである。そんな慎ましやかで壮大な夢が、恋愛で壊されることが嫌だった。だから、鳳の恋路を邪魔しようとした。

「クソデカ感情」という言葉が巷に広まって久しいが、まさにこれぞ「クソデカ感情」。そして、男の「クソデカ感情」ほど滋養強壮にいいものはない。

改めて最初のクイズに答えよう。『恋愛のすゝめ』の一番の魅力と言えば何か。正解は、龍崎から鳳に向けられる「クソデカ感情」である。

そして、龍崎の「クソデカ感情」が結果的に鳳を破滅へと追いやった。恋愛していることが発覚した鳳が退学処分を免れる唯一の方法は、生徒総会で恋愛をやめると誓うこと。そのために龍崎は華子が鳳を振るように仕向ける。画策通り鳳は失恋。生徒総会で「少年よ、恋心を捨てよ」と宣言する。だが、鳳に下された処分は、退学より重い除籍。鳳の幸せを願った龍崎の行動は、鳳から恋も勉学も奪うこととなった。

ここから鳳がどう復活を果たすかが最終回のポイントだ。きっと何らかの形で復学を果たし、華子との恋も叶えてくれることだろう。クイズ同好会の面々とも楽しくクイズに励む日々を送るに違いない。

だが何より気になるのは、龍崎だ。龍崎は、鳳への「クソデカ感情」にどう始末をつけるのか。鳳は、龍崎からの「クソデカ感情」にどう応えるのか。願わくば、龍崎が答えようとしたクイズ問題を鳳が横からかすめとり、「ふ…さすがだな、鳳!」とニヤつく龍崎が見たい。内閣総理大臣になった鳳の横で、得意げに微笑む龍崎が見たい。

男女の恋もいいけれど、今この国の平和に必要なのは、男同士の「クソデカ感情」なのだ…!

PICK UP