娘を殺した犯人を家族に迎え入れたワケ――『ブラックファミリア』福田Pが裏側を語る

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娘を殺した犯人を家族に迎え入れたワケ――『ブラックファミリア』福田Pが裏側を語る

板谷由夏が主演を務める『ブラックファミリア~新堂家の復讐~』(読売テレビ・日本テレビ系)の最終話の見逃し配信再生数が12月8日~10日の3日間で78万回を超え、全10話の1週間見逃し配信再生数が、平均100万回を突破した。

同ドラマは、『ブラックスキャンダル』『ブラックリベンジ』に続く“ブラック”シリーズ第3弾、完全オリジナルの復讐ミステリー作品。

深夜ドラマとしては異例の数字となり、大好評の『ブラックファミリア』。まだまだ見逃し配信中の本作に対する思いや、放送を終えた今だから明かせる秘話を含む、福田浩之プロデューサーからのコメントを紹介。福田プロデューサーや制作陣は、本作、そしてその衝撃の結末にどんな思いをこめたのか? 

※以下、ネタバレに関する内容を含みますのでご注意ください。

<福田浩之プロデューサー コメント>
5年前の9月末に病気で亡くなった妻が最後に見た映画が、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』でした。その中で、僕も妻も大ファンだった板谷さんが病気で亡くなる役を演じられており、彼女のために学生時代の友人たちが集まるというそのストーリーを見て、妻も映画と同じように最後に同級生たちに会ってから亡くなりました。妻も自分も、最後に『SUNNY』のおかげで同級生たちに会えたこと、勇気づけられたことをとても感謝していて、そのきっかけとなる役を演じられていた板谷さんに、いつか絶対に御礼が言いたい、と個人的に思っていました。

そんな時に、自分がこれまでに手掛けてきた“ブラック”シリーズの最新作を……という声をいただき、これまでの作品とは違う、復讐の動機として新しいテーマを持ちたく、自分に子供がいることもあり、子供を亡くした母親の復讐、というのを思いつきました。その復讐劇の内容が、板谷さんに話をするならぴったりだと思い、「板谷さんと仕事をしたい」「“ブラック”シリーズの新作をやりたい」の2つが重なってできた作品が、この『ブラックファミリア~新堂家の復讐~』です。奇跡的なタイミングが重なり、思い入れの強い作品になったこの『ブラックファミリア』を、本当に地上波だけでなく配信でも、多くの方に楽しんでいただけて嬉しい限りです。

最終話のラストシーン、新堂一葉は娘の梨里杏(星乃夢奈)を殺した真犯人である早乙女葵(瀧七海)を、新堂家に迎え入れます。葵に梨里杏の死を本当の意味で償わせるためには、「“愛する”人を理不尽に亡くす苦しみ」を知らないといけない。ですが……葵はこの段階で、「死にたい」「殺して」と自分自身を愛せておらず、さらに母親から受けていた愛情も歪んでいて、家族愛も理解できていなかった。そこで一葉はまず、母親としての愛を葵に注ぐことで、家族愛とはこういうものなんだ、という意識を葵に植え付けようと考えます。

そうすることで、早乙女麗美(筒井真理子)が出所する頃には、きっと葵は麗美よりも一葉のことを母親として慕うようになっている、それが麗美に対する更なる復讐にもなるからです。そして、最終的には、一葉によって真の家族愛に満たされた葵が将来、愛する人と結ばれ自分の子供を産んだ時に改めて、「あなたが自分の子供を大切に思うように、私にとってその大切な子供は梨里杏だった。あなたはそんな存在を殺したのよ」という事実を突きつける。本当の意味で“愛”を知った上で、初めて葵は自分がした罪と向き合い、償うことが出来る、と一葉は考えたのです。

歪んだ愛しか知らない葵だから「愛しているから殺した」なんて今は言うけれど、「本当の愛を知ったらそんなことはできないでしょう?」と、一葉は伝えたかった。愛をきちんと知った葵の償いはどんなものなのか? そして、その結果、一葉が葵に対しどんな行動を起こすのか? つまり、一葉にとって納得できる復讐の対象へと育てるべく、葵にこれから自ら愛情を注いでいくこと、それが一葉にとっての新しい復讐のスタートなのです。

ラストシーンの最終カットがタイトルで終わりますが、これは、本作としては一旦ここで終わりだけれど、新堂家の復讐劇はまだ終わっていない、「ここからが新しい『ブラックファミリア』だ」という意味合いを込めています。

ぜひ、このラストシーンに制作陣が込めたこの真意を知った上で、もう1度最終話を見返していただけたら幸いです。きっと、最終話、そしてこの『ブラックファミリア』という作品の見え方が変わってくると思います。また新しい気持ちで、本作を楽しんでいただけたら嬉しいです。