『泥濘の食卓』齊藤京子“深愛”の毒親は加害者か被害者か?ヒコロヒーも18歳ギャルを熱演!

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『泥濘の食卓』齊藤京子“深愛”の毒親は加害者か被害者か?ヒコロヒーも18歳ギャルを熱演!

12月2日に放送された土曜ナイトドラマ『泥濘の食卓』(テレビ朝日系、毎週土曜23:30~)第7話では、尾崎ちふゆ(原菜乃華)と那須川ハルキ(櫻井海音)の共通点や捻木深愛(齊藤京子)の母・美幸(筒井真理子)の過去が明らかに。齊藤とバラエティでの共演経験が豊富なヒコロヒーも登場し、痛快な演技を見せていた。

同じ穴の狢だった?ハルキとちふゆの思い

階段から突き落とした一件以降、ちふゆの言いなりとなったハルキ。自殺を考えるほど追い詰められ、間一髪のところで深愛からの電話に救われるが、第7話では、これまで完全に被害者であったハルキも実はちふゆと似たような考えを持っていたことが判明してしまう。

こっそり捻木家に泊まったハルキは、朝ごはんを食べながら突然深愛に「将来、子供ほしいですか?」と質問。「うん」とにこやかに頷く深愛に、ハルキは心の中で「それは、誰と作るつもりなんですか。俺とですか、親父とですか。俺以外のやつだったら、そいつ殺していいですか」と問いかけ続ける。

まず、付き合ってもいないのに“俺と”という選択肢が生まれること自体が恐怖なのだが、心の中とはいえ「俺以外のやつだったら殺す」という発言が出てくるあたり、ちふゆと似たものを感じる。深愛の背中を見つめる暗い表情も相まって、ハルキの狂気が垣間見えるシーンだ。

また、深愛のベッドで一緒に寝るシーンでも、ちふゆとハルキの共通点は見られる。保健室の狭いベッドでちふゆがハルキに迫るシーンと、捻木家のベッドでハルキが深愛に迫るシーンでは、皮肉にもちふゆとハルキが同じことをしているのである。

対比するかのように、どちらも真上からベッドで横になる2人が映し出されたあと、ちふゆはハルキの頬にキスをしようとし、ハルキは深愛の唇にキスをしようとする。結果として、ハルキは逃げ出し、深愛は受け入れるという違いはあるが、交際関係や同意がないにもかかわらずキスを迫るという点においては、ちふゆとハルキの行為は同じだ。そしておそらく、ハルキは自分がちふゆと同じことをしているとは微塵も思っていないだろう。

はたして、ハルキは自分本意な行動に気づくのか。ちふゆとの関係をどうするのか。今後、もし深愛がハルキの告白を断ったら、不倫を盾にちふゆと同じ行動を取るのではないかと気が気ではない。

初めて明かされた母の過去

第7話では、これまで厳しすぎる毒親として描かれてきた深愛の母・美幸の過去も回想で明かされる。美幸はいわば、深愛という誰にでも尽くしてしまう魔性の女性を生み出した元凶ともいえる人物。そんな美幸にも、苦しい過去があったのだった。

美幸は夫の実家で義両親と共に暮らしていたが、そこは典型的な男性優位、暴力も当たり前の亭主関白家庭だった。さらに、姑からもいびられる家政婦以下の生活を送っていた。当時は非常になよなよとした性格だったようで、深愛に「○○もできないの?」と強く当たってしまうのは、散々苦労した経験が過去にあるからなのかもしれない。

また回想では、深愛の叔母に当たる18歳の少女・あかり(ヒコロヒー)も一緒に住んでおり、一週間ぶりに帰宅したあかりの耳にピアス穴が開いていたことで、深愛の祖父(モト冬樹)が「親からもらった大事な体に穴開けたか!」と激昂。あかりも負けじと「じゃあお前は、親からもらった大事な髪の毛どこやったんだよ!」とバッグで禿げた頭部を思い切り引っぱたくという応酬を見せる。

流されやすい深愛や、弱気な美幸を見ていたせいか、暴力的な深愛の祖父を物ともしないあかりの態度は気持ちがいい。無断で家を空ける不良娘ではあるが、この家庭においては「よくやった!」と言いたくなる痛快な仕返しだ。

そんなあかりを演じたのは、バラエティ番組『キョコロヒー』で齊藤と共演しているヒコロヒー。バラエティでのサバサバとした言動も相まって、あかりはハマり役と言えるだろう。茶髪の短いツインテールにメッシュニット、耳と唇に大量のピアスという平成ギャルを彷彿とさせるファッションの“18歳・あかり”を違和感なく演じていた。

また、深愛のためにと我慢を続ける美幸に、「奴隷扱いされてもいいってこと?」「なんで逃げないの」「じゃあ、あんたも加害者じゃん」とストレートな言葉を投げかけられるのも、強い意志を持つあかりならではだと思う。あかりの言葉どおり、我慢を続けた美幸は父の暴力的な発言から深愛を守ろうとはせず、“いい子”としての生き方を強要する加害者になってしまった。

ハルキに振る舞った朝ごはんを隠すため深愛が「お母さんがいない間に料理の練習してて……」と嘘を告げたとき、心の中で「神様。私の子は、私の思うとおりの良い子に育ってくれています」と心底ほっとしたような声でつぶやくのも意味深だ。美幸の思う“いい子”とは、あかりとは真逆の厳しい親にも逆らわない子のことなのだろうか。それともこの台詞は、家事のできる品行方正な“いい子”として、何も問題がない家に嫁いでもらいたいという親心なのだろうか。美幸の真意が気になるところだ。

次回の第8話からは最終章に突入。それぞれの純粋すぎる思いはどのように収束していくのか。あかりが叔母として深愛と対面するシーンもあるので、齊藤とヒコロヒーの演技にも注目したい。

(文:天野スズ)