『いちばんすきな花』「椿」と「美鳥」の名前に隠された4人の物語の「ゆくえ」

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『いちばんすきな花』「椿」と「美鳥」の名前に隠された4人の物語の「ゆくえ」

人を好きになることに間違いなんてあるはずないのに、想いが叶わないとついこの恋は間違いだったなんて悲観に暮れてしまう。

いちばんすきな花』(フジテレビ系、毎週木曜22:00~)第7話は間違い探しと答え合わせの物語だった。

あのパックがゴールに入ったら、想いは届いたのだろうか

春木椿(松下洸平)ってズルいなあ。赤田鼓太郎(仲野太賀)の保険の勧誘も断れないくせに、深雪夜々(今田美桜)が勇気を出してぶつけた想いには、すっと線を引く。流されてくれたらいいのに、そこはちゃんとしている。でも、それが椿の優しさで。ズルいくらい、また好きになってしまう。

「3人とも同じかな。同じくらい、みんな、同じように好き」

別れた婚約者の代わりになるなんていちばん不器用な言い方で、いちばん大切な想いを打ち明けた夜々。それに対して、椿は夜々への「好き」は2人組にはなれない「好き」だと伝える。2人組にはなりたいけど、その相手は誰でもいいわけじゃない。「ごめん」が口癖だった椿なら、ここでも「ごめん」と言えばいいはずなのに、お決まりの文句には頼らない。

椿はもう自分が楽することをやめたのだろう。「ごめん」と言って、気持ちに応えられない自分を悪者にした方がずっと楽で。でも、それは夜々にとっては誠実じゃない。だから、自分の気持ちにいちばんフィットする言葉を絞り出す。「好き」と言われてフラれることほど辛いことはないけれど、その「好き」が2人組になるための「好き」と距離がかけ離れていることがわかるから、この想いは届かないんだなと思い知る。

家庭用のエアホッケーは、やっぱりゲームセンターにあるそれよりはあんまり面白くなくて。2人でやっても今ひとつ盛り上がらない。もしも夜々の打ったパックがゴールに入ったら、可能性はちょっと違ったのだろうか。届け、届け、と八つ当たりみたいにパックを打つけど、フェンスに跳ね返されて、すぐに自分の手元に戻ってくる。それが今のこの状況をそのまま映し出しているみたいで、なんだか泣きたくなる。

「出会ったことが間違いだったのかな」

思わずそう愚痴をこぼすけど、そんな間違い探しが不毛なことくらい夜々だってわかっている。だってこの結果は、間違いではなくて、答えでしかないから。間違い探しは、答え合わせ。何度答案を交換しても覆りっこない。夜々の片想いは、終わったのだ。

4人をつなぐのは場所か、それとも別の何かか

でも潮ゆくえ(多部未華子)の言うように「終われば、何かしら次が始まる」。微妙な恋の矢印が絡み合った4人の関係は、また小さく動きはじめた。

その始まりが、志木美鳥(田中麗奈)なのだろうか。美しい鳥と書いて「みどり」と読むちょっと変わった名前の彼女は、ゆくえの高校時代の塾の先生で、椿の中学時代のクラスメイトで、夜々に将棋を教えてくれた従姉で、佐藤紅葉(神尾楓珠)に「またおいで」と言ってくれた先生だった。

だけど、その人物像は4人それぞれバラバラで。学校が好きになれなかったゆくえにとっては、塾という居場所をくれた憧れの人。椿にとっては、荒れていてよく人を殴っていたけど、卒業してからもずっと心に残っている特別な人。女の子の遊びばかりで窮屈な思いをしていた夜々にとっては、好きなものを好きになっていいんだと教えてくれたぽわぽわした人。そして、紅葉にとっては人気者の仮面をあっさり見破った、いつも不機嫌な人。

間違い探しをするように4人は美鳥ちゃんの人物像を答え合わせしていたけれど、そのどれも間違いではないのだろう。人は多面的な生き物だ。時期によって、環境によって、相手によって、性格も印象も変わる。でも表面的な印象は異なるけど、話を聞く限り、根っこにはなんとなく美鳥ちゃんらしさが透けて見える。

きっと美鳥ちゃんは世の中の普通とか当たり前が苦手な人で。正解なんてものには興味がなくて、ちゃんと自分なりの物の見方や考え方を持っている人。そして、きっと4人と同じように集団社会からはちょっとはみ出していて、2人組になるのが苦手。そんな美鳥ちゃんが加わることで、4人の関係がどう変化していくかが最終回に向けての見どころとなりそうだ。

もともとこのドラマは自分の居場所を見つけられなかった4人が、居場所を見つけるところから始まった。こだわり続けた、「私の席」。並びは同じでも、場所を変えたら、ちょっとしっくりこなくて。だから、場所がなくなってしまうことに怯えてしまう。

でも、ゆくえと鼓太郎にとって通い慣れたカラオケボックスという場所が決して重要ではなかったように、場所が変わったって続いていく関係性はある。始まりがあの場所だったから、ゆくえも夜々も紅葉も春木家にこだわってしまうけど、部室はいつか卒業するためのもの。留年し続けるわけにはいかないのだ。

ならば、人と人をつなぐものは何なのか。このドラマが描いていくのは、その答えなのだろうか。

季節に関する名前を持つ4人の共通の知り合いは、「四季」と同じ音の姓を持つ美鳥ちゃん。鳥は花粉を運び、また別の場所に花を咲かせる。そんな鳥媒花の代表例が、椿だ。美鳥ちゃんと再会したことで、椿の運命はどこに向かって運ばれていくのか。その「ゆくえ」に、4人の新たな居場所があるのかもしれない。

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