『コタツがない家』まるで漫才?小池栄子とダメ男たちによるテンポのいい会話に注目の新ホームドラマが誕生

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『コタツがない家』まるで漫才?小池栄子とダメ男たちによるテンポのいい会話に注目の新ホームドラマが誕生

小池栄子主演の民放ゴールデン連ドラ、なんで今までなかったのかが不思議なくらい、主役がしっくりきている。10月18日放送の『コタツがない家』(日本テレビ系、毎週水曜22:00~)第1話は、小池栄子演じる深堀万里江と、その家族や会社の同僚との人間関係を知るイントロダクションともいえる回。どうやら難ありの男たちがたくさんいるようで……。新しいホームドラマのはじまりはじまり!

堀越家に“生息”する、戦力外の男たち

主人公の深堀万里江(小池栄子)は起業したウェディングプランナー。『大豆田とわ子と三人の元夫』のとわ子もそうだったけど、「女社長」という表象が増えていくのは喜ばしいことだと思う。社長という言葉を聞いて、男性をイメージする人はまだまだ多い社会だからこそ、潜在意識から変えていく試みは大切だ。

万里江がバリバリ働く一方で、夫は対照的。悠作(吉岡秀隆)は廃業寸前の漫画家で、現在はほぼニート状態。頼まれごとをほったらかしてマッサージに行くぐらいだから、相当だらしない日々を送っていそう。ケータイの万里江の登録名が「よめ」なのも気になる。名前でなく関係性? しかも「妻」ではなく? 配偶者の呼称として「嫁」を使うあたり、まだまだ古い価値観で生きているタイプだ。これは「ダメ夫改造計画」のしがいがある。

高校生の息子・順基(作間龍斗)は学校を数日さぼっていた。アイドル・オーディションを受けるも一番最初に落選したのがその理由。実際の作間龍斗がアイドルとしてキラキラしたステージで歌って踊っているのを知っているから、嘘だろ? と思ってしまうがこれは役! 順基はまだまだアイドル未満。でも、これから努力して目指すシーンもあるのではないかと期待している。配信ではいつか視聴者を見返したい一心で「5年後待ってろ」って言ってたけど、まだまだ若さが尊ばれるアイドルにとって5年はあまりにも長い。すぐにレッスンに励んで輝く姿を見せてくれ!

そして実父・達男(小林薫)はなぜか栃木の山中で保護される。横浜から栃木まで迎えに行く万里江、大変すぎる距離だよ……。「帰りは俺が運転する」と達男は警察官の前では言っていたが、結局運転していたのは万里江。こんな場面でも達男は人前で「男のメンツ」を気にするタイプのよう。親父もまだまだ鍛え甲斐がありそうだ。熟年離婚をした達男はすでにマンションを解約し、残る荷物は紙袋ひとつだけ。自殺未遂疑惑もまだ残るものの、とりあえず深堀家にたどり着く。

第1話のサブタイトルは「戦力外の男たち」。つまり悠作、順基、達男のこと。家庭における「戦力」のあり方、求められ方はポジションによって違うだろうけど、とにかく現状はまったく力を発揮していない三人。今後どう変わっていくかが見どころだ。

まるで漫才? 家族間のテンポの良い会話劇

ハイライトは、青椒肉絲を囲んで繰り広げられる(「Cook Do きょうの大皿」のCMに見えるのは小池栄子キャスティングの妙)、家族間の言い争い。さっと達男を車で送り返そうとする悠作、堀越一家が住む家の頭金を自分が出したことを持ち出す達男、そういうネチネチしたところに母は愛想を尽かせたのだと反論する万里江、煽る順基。もうカオスすぎる。でも、めちゃくちゃいいテンポでおもしろい。これぞホームドラマだという感じがする。

この流れ、本作と同じ金子茂樹脚本の『俺の話は長い』を彷彿とさせる。『俺の話は長い』の主人公・満は現実逃避を続けるニートでヘリクツがうまい役柄だったが、本作はその満を堀越家の男たち三人に分けたようなもの。満が三人もいると思うと、万里江がいかに大変なポジションにいるか想像がつく。

それでも、ひとしきり腹の内をぶちまけたあと、みんながすっと普段通りの態度に戻っていく描写には、家族って案外そんなものかも……というリアリティを感じた。毎日たいへんなことがあるが、意地でも離婚はするまいと思う万里江。悠作と達男が将棋をする姿を見て、ちょっと涙ぐむところにその心根がしっかり現れていた。

達男がすでに離婚しているように、別に本作は離婚を悪いものとして描いているわけではない。売れっ子ウェディングプランナーという称号ゆえに、これまで何百組のカップルを幸せにしてきたのに自分は幸せを築けなかったと思われるのはたしかにバツが悪いが、仕事とプライベートって本来別物でいいはず。だから単純に、万里江はこのダメな家族のことが好きなんだろう。

というか、万里江がこれまでマスコミから「仕事と家庭の両方で幸せを手に入れたカリスマ社長」、として取り上げられてきたことにこそ疑問をいだきたい。だって万里江が男だったらそんな表現されていないと思う。きっと「女の幸せは結婚」という潜在的なイメージから、今の女性は家庭と仕事の両方を手に入れないと、成功認定されない。なんて世の中だ……。

一方で結婚していない関係性を継続中の万里江の部下・八塚志織(ホラン千秋)と徳丸康彦(中川大輔)の関係性も気になるところ。こちらは「コタツがある」家なので、これから堀越家との対比として描かれていくことだろう。

また、ドラマの内容とリンクする石川さゆりの主題歌「ダメ男数え唄」にも注目したい。作詞は脚本の金子茂樹。万里江目線の歌詞は1番は悠作、2番は順基、3番は達男のことを歌っている。愚痴を言いながらも「だめな男よ背中に乗りな」とは、なんて頼もしいんだ!

(文:綿貫大介)