松下洸平、“正解がない”役者業に邁進「自分を試す場所があるのは幸せなこと」【連載PERSON】

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松下洸平、“正解がない”役者業に邁進「自分を試す場所があるのは幸せなこと」【連載PERSON】
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人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」。今回はTVer初のオリジナルドラマ『潜入捜査官 松下洸平』(TVer独占で9月5日より配信開始、全5話)で主演を務める松下洸平さんが登場します。

2009年に俳優デビューした松下さんは、NHK連続テレビ小説『スカーレット』でヒロインの夫・十代田八郎を演じて一躍有名に。その後もドラマ『最愛』『合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~』『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』、映画『燃えよ剣』など話題作への出演が続く一方で、シンガーソングライターとしても活躍中です。

そんな松下さんが今回演じるのは、まさかの本人役。俳優として活動する“松下洸平”は、実は警視庁の潜入捜査官で、マフィア幹部という裏の顔を持つ大物俳優“佐藤浩市”の疑惑解明のために任務として15年前から芸能界に潜入し捜査をしていた、という設定で繰り広げられるサスペンスコメディです。

ドラマには、在京キー5局で実際に放送されている人気バラエティ番組も登場。劇中の設定を引きずりながらバラエティ番組を収録するなど前代未聞の撮影に挑んだ松下さんに、制作秘話を聞きました。

佐藤浩市の実名アドリブに注目!?

――実際に各局のバラエティ番組に出演されてみて、いかがでしたか?

ドラマの告知後に放送されたバラエティは、どの番組も“潜入捜査官としての芝居”がどこかに入っているので、それを見つけていただく楽しさもあるなと思っています。その答え合わせがTVer(『潜入捜査官 松下洸平』本編)でできるというのは、この企画ならではですよね。

今回はいろいろな番組にも出させていただいて、たとえば『ぐるぐるナインティナイン』の「ダレダレ?コスプレショー」は、まさか自分が出られる日がくるとは思わなかったですし、『ラヴィット!』には特に告知がないのに出るという、すごく不自然な……(笑)。僕自身、そういうところも楽しませていただきました。それに、バラエティ番組の出演者の方もドラマに参加してくださっているので、ドラマを見ると「各番組の収録後に何があったのか」がわかります。それは本当に面白いと思うし、そういったいろいろな楽しみ方ができるのは、このドラマだけだと思います。

――今回は松下洸平役ということで、いつもとは違う難しさもありましたか?

松下洸平であって、松下洸平でない。潜入捜査官という顔があるので、もちろん完全に“素”というわけにはいかないですけど、共演者のみなさんとすれ違うだけのシーンだったり、本読み前のプロデューサーさんとの何気ない会話だったり、そういうところは本当にいつも通りやったんです。でも、どのシーンも「松下さんです、どうぞ」と言われてから撮影するので、ちょっとだけカッコつけちゃうんですよ(笑)。それはすごく反省しています。

――やっているときには気づかない?

やった後に、「あれ? 俺、なんか今すごいカッコつけたな」と。(視聴者にとっては)それがふだんの“松下洸平”になるので、ちょっとでも良く思われたい、みたいな気持ちが出たのかもしれないです。ご本人は何もおっしゃらなかったですけど、たぶん共演者の方も気づかれていたと思います(笑)。

――物語には、松下さんのパブリックイメージも反映されていると思いますが、ご自身ではどう感じましたか?

今回のドラマの中にいる松下洸平は、ちょっとドジっ子ちゃんです。だから、「僕ってそう思われてるんだな」と思うし、なぜか違和感なく演じられたので、遠からずなんだなと思います(笑)。それから、警察官という設定を守りつつですが、共演する女優さんに惑わされたりする設定もちらほら出てくるので、怖いんです。「これが松下洸平だ」と思われることが(笑)。あとは今後、僕がいろいろなテレビに出るたびに「これも潜入捜査だ」と思われる可能性があるので、ドラマが終わったら(その設定は)破棄してください(笑)。そんな危険性があるくらい、面白いドラマです。

――ご本人役ということで、役作りはされましたか?

コミカルにやるところはオーバーに演じたりはしましたけど、役作りはほぼなかったです(笑)。

――潜入捜査官として、カッコいいシーンも?

今回はドジっ子ちゃんなので、全然カッコよくないんですよ。ポンコツなので、上司からもちゃんと怒られています(笑)。

――カッコいいシーンは、1シーンもないのでしょうか?

最終話では、いよいよマフィアの佐藤浩市さんと対峙するシーンがあります。カッコいいかどうかはわからないですけど、僕としては浩市さんとバチバチに芝居をやらせてもらえたことが嬉しかったし、このドラマで描きたいのはそこなので、みんな気合いが入っていました。ずっとコメディをやってきた中で、最後はちゃんと締める、ということを頑張りました。

――ドラマにはパワーワードがたくさん出てきますが、とくに刺さった言葉は?

浩市さんが、実名で仲の良い俳優さんの名前をバンバン出してくださるんです。ドラマの中で初めて浩市さんとお会いしたときに、僕がご挨拶したら「天海祐希がよろしくって言ってたよ!」って(笑)。どこまで使うかわからないですが、他にも中井貴一さんの名前が出てくるなど、浩市さんの実名アドリブが面白かったです。

今回共演した“あの芸人”に刺激を受けた思春期

――ここからは、松下さんとテレビの関わりについて聞かせてください。松下さんが影響を受けたテレビ番組はありますか?

僕はダウンタウンさんが好きなので、『ダウンタウンのごっつええ感じ』や『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』は、めちゃくちゃ見ていました。あとは今回、ドラマでもご一緒しているナインティナインさんの『めちゃ×2イケてるッ!』ですね。完全に“めちゃイケ世代”なので、思春期の頃にかなり刺激をもらっていたと思います。

――それを思うと、ナインティナインさんとの共演は感慨深いですね。

はい。ナイナイさんとご一緒することは、僕にとって特別なんです。子供の頃に憧れて、本当にたくさんの勇気をもらったおふたりなので。今回、『ぐるナイ』に出演させてもらったときに3ショットでコメント撮りもさせていただいたんですが、「すごい画だな」と思って、3回くらい見直しちゃいました(笑)。

――今、よく見ているテレビ番組も教えてください。その際、TVerを使うこともありますか?

毎週見てるのは、『水曜日のダウンタウン』。ほかにも、お笑いを見ることはすごく多いですね。自分が出ている番組もリアルタイムで見られないときにはTVerです。

――ありがとうございます(笑)。ちなみに、どんなときにご覧になるんですか?

移動中に見たり、あとは、撮影現場で共演者の人たちと「あのドラマの、あのシーンがめっちゃいいよ」という話になると、「じゃあTVerで見よう」と。絶対にみんなTVerのアプリは入っているので、「ちょっと誰か、TVer見せて!」とお願いして見始めるんですけど、最初に流れるCMを見ている間に「松下さん、お願いします!」と声をかけられて、「ちょっと、後で見るから止めといてー!」みたいな(笑)。きっと僕だけじゃなくて、いろいろな俳優さんがそうだと思います。“TVerあるある”だと思います(笑)。

――(笑)。最後に、松下さんが役者として大切にしている信念や言葉を教えてください。

「正解がない」ということを忘れないようにしています。それを忘れると満足してしまいそうになるので、それだけは忘れないように。実際、演じていても「難しいな、お芝居は」と、やればやるほど思い知らされますし、「正解がない」というのは僕の中でもいつも大切にしている言葉です。

――だからこそ面白い?

そう思います。役者を続けていると、後悔もあります。でも、「あのときのあの台詞は、ああいう言い方だといけなかったな」とか、「あのシーンはああしておけばよかったな」とか。現在、自分を試す場所があるのは幸せなことですし、その場所があるおかげでトライし続けることができる。答えがないからこそ、いつまでも始めたときのままの気持ちでいられるような気がします。

取材・文:nakamura omame
写真:松本理加

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