『水曜日のダウンタウン』がTVer​初となる再生回数1億回突破​!演出・藤井健太郎さんインタビュー「純粋な“面白さ”を追求しやすくなりました」

公開:
『水曜日のダウンタウン』がTVer​初となる再生回数1億回突破​!演出・藤井健太郎さんインタビュー「純粋な“面白さ”を追求しやすくなりました」
「水曜日のダウンタウン」を見る

人気バラエティ番組『水曜日のダウンタウン』(TBS系、毎週水曜22:00~)が、民放公式テレビ配信サービス「TVer」​​で初となる再生回数1億回を突破! この快挙を記念して、番組の演出を務める藤井健太郎​​さんにインタビューを行いました。

オリジナリティあふれる企画と、ダウンタウン浜田雅功さん、松本人志さん)やゲストの切れ味鋭いコメントで、毎週神がかり的な笑いを生みだしている同番組は2020年12月16日放送分よりTVerでの見逃し配信がスタート。2021年、2022年には2年連続で「TVerアワード」のバラエティ大賞を受賞するなど、多くの視聴者を楽しませています。

藤井さんならではの視点で、再生回数上位だった企画や、TVerに関することなど、たっぷりと語っていただきました。

藤井さんが語る人気企画の裏側

――『水曜日のダウンタウン』が、配信開始から約2年半でTVer初の1億回再生を超えました。率直な感想をお願いします。

1億回というのがどの程度の数字なのかはあまりピンとこないんですけど、「TVerアワード」のバラエティ大賞も2年連続で頂けていますし、TVerの中で一番回っているというのは純粋に喜ばしいことだなと思います。

――TVerでの配信が始まって以降、より反響を感じますか?

番組を見たと言ってくれる人の中で「TVerで見た」という人の割合は着実に増えている感じがしますね。リアルタイムや録画は当然ありつつですけど、違法動画で見ているって人はだいぶ減った気がしていて。有料じゃない以上、結局は利便性の問題だったりもするので、使いやすさや認知度がようやく追いついたというか。

――『水曜日のダウンタウン』の再生数トップ5がこちらです。クロちゃん安田大サーカス)の連続企画「モンスターラブ」が、番組の再生回数ランキングベスト5に3作品(1、3、4位)入りました。この企画でこだわったポイントはどんなところだったのでしょうか?

1位 モンスターラブ最終回(放送日2022年12月21日)
2位 犯人を見つけるまでミステリードラマの世界から抜け出せないドッキリ、めちゃしんどい説 ほか(放送日2023年1月25日)
3位 モンスターラブ#4 ほか(放送日2022年12月7日)
4位 モンスターラブ【その後】ほか(放送日2023年2月8日)
5位 『ラヴィット!』の女性ゲストを大喜利芸人軍団が遠隔操作すればレギュラーメンバーより笑い取れる説(放送日2021年10月20日)
※2020年12月16日~2023年8月9日における見逃し配信再生数(株式会社ビデオリサーチ調べ)

やっぱり、TVerのユーザー数自体が増えたってことなのか、上位は最近のものにはなってるんですね。クロちゃんの企画に関しては色々ありますけど、一番は裏切りたいっていうところじゃないですかね。すでに何度か恋愛要素の入ったクロちゃん企画をやってきた中で、当然フラれる様は面白いんですけど、それだけだと焼き直しになっちゃうので、なんとか最後はカップル成立か、それがダメでも別の落としどころをつくりたいなとは思っていました。

――“クッキー粉々事件”をはじめ、クロちゃんの魅力がたっぷりつまった企画でした。

そこは、もう長いお付き合いなので、どんなことをしたらどんな反応があるだとか、教えてあげることと隠しておくことのバランスとか、あの人の面白さを引き出す特殊技能はチーム全体にだいぶ備わってきていると思います。

――2位には「犯人を見つけるまでミステリードラマの世界から抜け出せないドッキリ、めちゃしんどい説 ほか」がランクインしました。探偵役をダイアン津田(篤宏)さんにしたのはなぜですか?

そこは感覚的なものなので「こうだから」と一言で説明するのは難しいんですけど、「この人は、この状況だったらこういう行動・言動をとるだろう」っていうのは、ある程度その人のことを見ていれば分かってくるので、この企画に関しては諸々の状況にぴったりハマるのが津田さんだったというところですよね。逆に、津田さん以外で撮ることは考えられなかったんで、泊まりで地方に行けるスケジュールがもらえるまで半年近く撮影を待ちました。

――第5位は「『ラヴィット!』の女性ゲストを大喜利芸人軍団が遠隔操作すればレギュラーメンバーより笑い取れる説」でした。

こういう遠隔操作の企画自体はそこまで珍しいものでもないんですけれど、実際の生放送に仕掛けたっていう例はあまりないかもしれないですね。収録番組だったら上手くいかなかった部分はカットできるけど、生放送だと当然そういう部分も放送されてしまうのでリスクはありますよね。そのリスクを抱えてでも「生で勝負する」という選択をした分、上手くいった部分に関しては「面白さの強度が増した」という感じじゃないでしょうか。

――遠隔操作される側の、あのさんもバッチリハマっていた気がします。彼女を選んだ理由は?

これもやっぱり感覚的なところではあるんですけど、絶対に必要な条件は大きく2つあって。スタジオの出演者や視聴者にそもそものキャラクターがしっかり把握されちゃっていたら成立しないので、露出が当時そこまで多くなかったという認知レベルの問題がひとつ。もうひとつは、突飛なことを言っても不思議じゃない雰囲気を持ってるってところですかね。で、この企画は完全にあのちゃん一択だったんですけど、見事に役回りを果たしてくれたので、やっぱり間違ってなかったなとは思いました。

――この番組では、ダウンタウンさんの存在も大きいと思います。改めて、この番組におけるお二人の魅力を教えてください。

当たり前ですけど、面白いですからね。多くの人が思っているように、一番面白いんじゃないんですか。ツッコミや目線付け、前後のしゃべりも含めて、プラスアルファでVTRをより面白くしてくれるし、当然、いるのといないのとでは大きく違ってくると思います。

――藤井さんがTVerでご覧になっている番組はございますか?

職業柄、全録のハードを持っていたりはするので、TVerでしか見られないローカル局の番組を見ることが多いですかね。あとは過去のドラマが限定配信されたときに見たりとか。

――番組を作る側としてTVerについて思うことを教えてください。

以前は「積極視聴」と「なんとなくつけていた」の違いを判断するシステムがなかったので、そういった視聴率のみが評価の対象だったときよりも、当然、状況はよくなったと思います。世間のリアクションでわりと手ごたえを感じていても、視聴率が全然とれていないってことがよくありましたけど、今は「積極視聴」が可視化できるようになったし、色々な数字や基準があることで「番組の持っている価値」みたいなものが見落とされることは格段に減ったはずですよね。

――放送後に口コミで評判になった番組が見てもらえるのもTVerの良さだと思うのですが、その点で感じることはありますか?

これまでは、どんなに面白くてもリアルタイムでテレビの前に構えて見てもらわなければノーカウントだったものが、後からでも、見てもらえれば評価にカウントされるようになったということなので、「面白いものをつくれば評価される」というシンプルな状況に近づいているんだと思います。視聴率をとるための戦略もそれはそれで面白い部分はあったんですけど、本来の目的とは違うベクトルに向かっていることも多々あったので。これからは、より純粋な“面白さ”を追求しやすくなるはずだし、そうすることで、視聴者の方々ともよりWin-Winの関係に近づいていくはずなので、良いこと尽くめですよね。

(取材:浜瀬将樹)