清野菜名、倉本聰に教わった“演技”との向き合い方「答えはひとつじゃない」【連載PERSON】

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清野菜名、倉本聰に教わった“演技”との向き合い方「答えはひとつじゃない」【連載PERSON】

人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」。今回はドラマ『日曜の夜ぐらいは...』(ABCテレビ・テレビ朝日系、毎週日曜22:00~)で主人公・岸田サチを演じている清野菜名さんが登場します。

ドラマ『やすらぎの郷』『今日から俺は!!』、映画『ある男』『キングダム 運命の炎』(2023年7月28日公開)など、話題作に名を連ねる清野さん。視聴者の心に寄りそう演技はもちろん、アクションにも定評があり、唯一無二の俳優として多くの人から愛されています。

『日曜の夜ぐらいは...』で清野さんが演じるサチは、車イス生活を送る母親・邦子(和久井映見)と2人暮らし。ファミリーレストランのアルバイトをしながら岸田家を支えています。そんな彼女が、あるラジオ番組をきっかけに野田翔子(岸井ゆきの)、樋口若葉(生見愛瑠)と出会い、運命が変わって……。

今回は本作のことを中心に、学生時代によく見ていたドラマ、役者として大切にしている軸などについて話をうかがいました。

現場でのかけあいで感じる“温かさ”

――『日曜の夜ぐらいは...』というタイトルを聞いて、どんなことを思われましたか?

脚本を読ませていただいたときに、心が温まって、充実感を与えてくれる感覚があったんですよ。日曜日の夜に「ここから1週間頑張ろう!」と背中を押してくれるような、そんな1週間が楽しみになるような……新たな気持ちにさせてくれるという意味では、『日曜の夜ぐらいは...』というタイトルはピッタリ。自分の中でしっくり来た印象がありました。

――これまで多くの名作を生み出した脚本家・岡田惠和さんの世界を感じてみて、どんなことを思いましたか?

現場で台詞のかけあいをしていると、岡田さんの温かく穏やかな空気感がにじみ出てくるんです。独特な台詞も多いのですが、それがより人間らしさを演出している気がしていて。自宅で台詞を喋っていると(練習していると)淡々としちゃうのですが、実際に現場でみんなに会って喋ってみると、それが感情を引き出す鍵となるんです。すごく面白いですね。

――サチについてはどんな印象を持ちましたか?

最初は、ただただクールというか、舞愛想で、ブスッとした印象で、読んでいて暗い気持ちになっちゃったんです(笑)。実際に現場に入って、みなさんと撮影をしていくうちに、そうじゃないなと思ったんです。

サチは、翔子と若葉の“明るい部分”に、ものにすごく助けられていて。もともと感情を表に出すようなタイプではなかったのですが、2人と会ったことで、自分も予想していなかった展開になる。赤の他人に自分の心情を吐露できたことで、サチ自身も吹っ切れるというか……(受け止めてくれる相手役が)ゆきのさんと愛瑠ちゃんだからこそ、引っ張り出してもらえたな、という感覚がすごくありました。改めて友情ってすごく素敵だなと感じましたね。

――そんな岸井さんと生見さんとは、どんなコミュニケーションをとっているんですか?

他愛もない会話をずっとしています。ゆきのさんとは植物、愛瑠ちゃんとはゲーム好きという共通点が見つかって、一気に距離が近づきました。

この間も、現場で口笛を吹いていた愛瑠ちゃんに、ゆきのさんが「絶対なんかいいことあったでしょ。“いいことあった”口笛だもん!」と言ったら、愛瑠ちゃんが「はい。いいことあったんですよ」と返したことがあって。そのあと、 「わかりやすいね」と反応したら「なんか恥ずかしい! すごく人間っぽくてヤダ」って(笑)。

これって、普通の現場ではなかなかないやりとりで。この日から、一気に距離が近づいた気がするんです。これからもっともっと近づくことで、本当の友だちになれそうな気がしています。

――母親役の和久井映見さんとはご共演されて、どんな印象を持ちましたか?

優しさがにじみ出ていて、大きく包み込んでくださるので「母の代名詞」みたいな感覚がすごくあります。(邦子が)玄関でいつも「おかえり」と迎えてくれるのですが、そんなお母さんの顔を見ると泣けてきちゃうというか。和久井さんは、いつも大きな愛で構えてくださっているので、本当に自分のお母さんみたいな気持ちになるんです。すごく素敵な方ですね。

――エレキコミックやついいちろう今立進)さんが本人役でご出演されていますが、芸人さんが現場にいることで空気は明るく変わるものですか?

盛り上がりますね。(2人が出演するのは)みんなで和気あいあいとした空気感を出さないといけないバスツアーのシーンなのですが、普段だとみんな頑張って本番を盛り上げるんですが、本番が始まる前からおふたりが現場を盛り上げてくださるので、エキストラさんも本当に楽しんでいましたし、私も本当にバスツアーに参加している感覚になりました。明るい空気を作ってくださるので、すごく楽しいですね。

友だちの存在とは?

――ここからは、清野さんとテレビとの関わりについてお聞きしたいです。影響を受けたテレビ番組を教えてください。

小学生、中学生のころ、よくドラマを見ていましたね。特に『ギャルサー』はすごく覚えています。当時小学生で、朝礼台に登っては、みんなで(ドラマでも披露されている)パラパラ踊っていました(笑)。

――かなり影響を受けていますね!

ごはんを食べるときも(藤木直人演じるシンノスケの台詞)「ありがとう大地、ありがとう太陽、命をありがとう。いただきます」とか言っていました(笑)。

――現在、ご覧になっているテレビ番組は?

周りからすごくおすすめされましたし、気になっていたのもあって、移動の合間にTVerで『ブラッシュアップライフ』を見ています(現在は配信終了)。展開がすごく気になるし、3人(安藤サクラ夏帆木南晴夏)のカラオケのシーンや心の声がジワジワくるし、リアルの中にフッと笑えるところがたくさんあって、すごく面白いですね。(染谷将太演じる福ちゃんが持ってくる)ポテトのくだりがすごく好きでした。

――役者をするにあたって大切にしている軸を教えてください。

“こう見えればいいや”といった妥協はしたくないなと思っています。きちんとそのときの心情でやりたいですし、うまく表現できなかったとしても、“こなしたくない”気持ちがあります。

――心情を大切にしたい点でいうと、共演者さんとのやりとりで生み出されるものもあるのですか?

あると思いますし、自分もそれに対して柔軟に対応できるようにしたいなと思います。あまりとらわれず、柔らかくいようと意識していますね。

――もともとは決めていくタイプだったんですか?

前までは「これはこう」とガチガチに決めていたのですが、たとえば『日曜の夜ぐらいは...』は、みんなとの会話の流れがあるし、決めていってしまうと、生まれるものも生まれないような気がしていて。みんなと楽しみながら、何か生みだせたらいいなと思っています。

――これまであった多くの出会いの中で、清野さんの俳優人生に影響を与えた人物は?

(脚本家の)倉本聰さんですね。キャラクターのつくり方は人それぞれあると思いますが、そのなかのひとつとして「倉本さん式」を伺ったことがあって。たとえば、会社に来てお茶を運ぶシーンだけでも、そこには(演技のパターンが)何通りもあるはずなんです。

その人は家で嫌なことがあったかもしれないし、嬉しいことがあったのかもしれない。「人それぞれだから、その気持ちは自分で膨らませていいんだよ」と聞いたときは、すごく自由な場所なんだと思いました。それこそ決めすぎず、答えはひとつではないんだなって。

――今回、一年半ぶりの地上波連続ドラマ出演。ご自身の中で気持ちの変化はありましたか?

この数年間は走ってきたから、立ち止まって考える時間も、自分を見つめ直す時間もなかったので、少し迷子になっていたんですよ。ふと日常に戻ったとき、仕事関係ではない友人と会ったり、地元に帰ったり、最近はいろんな人と会って会話をしたので、なんか人間らしくなった気がしますね。

――そんな清野さんにとって友だちとはどんな存在ですか?

楽しいことも、嬉しいことも、嫌なことも、すべて共有できるし、共有したいなと思わせてくれる存在です。

取材・文:浜瀬将樹
写真:フジタヒデ

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