『風間公親-教場0-』「ここは教場ではない」木村拓哉×赤楚衛二の“冷温”バディから始まる前日譚

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『風間公親-教場0-』「ここは教場ではない」木村拓哉×赤楚衛二の“冷温”バディから始まる前日譚

生徒を震撼させる最恐の教官・風間公親(木村拓哉)が帰ってきた! 2020年、2021年に新春SPドラマとして放送された『教場』シリーズが、フジテレビ開局65周年特別企画『風間公親-教場0-』(フジテレビ系、毎週月曜21:00~)として4月10日よりスタートした。

本作はタイトルからもわかるように、『教場』シリーズのエピソード0。風間が教官として警察学校に赴任する以前、新人刑事の教育係をしていた時代を描く物語になっている。

『教場II』では風間と若手刑事(北村匠海)が襲撃されるという、壮絶な回想シーンがエンディングのあとに差し込まれていた。一体何があったのか気になって仕方なかったが、その真相も解き明かされることだろう。

新たな倒叙ミステリードラマの誕生

物語は、襲撃事件の47日前からスタート。風間は教壇に立つ前、キャリアの浅い新人刑事とバディを組み、実際の事件捜査を通じて刑事として必要なスキルを学ばせる刑事指導官の任務にあたっていた。

その指導の厳しさから「風間道場」と呼ばれる本システム。その門下生として第1話に登場したのが、地域課の制服警官あがりの瓜原潤史(赤楚衛二)だった。窃盗事件の犯人に犯行を自供させた功績で県警本部捜査一課に配置換えとなり、風間道場で教えを受けることとなる。

風間と瓜原が今回扱うのは、関連性のない2つの事件。ミステリードラマは犯人がわからないまま物語が進行し、刑事目線で視聴者が一緒に事件を追うことで「考察」が発生するのがお決まりのつくり。しかし本作は犯人と、犯行の一部がわかっている状態で展開する倒叙ミステリーの形式をとっている。

これまでの『教場』シリーズでは、学校内で起こる事件の犯人が先に明かされることはなかったので、今までとは全く違う見せ方をしていることになる。どちらかというと『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』、最近では『invert 城塚翡翠 倒叙集』を彷彿とさせるプロットだろう。

犯人探しがメインではないのであれば、醍醐味になるのは些細な違和感を追究する刑事と犯人との頭脳・心理戦。刑事と犯人の両者が際立つので、スペシャルゲスト的に登場する犯人役の俳優にも注目していきたい。

事件解決のカギは「風間が何に気づいたか」

風間は指導官としての立場にあるものの、その指導は決して手取り足取りというわけではなく、むしろ放任に近い。一を聞いたら十を知り、自分から動くのが刑事、ということなんだろう。

口数が少なく、何を考えているのかまったく読めないというキャラクターも健在(内面を語らないからこそ、余計に不気味さが増す……)。ただ教育方針なのか、ちょっとした思考のヒントを随所で与えてくれている。それを聞き逃すことなく的確に動けるかということにも、刑事の資質が問われているに違いない。

1つ目の事件は日中弓(内田理央)が、2つ目の事件は益野紳祐(市原隼人)が犯人だということは視聴者はすでに知っている。そして微妙な差異をも見逃さない風間も当然、誰が犯人かすでに気づいている。

つまり事件を解決する近道は、「風間は何に気づいたか」をちゃんと理解することにある。新人刑事の瓜原が容疑者と向き合うだけでなく、風間とも対峙しなければいけないという構造はとてもうまいつくりだと思う。

だって私たちも事件についてだけではなく、風間の一挙手一投足をしっかり見ておかなければいけないのだから。質問の意図、ちょっとした動作、あらゆる言動にヒントがあると思うと、風間から目が離せない。木村拓哉演じる風間は台詞こそ少ないが、やはり圧倒的な主役としての存在感を放っている。

瓜原は一人前の刑事に成長できるのか

『教場』シリーズでの風間は、まさに鬼教官だった。警察学校という場所柄、もともとスパルタ式なのは当たり前だとしても、とりわけ厳しいのが風間教場。

警察官には向かない人間をふるいにかけ、問題のある生徒には容赦なく退校届を突きつける。極限の状況下で生徒たちが、成長もしくは脱落するサバイバル群像劇としてのおもしろさがあった。

瓜原の前にいた新人刑事は交番勤務へと戻っていったらしいが、それは風間に認めてもらえず脱落したということ。今回は刑事に向かない人間をふるいにかけるのが風間の役割になる。

では「人に優しい警察官」を目指し、相手の気持ちに寄り添うことを信念としている瓜原はどうだろう。素人考えでは、街中にいる警察官がみんなそうであればいいなと思ってしまうのだけど。

もちろん、優しく接する泣き落としの刑事もいるかもしれない。でも、捜査となればすべてを疑ってかかるのが仕事となり、優しいだけでは通用しなくなる。

それに警察署長や事務員の伊上幸葉(堀田真由)からも指摘があったが、頭の角度によっては背広の肩にかかるほどの髪も気になる。

身だしなみに隙があると、容疑者になめられる。だからこそ、警察官は常に身ぎれいにしていなければいけない。これは警察学校で教わる初歩的な話だと思う。それができていない瓜原は、まだ刑事としては“あまちゃん”な人物として描かれている。

この役を赤楚衛二が演じるというのはキャスティングの妙だと思う。温かみのある素直で優しい役柄というのは何の説明がなくとも伝わってくるし、フレッシュな熱血さも兼ね備えていてピッタリだと思った。

刑事としての甘さも、むしろ伸びしろとして感じられる。それに冷徹な風間とのギャップが大きい分、対照的なバディとして指導官と新人刑事の差が明確に表現されていた。

瓜原はさっそく風間から転属届を突きつけられてしまったが、これもシリーズを見てきた人からすれば「待ってました!」と言いたくなる展開。きっと瓜原は印籠を前に、気持ちを新たに奮起するタイプ。どう成長してくれるのか、今から楽しみで仕方がない。