3月5日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』（テレビ東京系、毎週土曜24:20～）は、常識を覆すサッカー選手のフィジカルの作り方を特集。いわきFCが取り入れているトレーニング方法と、その効果を紹介した。

3月12日にはいよいよJ3が開幕。今シーズンから初参戦するいわきFCは、クラブ創設からわずか6年でJリーグまで上り詰めた。破竹の勢いで勝利を重ねるいわきFCの強さの秘密は、鍛え込まれた肉体を持つフィジカル軍団の活躍にあった。

今回は、いわきFCの代表を務める大倉智がリモートで参加。サッカー選手だった大倉は、1995年にプロに転向し、柏レイソルのエースストライカーとして活躍。引退後は指導者ではなく、経営者の道を選び、現在はいわきFCの運営に携わっている。

大倉智

大倉が大切にしているテーマは「日本のフィジカルスタンダードを変える」ということ。一般的なクラブでは、技術や戦術的な練習に時間を割き、筋トレは自主練というケースが多いが、いわきFCでは週に4日、3時間かけて選手全員が筋トレを行い、徹底的に筋肉をいじめ抜いているという。大倉は「90分間止まらない、倒れない男たちという世界観を作るには、フィジカルをしっかり鍛えていかないといけない」と説明。試合に勝つという目的はもちろん、マーケティング的な狙いもあることを明かした。

そんな大倉の思惑に、解説の福田正博も「これだけ多くのクラブがある中で、特色がないと埋もれていってしまう。“こういうチームだよ”というブランドを作るのは重要なことで、理にかなっている」と賛同する。

昨シーズン、チームの得点王に輝いた古川大悟も「少なくとも、いわきFCと同じレベルの筋トレをしているクラブっていうのはまずないと思います」と証言。フィジカルをつけることで、球際や空中戦の競り合いでも負けないようになったという。

チームの方針によって、ラガーマン顔負けの鋼の肉体を手に入れたいわきFCの選手たち。単純にパワーを増すだけではなく、俊敏性を発揮するトレーニングなどを組み合わせることで、スピードを増すことにも成功している。

また、若い頃から筋肉をつけ過ぎると身長が伸びづらくなるという問題には、筋トレをスタートする時期を調整することで対応した。順天堂大学医学部准教授で、いわきFCのチームドクターを務める齋田良知は、成長期を過ぎてからの筋トレを推奨。男性は15～16歳、女性は12～13歳を目安に筋トレを始めると良いのだとか。実際に、いわきFCのユースでも、体が出来上がった16歳の選手はウエイトトレーニングを、16歳未満の選手は自重を支えるフォーム作りのトレーニングを行っている。

さらに、いわきFCでは、選手一人一人の遺伝子を検査し、筋力を司る遺伝子の種類ごとに筋トレを実施。瞬発力タイプの遺伝子を持つ選手には、重い負荷の筋トレを少ない回数行い、持久力タイプの遺伝子を持つ選手には、軽い負荷の筋トレを多くこなしてもらう。各自が効率のいい筋トレで、理想的な肉体を維持しているという。

他にも、毎週末の体力測定や疲労度チェック、4か月に一度の血液検査にサプリメントの指導まで、メディカルケアも充実。ここまでフィジカルにこだわる理由について、大倉は海外選手とのフィジカルの差を挙げ、「日本のサッカーがそちらに行けていないという問題提起も含めて、メッセージとして発信できたらという思いでやっている」と打ち明けた。

そして、クラブの取り組みは実を結び、いわきFCは“攻撃的なサッカー”を実現。試合中のデータにもゴール前でのプレーの多さが表れており、J1の平均が12％、J2とJ3が16％なのに対し、カテゴリーこそ違うもののいわきFCは28％と、圧倒的に敵陣でのプレーが多いことがわかる。

その前向きな姿勢が現れていたのが2016年、当時J1から数えて7部相当の福島1部だったいわきFCと、J1のコンサドーレ札幌による天皇杯2回戦。スタミナが切れ始めた延長戦でフィジカルの強さを発揮し、いわきFCは格上相手に5対2の大金星を挙げた。この結果には、福田も「地域リーグがJ1のチームを倒すってなかなかないですよ」と驚き、「見ている側にとっては非常にワクワクするサッカー」と絶賛する。

チームの躍進の他にも、番組では日本初の商業施設複合型となるクラブハウスや、未来のアスリートの育成など、いわきFCが行っている地域に対しての取り組みも紹介。福島の復興のシンボルとして突き進むいわきFCについて、大倉は「まずは自分たちが今まで目指してきたことを、地域の皆様とともに旋風を起こせるようにしたい。ぜひスタジアムに足を運んでいただいて、見ていただきたい」とアピール。番組MCの勝村政信も「復興の最先端の輝きになるのは、日本全体の力にもなりますよね。素晴らしいと思います」と褒め称えた。