“自分ファースト”から“選手ファースト”へ!J2昇格に導いた秋田豊の指導を北澤豪も絶賛

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いわてグルージャ盛岡の監督を務める秋田豊が、2月12日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。クラブを立て直し、J2昇格へと導いた自身の指導方法について、MCの勝村政信や解説の北澤豪らとトークを繰り広げた。

日本代表としてワールドカップ2大会出場を果たすなど、選手として輝かしい実績を残してきた秋田が、いわてグルージャ盛岡の監督に就任したのが2020年のこと。金銭的にも人材的にも厳しいJ3の地方クラブを2年越しで改革し、昨シーズンはJ2昇格を達成。自身もその功績を評価され、J3の優秀監督賞を受賞した。

いわてグルージャ盛岡は、2014年のJ3発足と共にリーグに参入。以来8シーズンにわたって、その舞台で戦ってきた。初年度こそ12チーム中5位という成績を残したが、2年目以降は2桁順位と低迷。2019シーズンに岩手の全市町村がホームタウンとなったのを機に、心機一転。クラブ名も変更したが、まさかの最下位となってしまう。そんなチームの立て直しを託されたのが秋田だった。

リモートでの番組出演となった秋田は、指導者として目指しているサッカーを聞かれ、「“勝つ”ところから逆算したサッカーをしたい」と回答。また、選手としてかつて所属していた鹿島アントラーズの体制に触れ、「クラブとして人を育てることができていたのが大きかった」と語った。勝利にこだわり、古巣のような成長できるサッカーを見据えた秋田の指導が実を結んだのが、昨シーズン。首位と勝ち点1差の2位で終え、クラブを史上初のJ2昇格へと導いた。

しかし、そこまでの道のりは決して平坦なものではなかった。2010年に、J1の京都サンガで監督デビューを果たした秋田だったが、当時絶不調だったチームを立て直すことができず、わずか半年で解任。その3年後には当時JFLだった町田ゼルビアで指揮を執るが、ここでも結果を出せず、シーズン途中でチームを去ることになってしまう。

秋田は「正直言って、俺は全てを知っていると思っていたんですよ」と、当時は選手としての成功体験から来る過信があったと告白。すでに指導者として失敗が許されない崖っぷちに立たされていた。いわてグルージャ盛岡からの7年ぶりとなる監督オファーを受けた秋田は、J3に必要な「ハードワーク」「シュート精度」「組織的な守備」を重視し、新監督として2020シーズンを迎える。ところが開幕から黒星が続き、徐々に調子を上げたものの、結果は11位と、またしても成功とは言えない結果となってしまう。

秋田は、2020シーズンについて、自分が“主”となって戦術を伝えながら、ハードなトレーニングを課す指導法だったと回顧。「選手はついてきてくれたが、負担がかかって、これでは試合ができないと言っていましたね」と振り返った。

そこで、2年目となる昨シーズンには大きく方向転換。自身の経験を重視した“自分ファースト”な指導から、選手との対話を重視し、最終的な判断も選手に委ねる“選手ファースト”な指導に切り替えていったという。

YouTubeの撮影でチームの練習に参加した元日本代表の那須大亮は「予想外でした。オンオフがしっかりしている。戦術的な指導も、選手が分かりやすい、やりやすいように提示しているし、気持ちの部分や選手との対話を気遣いながら、チームのマネジメントをしている」と印象を語った。

秋田は、選手への声のかけ方にも気を配っており、それぞれの立場や性格を見極めた上で、対話しているという。加入したばかりの大卒ルーキー・加々美登生は「今年は勝負の1年だぞっていうのを言われていました。その言葉で火がついたりしていました」と叱咤激励されたことを打ち明け、ベテランのセンターバック・牟田雄祐は「監督が僕のポテンシャルや能力について、もっとできると言い続けてくれた。今まで自信がないままサッカーをしていた部分がすごくあったんですけど、今は本当に自信を持ってプレーできているかなと思います」と明かした。

秋田は「必死になる場面を与えると、怖がったり積極性を失ったりすることがなくなり、自分の能力を自分で引き出しているんですよ。僕はその環境を作ってあげるだけ」と言い、北澤は「そういう成功体験によって、さらに彼らは伸びるでしょうね」と続けた。

さらに、徹底した選手ファーストによって、練習量も大幅に削減。当初は心配だったという秋田に、北澤も「でしょ! だって練習量で生きてきた男だもんね」と同意。秋田は、時代の違いが大きかったと切り出し、「選手たちが育った環境の中、彼らが思うトレーニング量の中で、彼らの最大限のパフォーマンスを出すことを考えた」と、練習量を大幅に削減した理由を話した。

選手の自主性を尊重する秋田流マネジメントによって、監督と選手が同じ方向を向き、J2昇格を達成。秋田は、チーム強化はもちろん、スポンサードの依頼やフロント業務など、自分のできることはすべてやったと言い、「監督でいられる期間をなるべく延ばすことをすごく考えました」と語った。

そして、19日からはいよいよJ2での戦いがスタート。10位以内という目標を掲げる秋田は「自分たちの持っている力を最大限出せば、そこはしっかりとクリアできると思うんですよね。選手が自分の力を出せるようにマネジメントしていきたいなと思っています」と意気込んだ。

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