老いたことを「統合」するか、「絶望」するかで老後の生き方が分かれる?

公開: 更新: 読みテレ
老いたことを「統合」するか、「絶望」するかで老後の生き方が分かれる?

11月13日放送の「そこまで言って委員会NP」は「事件と人間心理 徹底解明スペシャル」のタイトルで様々な事件の裏にある人間心理を考察した。その中でも注目だったのが「高齢者による事件事故」をテーマにした議論。これについて「最も疑問に思うことは?」との番組からの問いかけに、論客たちはそれぞれの疑問を述べた。

小野一光氏(ノンフィクション作家)は「高齢者による事故を糾弾しながら働けという矛盾」が疑問だとし、こう述べた。
「今年4月に年金の受給年齢 に関して、60歳から75歳の間に引き上げられた。国は高齢になっても働けとの方針だ。高齢者に働けというなら、その人たちが交通事故を起こすリスクを軽減する方にお金を使う必要がある。例えば、運転代行費用の補助とか。高齢者から何かを奪うのは、矛盾している。」
竹田恒泰氏(作家)が持論を述べる。
「高齢者の事故をなくすいい方法がある。オートマティック限定の運転免許があるようにマニュアル限定をつくる。高齢者の運転での急加速や急発信は絶対無理になる。踏み間違いがなくなる。危険な状況になったら、免許を返上しようと思うはずだ。」
これに田嶋陽子氏(元参院議員)が反論する。
「そうは思わない。私が住んでいる地方では車がなければ買い物にもどこにも行けない。だから、私は免許を返納する気はない。働く老人が増えるほど、 事故だって増える。でも現実的には、老人の事故よりも若者の事故の方が多い。老人が運転をするのは老害だと言うのは差別そのもの。」
番組議長・黒木千晶アナがフォローする。
「人は誰しも老いてしまうものだから、認知機能が下がった時でも、生きやすいような社会機能は大事ではないかと思う。」
丸田佳奈氏(医師)は「背景に老いへの抵抗がある」と回答。
「今の社会は自分の老いを受け入れにくい社会。高齢者が多くなればもちろん、高齢者の事件、事故が増えるのは当然のこと。体の能力が衰えていくことには、抵抗もあるし情けなさも感じていく。追い打ちをかけるように、周りが年寄り扱いをして、もうやめなさいと一方的に言うと高齢者は強い圧力を感じると思う。多様性の大切さが叫ばれている割に、お年寄りを生きやすくする多様性はあまりないと思っている。」
出口保行氏(犯罪心理学者)の「統合対絶望」との回答に黒木アナが説明を求める。
「発達心理学の領域でよく言われること。年齢がうんと上になっても、まだ人の心は発達していくという考え方。特に65歳以上になってきた時、仕事から少し距離ができたり、病気し始めたり、自分の置かれている状況を素直に受け入れられた人は、自分の置かれている状況を“統合”していく。その中で心安らかに、人生を見つめ直して、生き方を変えていくことができる。 ところが自分が様々な事ができなくなったことを受け入れられない人は、“絶望”に入り始める。『もっといろんなことができなくなるだろう、じゃあこれを無理してでもやっておかなきゃ』という悪循環に入ると、失敗が失敗を呼んでしまう。第三者の評価も下がり、自己評価も下がって、さらに“絶望”に落ち込んでいく。田嶋さんは”統合”で行くタイプだと分析する 。田嶋さんは、今の自分を受け入れつつ、81歳という年齢をどうやって生きるかを考えている。でも、このタイプはすごく少ない。今の時代、高齢化が当たり前になっているから、自分の置かれている立場を受け入れること自体が難しくなっている。」
この解説を受けて田嶋氏は実感を語る。
「私は、絶望と統合とが混ざっていると思う。自分自身も日々絶望している。手足が効かなくなる、頭が働かなくなる。どうしようかなと1日何回も恐怖に襲われる。それじゃいけないと思って日々立ち直りながら、統合の方に行くのが現実なのではないか。」
出口氏は田嶋氏を讃えるように言う。
「それは田嶋先生だからできる。自分の中の信念を持っているから、それができる。そんな強い人は世の中に少ない。」
竹田氏が話の方向を変える。
「みんな『老人力』(ちくま文庫)という本を読んだ方がいいと思う。作家の赤瀬川原平さんが書いて、大ベストセラーになった。いろんなことができなくなることを肯定的に捉えようという本で、例えば腰が痛いとか、目がショボショボしたら、『老人力がついてきたぞ』と衰えを楽しもうという内容。」
ここで須田慎一郎氏(経済ジャーナリスト)が出口氏に質問。
「どっちがいいんですか。老人力をつけていくのと、僕なんかは、自分の筋力が弱ったな、太ってしまったなと思ったら、シェイプアップをしょうと考えて、筋トレをガンガンやっているが。」
出口氏はこの日の須田氏のファッションを見て言う。
「どっちがいいのか悪いのかは、私はないと思う。その人の生き方次第。例えば須田さんは今日はこんなに細いズボンを履いている。どうして履いているのかなと思う。何かに対抗して履いているのか、ひょっとしたらジャニーズを狙っているのかわからないが。」
須田氏が開き直って「ジャニーズを狙っていますよ。」と言うのだが、出口氏は
「どう考えればいいのか、わかりません。」と淡々と返し、
須田氏もさすがにめげていた。

出口氏の言う高齢者の気持ちの持ち方としての解説、「統合」と「絶望」の話は、これまで聞いたことのない概念で新鮮だった。自分が年老いた時には、是非「統合」ができるように、穏やかな心を身につけたいものだ。

【文:境治】