厚さ7センチのさつまいもに感動!ハンガリー人男性が”ニッポンの天ぷら職人の技”を学ぶ:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンの職人が揚げる天ぷらに感激…スペシャルサプライズも!

続いて紹介するのは、天ぷらをこよなく愛するハンガリー在住のバーリントさん。

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日本料理の中でも繊細な技術が必要といわれる、天ぷら。市役所の電気課で働いているバーリントさんは、ニッポンに一度も行ったことがありませんが、ハンガリーの日本料理店で食べた天ぷらに感激。すぐにインターネットで調べ、天ぷら作りに挑戦したといいます。

ハンガリーは内陸国で新鮮な魚介が手に入りにくいため、作るのはいつも野菜の天ぷら。なすなど水気が多い野菜は、揚げる前に冷やして型崩れを防ぎます。ミニトマトは切れ目を入れ、熱湯をかけて丁寧に湯むき。トマトの天ぷらはどこかで見たわけではなく、天ぷら職人・近藤文夫さんの言葉「常識からの脱却」を自分なりに実践しているそう。

ミシュランガイド東京で、13年連続2つ星を獲得した銀座の名店「てんぷら 近藤」の店主・近藤文夫さん。その代名詞が、厚さ7センチのさつまいもの天ぷらと、華麗な職人技から生まれるにんじんの天ぷら。天ぷらは魚介が中心で野菜は邪道とされていた時代に、旬の野菜を天ぷらの主役に導いた近藤さんは、天ぷら界のレジェンド的存在です。

バーリントさんが天ぷらに使っているのは、ハンガリーでは一般的なひまわり油。そこに、風味をよくするためごま油をプラス。ごま油はハンガリーでは手に入りにくいので、大切に使っています。
油を加熱している間に衣の準備。卵をよく混ぜたら、ボウルのまま冷たい水で冷やします。冷やさないと、小麦粉から出るグルテンが膨張してしまい、衣がサクサクにならないそう。そこに少しずつ小麦粉を混ぜて、衣が完成。具材に小麦粉をまぶしてから衣にくぐらせて揚げていきます。
しかし…「何がいけないのかわからないのですが、衣がカラッと揚がらないんです」。
「てんぷら 近藤」のにんじんにも挑戦しますが……。

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そんなバーリントさんを、約4年前、ニッポンにご招待!

向かったのは、上野にある創業93年の「天寿々(てんすず)」。昭和30年代まであった下谷花柳界の芸者衆に愛された、江戸前天ぷらの老舗です。初めて本物の天ぷらを出すお店に入り、「憧れと緊張が入り混じった不思議な感覚です」とバーリントさん。

「天寿々」で使う油はごま油。三代目店主・鈴木康夫さんによると、東京の天ぷらはごま油を使うとのこと。東京湾で獲れた魚介を長持ちさせるために考案されたという江戸前天ぷら。当時は屋台で食べるのが一般的で、芝海老やアナゴを揚げた天ぷらは庶民にも大人気でした。魚の生臭さを消すため、香りの強いごま油が使われたそう。

鈴木さんがまず揚げ始めたのは車海老。最初に海老を出すのは、江戸前天ぷらの伝統です。人生初の海老の天ぷらを口にしたバーリントさんは、「衣がサクサクで身はホクホク。僕はこんな風に揚げられたことはありません」と感激。
東京湾で獲れたキスの柔らかさにもびっくり! 京都の伝統野菜・伏見甘長とうがらしは、薄い衣なのにしっかり香りを包み込んでいます。天ぷらは油で揚げることで、衣の水分が水蒸気となって蒸発。水分が飛んだ衣が膜を作り、具材の旨みと香りを完全に閉じ込めることができるのです。

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天ぷら職人の技を直接教えていただくことに。衣は卵黄と冷水を混ぜた卵水に小麦粉を加えて作りますが、粉の加え方が鍵。バーリントさんは衣の濃度を気にして、慎重に少しずつ粉を混ぜていきます。それを見て、「衣はかき回せばかき回すほどグルテンが出てきます」と鈴木さん。
小麦粉に含まれるグルテンは水を加えるとくっつき、粘りの原因に。鈴木さんは大胆に粉を入れ、ほとんど混ぜません。今まで天ぷらがカラッと揚がらなかったのは、粉を分けて入れることでかき混ぜる回数が増え、衣を混ぜすぎていたことが大きな原因だったのです。

カラッと揚げるため、衣のほかにもう一つ重要なのが油の温度。高ければ焦げ、低ければカラッと揚がりません。油に垂らした衣がすぐに浮き上がる状態がベストの温度で、鍋底まで沈んで浮き上がるのは温度が低い証拠。美味しく揚げるポイントは、ネタを入れたら油の温度が下がらないように火を強くすること。そして、天ぷらに不純物の焦げが付いて茶色くならないように、天かすをこまめに取ること。揚がったら、油をよく切ることも大事なポイントです。

自分で揚げた天ぷらを試食すると、「衣がサクサクです!」とバーリントさん。衣をつけるのではなく、のせて油に入れることが大事だそうで、鈴木さんも「とても綺麗にできている」と感心。教わったことをすぐ実践するバーリントさんの姿勢に感動した鈴木さんは、海老を真っ直ぐにする包丁の入れ方も教えてくださいました。するとすぐにできるようになり、「上手くなったじゃん!」と鈴木さんも笑顔に。

翌朝。鈴木さんが「築地を見せたい」と、仕入れに同行させてくださいました。見たこともない魚がいっぱいで、バーリントさんは興味津々。海老の専門店では、海老を使う店に合わせて大きさを選り分けていました。日本料理の繊細さはこうした細やかな仕事によるもの。「うちの天ぷらが美味しいのは、漁師さんが一生懸命獲って大事にここへ送って、それを大事にうちまで持ってきてくれる人たちがいるから」という鈴木さんの言葉に、「多くの方の努力があっての美味しい天ぷらなんですね」と納得した様子。

お店に戻り、今度は定食で出す具材を揚げてみることに。火加減など鈴木さんから学んだことを忠実に守り、8種類の具材を揚げました。

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「鈴木さんと出会ってカウンターの奥にある世界を知りました。今回ニッポンに来ることができて、さらに天ぷらへの愛情が深まりました」というバーリントさんを、鈴木さんは「よく頑張りました」と労います。

別れの時。「ありがとうございました」と深々お辞儀をするバーリントさん。鈴木さんは「またぜひ遊びにきてください」と声をかけ、握手を交わしました。

そしてここで、ウェルカムサプライズ! 天ぷら界のレジェンド的存在である近藤文夫さんにバーリントさんの熱意を伝えたところ、特別に会ってくださることになったのです。

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近藤さんのお店は、週末は2ヵ月待ちの超人気店。あのオバマ元大統領さえ予約が取れなかったそう。お店には2つのカウンター席があり、1つは予約客で満席。奥のカウンター席に向かうと、そこには憧れの近藤さんが! 緊張するバーリントさんに「楽に肩の力を抜いて」と声をかけてくださった近藤さんは、厚さ7センチの生のさつまいもを揚げ始めます。

最初に出していただいたのは、江戸前天ぷらの華、車海老。衣の薄さに感動しつつ、次はズッキーニをいただきます。芯をくりぬき、湯葉を詰めてあります。「ズッキーニはよく揚げますが、こんな風にアレンジしたことはありません」というバーリントさんに、近藤さんは湯葉の代わりにチーズでも構わないとアドバイス。
「チーズも水分が出ますよね。天ぷらは中の水分を保ってあげる。揚げすぎちゃダメです。天ぷらは蒸し物」と近藤さん。具材を油に入れた瞬間に出てくる泡は、衣から蒸発していく水蒸気。衣は膜となり、具材は自らの水分で蒸し上がっていく。だから天ぷらは、揚げ物ではなく蒸し物だというのです。

30分揚げたさつまいもは、キッチンペーパーで包み、予熱で15分蒸します。そして次に揚げるのは、これを目当てに来るお客さんも多いという、にんじんの天ぷら。鍋いっぱいに花火のように広がった極細のにんじんを素早く絡ませながら集め……程よい隙間を作ってふんわりまとめあげます。よく見ると一つひとつに衣がつき、その食感も堪能できる一品。

「天ぷらって面白いでしょ? 私はもう50年やっています。絶えず挑戦です」という近藤さん。ここでバーリントさんは、近藤さんに思いを伝えます。新しいものを探求し、研究を重ねる姿に感動し尊敬していること、お客様を幸せにするために料理を作っているという姿勢は、料理人として大切だと思ったこと……。バーリントさんの熱い思いに、近藤さんも「よくご存知ですね。すごいですね」と笑みがこぼれます。

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そして、いよいよさつまいもの天ぷらが登場。なんと、包んでいた紙には全く油がありません。「ということは、天ぷらに油がないんです」と近藤さん。近藤さんの代名詞、厚さ7センチのさつまいもは、石焼き芋の食感を目指した一品。お箸で簡単に切れるさつまいもを頬張ったバーリントさんは、しばし言葉を失い……「別世界です。油で揚げたとは思えません。思考停止状態です」と感動!

最後に、近藤さんの本にサインを書いていただきました。そこには近藤さんの信条である「夢心」という言葉が。いつも夢を持って、心からその夢に到達したいということを表しているそう。

バーリントさん、これからもニッポンの味・天ぷらをずっと愛し続けてください!

6月7日(月)夜8時放送! 月曜プレミア8「世界!ニッポン行きたい人応援団」は、「ニッポン文化に魅了された外国人SP」をお届けします。

これまで番組には、きめ細やかで美しい日本文化を愛する外国の方々が数多く登場。そこで、今回は【ニッポンの文化を愛してやまない方々】を特集! 番組史上最大の進化!? 驚きの報告も!

▼「ニッポンで盆石を披露したい」アメリカ人男性
▼「切り絵の作り方を学びたい」ブルガリア人女性。約1年3か月前、ニッポンにご招待した彼女からお世話になった切り絵作家の皆さんの元へ感謝のビデオレターが届く。帰国後、それぞれの作家さんに教わったことを活かして作品作りに励んでいるという彼女の驚きの事実が明らかに!

どうぞお楽しみに!

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