柚子香る「手作りポン酢」が大反響! 幻と呼ばれる「枯木柚子」も紹介

公開: 更新: テレ東プラス

土が好きすぎて来日、左官に魅せられ修業することに!

続いて紹介するのは、ニッポンに住んで5年、アメリカからやってきたエミリーさん。

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エミリーさんがニッポンに住んでしまうほど愛してやまないものは、「左官」。左官とは、セメントや土などをコテで塗り上げていく職人さんのこと。平安時代、宮殿の建築や修理に携わる「属(そうかん)」という壁塗り専門の階級があり、それが後に「しゃかん」「さかん」と呼ばれるようになったのが由来といわれています。エミリーさんは、左官職人として50年になる親方・佐藤ひろゆきさんのもとで左官技術を学ぶため、京都で暮らしています。

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「彼女の場合、僕と土に対する想いがすごく似ているんですよ。彼女と最初に話した時にね、土壁の癒し効果を調べたいと言ったんです。これはびっくりしましたね! 日本人でもそこに注目している子はほとんどいない」と佐藤さん。

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エミリーさんが現在任されているのは、古民家の壁の修復。専門用語満載の親方からの支持を一度で理解し、作業に取り掛かっていきます。この日の主な作業は、丁寧にコテを当て、凸凹になったところを平らに直していく、斑(むら)直し。この古民家の修復には7年ほどかかるそう。京都には歴史的価値が高い古民家が多く、府が補助金を出し、修復に力を入れているのです。

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この日、エミリーさんが案内してくれたのは、京都で唯一の左官専門学校「京都府左官技能専修学院」。現在5人の学生が、左官技術を学んでいます。実はエミリーさん、元々左官職人を目指していたわけではありませんでした。「土でできた建物」に興味があり、世界20ヵ国以上を巡る中で、2003年、ニッポンの土壁を見るために英語教師として来日。その際に見たニッポンの土壁の虜に。一度は帰国したものの、ニッポンの土壁が忘れられず2016年に再来日し、左官専門学校に入学。そのままニッポンに住むことになったのです。

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世界の土壁は、1メートルを超える厚いものがほとんど。一方、ニッポンの土壁はというと、組んだ竹の上に土を薄く何度も塗って仕上げることで、地震にも耐えるほどの丈夫な壁に仕上げています。この技術は、日本独自のものだそう。「たったの5〜6センチに絞る。しかもまっすぐ凹凸なしで仕上げるのは、世界には他にないと思います。確実にニッポンだけです! それがすごいんですよ」とエミリーさん。

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かつて学んだ、懐かしい場所をのぞいてみると……エミリーさんの恩師・浅原雄三さんがいらっしゃいました。学校の講師を務め、「現代の名工」「黄綬褒章」も授与された、京都左官業界を牽引する方です。入学当初にエミリーさんの「土壁の材料の発酵した匂いが好き」という言葉を聞いた浅原さんは、「この子、変わっているな」と思ったそう。この浅原さんとの出会いが、エミリーさんのその後の人生を決めるきっかけになりました。

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遡ること4年前。左官学校に通い、誰よりも早く技術を習得しようと日々熱心に土壁と向き合っていたエミリーさん。浅原さんはエミリーさんのクラスの担当ではなかったのですが、楽しそうに授業に取り組む姿を見て土への熱い想いを知り、「壁は踊るようにして塗ったら上手になるんやで!」とアドバイス。優秀な左官職人であればあるほど、土を塗るテンポが一定のリズムを刻み、壁を前にして踊っているように見えるのだとか。それ以降、浅原さんとエミリーさんは、左官職人についての考え方などを語り合う仲に。

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元々左官職人を目指すというよりは、土が好きすぎて学校に体験入学しただけでしたが、浅原さんとの出会いでその気持ちに変化が。「左官の技術をもっと深く知りたい! 本当にこの方のもとで修業がしたい! I want him teach me!」と決意したエミリーさんは、「弟子にしてください!」と直訴。快く受け入れてくださった浅原さんのもとで1年間修業したのち、2018年、さらなる経験を積むため、浅原さんの紹介で現在の親方・佐藤さんのもとに弟子入りしたのです。

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佐藤さんの事務所を見せていただくと、100丁ほどのコテが入ったエミリーコーナーが。
これは一人前の仕事をするのに必要な最低限のコテの数で、ちょうど今エミリーさんが持っているもので左官職人の出発点なのだそう。

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佐藤さんのコテを見せていただくと、700丁は持っているというコテが棚の中にずらり。取り出したのは、ごく小さな仕上げ用のコテ。「小さい幅、アリ壁っていうんだけどね。そういう壁も建物の中にはあるから、それをやるのに大きなコテでは入らないから」と佐藤さん。梁と屋根の間や、欄間の上下に作ってある小さい壁に使うそう。現場ごとにコテを作ることがあるため、数が増えていくといいます。

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自宅への帰り道でエミリーさんの日課となっているのが、道中にある建物の塀を眺めてコテ波を見ること。他にも、ブロック塀の仕上げや基礎を見て自分なりに考察。時間を忘れることもしばしばで、気づけば1時間以上が経過していることも。

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お気に入りのお店にも寄り道。5年の付き合いになる近所の八百屋さんでは世間話に花を咲かせ、元気をもらっています。

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自宅は、2Kで家賃は5万円。友人からもらったという和ダンスを食器入れに使い、洋間もわざわざ畳を敷いて和室にリフォームし、一人暮らしを満喫しています。ここで驚きの事実が! 実はエミリーさん、京都だけでなくニッポン全国の土壁も勉強し、自費で本を2冊出版。さらに左官職人として働きながら、京都工芸繊維大学の大学院にも通い、「100年前の農民が作った土壁」をテーマに研究しているのです。

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多忙な日々を送る中、食事は自炊が中心。この日はたくさんの野菜を煮込んだスープを作り、余りは翌日のお弁当にしました。

夜は京都で働く左官職人の先輩とお店で左官女子会。しかしここでも、店内の壁を先輩たちと観察。「なんで土だけでこんなにしっかりするの? 落ちてこないし何これ?」と盛り上がります。もちろん、女子会らしくイケメン左官職人の話にも花を咲かせました。

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別の日。エミリーさんは、親方の佐藤さんに呼ばれて事務所へ。現在、左官技能士2級の資格を持つエミリーさん。左官技能士は国家資格で、3級から特級まであり、1級の取得には左官としての実務経験が7年以上必要になります。試験の合格率は約4割という狭き門。今回、いずれ受験する1級の試験に備え、佐藤さんが特別に模擬試験をしてくださることに。

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お題は、チリ廻り塗りと聚楽の上塗り。「チリ廻り塗り」とは、壁の4辺を約2センチの幅で勾配を付けて塗る手法。角度を同じように仕上げるのがポイントで、より壁の強度が増すとのこと。「凹凸のある下地に同じ角度で塗ることは、案外難しい」と佐藤さん。1級の資格をとるには必須というチリ廻り塗り、果たして佐藤さんの判定は……「基本的なことはちゃんとおさまっている。チリ廻りをすることに対しては合格!」と上々の出来。

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さらに、エミリーさんが仕上げにつけた印を見た佐藤さんは、「昔の職人がやってた。この頃見ているとそんなことしない。エミリーさんは、日本人より日本の左官みたい」と笑顔に。

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続いては、茶室の壁に使われる「聚楽壁の仕上げ塗り」。京都の左官職人にとって必須の技で、ポイントは土が乾く前に素早く仕上げること。「このくらいの壁だったら15分くらい」と目標を伝える佐藤さん。しかし、まだ一度も聚楽壁を塗ったことがないエミリーさんは、丁寧に何度も塗り直した結果、目安の15分をオーバー。40分もかかったため土が乾き、風合いが揃わず50点という評価に……。

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佐藤さんからは、「サッサッサッとやったほうが綺麗になる」とアドバイスが。2つの模擬試験のうち、1つは合格、もう1つは不合格という結果に。そんなエミリーさんに、応援サプライズ! 1級の試験に合格してほしい、そんな願いを込めて……番組から、土壁の仕上げに最適な地金黒打ちコテをプレゼント!

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「今回の撮影のお陰で、今まで無理と思っていた土の仕上げを“絶対できるようになりたい”と思えるようになったので、本当にありがたいです!」と喜んでくれました。

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最後に「私は先輩から左官技術をもっと学んで、それを世界に発信していくために頑張ります!」と、意気込みを語ってくれたエミリーさん。これからも夢に向かって頑張ってください!

3月15日(月)夜8時放送! 月曜プレミア8「世界!ニッポン行きたい人応援団」の内容は…。

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「ニッポンにご招待したら人生が変わっちゃった!感謝のビデオレターが届いちゃいましたSP」

▼高校で美術教師をしているフランス人男性が愛してやまないものはニッポンの“浮世絵”。コツコツ貯めたお金で浮世絵を収集し、浮世絵の技法を使った木版画にも独学で挑戦している。約4年前、ニッポンにご招待! 職人さんに江戸時代から受け継ぐ浮世絵の伝統技法を教えていただいた。そんな彼からお世話になった皆さんへビデオレターが! そこには驚きの報告が! さらに、進化した新作の浮世絵も披露!

どうぞお楽しみに!

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