15号・19号とともに振り返る、次のシーズンまでに確認しておきたい自宅の台風リスク

テレ東プラス

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9月9日5時頃に千葉県に上陸し、県内で観測史上1位となる最大瞬間風速57.5m/sを記録(※)した台風15号。そして、箱根町で総雨量1000ミリを超えるなど、各地に豪雨をもたらした台風19号。これら2つの台風によって、東日本は大きな被害を受けました。

※アメダス千葉によるもの。

今回の台風によって、千葉県では多くの家屋で屋根が飛び、千曲川などの河川が氾濫しています。このような風台風と雨台風に見舞われたとき、自宅にはどのようなリスクが想定されるのか。さらに、屋根が飛ぶ、増水が起きるといった具体的な被害が、どのようなメカニズムによって起きるのか――。

今回は地域コミュニティや企業の災害リスクを独自診断している、災害リスク評価研究所の松島康生代表にお話をお伺いしました。

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風台風で屋根が飛んだ家の多くは"昭和時代"のもの

台風15号の被害の中でも、一番注目されたのが屋根の破損です。実際に現地の調査を行ったという松島さんによると、屋根が被害を受けた住宅は、主に昭和時代に作られた建物だったそうです。

「被害を受けた住宅の多くは、屋根材に瓦やトタンを使っていました。瓦は屋根に固定する針金が切れていたり、ひび割れていると、強風にあおられて飛んでしまいます。1枚でも飛んでしまえば、そこから風が入って残りの瓦が、さらには屋根そのものが吹き飛んでしまうので、事前に点検しておく必要があるでしょう」(松島さん)

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なお、瓦やトタン以外のスレート材やセメント材の屋根についても、ヒビが入って腐食していると、それが強風被害につながることが考えられるそうです。

松島さんによると、建築基準法の耐震基準が改正された1980年以前の建物は、天井板の固定が甘かったり、窓ガラスも今と比べると強度に欠けることがあるとのこと。老朽化も進んでいるので、補修が必要かどうかを屋根に梯子を掛けて直接確認したり、定期的にハウスメーカーなどに点検・補修を依頼しておくべきでしょう。

「強風による被害のリスクは、立地によっても変わってきます。例えば、風が吹きあがってくるような高台、山からの吹きおろしの風が吹く裾野、さらには強風が吹く河川敷やビル街では、被害を受ける可能性は高まります。長年住んでいる方は、他と比べて風が強く吹く場所かどうかを感覚的に分かっていると思うので、そういう場所では特に対策をしておくべきでしょう」(松島さん)

強風で物が飛んでくるのは地上何階まで?

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風台風の被害の中で、もう一つ注目しておきたいのが窓ガラスの破損です。ガラスが飛び散り、強風が部屋の中を吹き荒れて、家中がめちゃくちゃになります。これは、風に強いとされている、マンションなども例外ではありません。

「ただ、最近の窓ガラスは強度が上がっているので、風そのもので割れることは考えにくいです。以前に見た実験映像では、風速80メートル以上の風を受けたときでも、たわむことはあってもガラスは割れませんでした」(松島さん)

そんな強靭なガラスでも、風で何かの物が飛んで来たら簡単に割れてしまいます。松島さんによると、物が飛んできて窓ガラスが割れるリスクがあるのは、地上4階くらいまでとのこと。それ以上の高さには、竜巻で物が吹き上がるなどしない限りは、まず風で物が飛んでくることはないとのことです。

風台風は雨と風を一度にもたらします。新聞紙やタオルのような軽いものでも、水分を含むと窓を割り、人を傷つける恐れがあるそうです。そのため、風台風が上陸する前には、物を飛ばされないために準備をしておくべきでしょう。

強風への対策をする上で、意外と見過ごされているのがベランダだと松島さんはいいます。囲いになっているので安心しがちですが、中で風がはらむことで、軽いものは吹き飛んでしまうとのこと。植木鉢なども軽く、枝葉が広がっているものは、飛んで行ってしまう恐れがあるそうです。

川から離れていても、土地が低い場所が洪水する理由

続いて、台風19号のような雨台風の場合ですが、最大のリスクはやはり洪水です。警戒すべきは、ハザードマップで浸水が予想されている河川沿い。一級河川については、ここ2年ほどでハザードマップが更新されているそうなので、今一度自宅のリスクを確認しておくべきでしょう。......松島さんによると、都道府県が管轄する二級河川の一部は更新が遅れている自治体もあるようですが。

ただ、川から離れた場所でも安心はできません。今回のような豪雨に見舞われた場合、都市の処理能力を超えた雨水が溢れてしまうからです。このような洪水を内水氾濫と呼んでいます。

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松島さんによると、内水氾濫は年々増えているようです。下水管は1時間あたり50ミリまでの雨を許容できる設計なので、それ以上の雨水を排水できません。このため、近年では下水管や雨水管の口径をあげる、その本数を増やす、許容範囲を超えた雨水を貯める貯水槽や貯水池を増やすなど......。さまざまな取り組みが進んでいますが、「雨量の増加に追いついていない」のが現状のようです。

では、どのような場所では、内水氾濫に注意すべきなのでしょうか? その一つの目安になるのが、地形の高低差だと松島さんは話しています。

「下水管は道などに沿って埋設されているので、その土地に合わせて傾斜しながら伸びています。下水管に流れた雨水は高いところから低いところに流れようとするため、谷のように他の土地より低い場所に集まり、そこで限界を超えてマンホールからあふれてきてしまうわけです」(松島さん)

内水氾濫にはいくつかのパターンがある

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台風19号では武蔵小杉で内水氾濫による被害が起きました。このときは、多摩川に下水を流す排水口よりも、川の水位が上昇。下水管を通って、川の水が逆流したことが氾濫の原因だったと、松島さんは話しています。川砂を巻き込んだ泥水が逆流したため、床下浸水した家屋などでは、その泥を掃き出すのに大変な苦労があったそうです。

「なお、下水管のうち合流式と呼ばれるものは、雨水と生活排水をまとめて下水処理場まで流しています。これが溢れると悪臭や病気を引き起こす可能性もあるので、そのリスクを理解しておく必要があるでしょう」(松島さん)

このように、内水氾濫にはいくつかの原因があります。最近では渋谷や丸の内など、開発が進んでいるエリアでも、それが原因となって起きる氾濫をもあるようです。

「マンションでは管理会社が敷地内しか掃除をしませんが、雨水を流す排水口は公道にあります。かつては近隣住民の方が掃除やドブさらいをしていたのでしょうが、今では掃除されないまま放置された排水口が落ち葉などで詰まり、それが原因でプールのように水が溜まってしまうケースが、ここ数年で起きているんです」(松島さん)

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内水氾濫については自治体で内水(浸水)ハザードマップを公開しているところもあるそうです。ただ、それはあくまで過去の実績図のため、今後に未曽有の雨台風が上陸した際に、必ずしも安全であるかを確認できるものではないと松島さんは話しています。

近年では「過去最大級」と呼ばれるような災害が増えています。気象庁の資料によると、ここ10年と統計をはじめた1975年~85年を比較すると、1時間に50mm以上の雨が降る回数が約1.4倍に増えているようです。

今年は台風の被害が相次ぎました。次の台風シーズンまでに、台風や豪雨、強風などによる自宅のリスクを、今一度見直してみてはいかがでしょうか?

【取材協力】
災害リスク評価研究所

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