驚きの品揃え「トライアル」「久世福商店」が展開する新業態:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

8月23日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「物価高に挑む~激安店と高級店~」。終わりが見えない物価高騰。激安スーパー「トライアル」と高級店「久世福商店」はさらなる客層の拡大を狙い、新業態をスタートさせた。
ガイアは生き残りをかけて奮闘する小売業界の挑戦者に密着。そこには、客の心をつかむ“驚きのアイデア”があった。

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「トライアル」がコンビニ型店舗で勝負!299円「レンチン商品」開発に密着


今年、賃上げ率が33年ぶりに5パーセントを超えた日本。しかし、物価変動を考慮した実質賃金は、過去最長26カ月連続のマイナスを記録した。物価の急上昇に庶民の給料が追いつかない状況が続き、秋には一層の値上げラッシュが待ち受けている。

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福岡に本社を構える激安スーパー「トライアル」は、そんな現状をチャンスと捉え、激安戦略でさらなる拡大を狙っていた。24期連続で増収を達成し、年商は7179億円。今年3月に上場すると、時価総額が一躍、グロース市場トップに躍り出た。
創業者の長男・永田洋幸取締役は、「昨今の物価高で、お客さんが求めているものを、私たちはさらに求めやすくしなければならない。時代の変化に合ったフォーマットを随時開発していく」と話す。

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新戦略の責任者に抜てきされた廣石財さん(34)は、東京大学を卒業後、大手広告代理店に就職。小売業界でマーケティング力を試したいと、5年前、トライアルに転職した。

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福岡市・城南区。トライアルが展開してきた郊外とは違い、マンションや大学が集まるにぎやかな街に、廣石さんはこれまでにない店をつくろうとしていた。広さは42坪と従来店の約30分の1。仕掛ける新業態は「都市型小型店」とこれまでの真逆をいく戦略で、すでに「トライアル ゴー」という名で約30店舗を運営している。本格展開を見据え、実証実験中だ。

今回の店は特別で、地下鉄の駅やバス停が近い好立地だが、売り場はこれまでの最小で
坪単価は、郊外店と比べて倍以上だという。廣石さんは「(この街には)普段利用していない潜在的な“未来のお客さん”がいると思うので、そこを開拓していきたい」と話す。
7月上旬。新店舗オープンに向け、廣石さんは商品開発を統括する大塚長務さんを訪ねた。大塚さんは元・和食の料理人で、外食チェーン「明治屋」の社長。8年前、トライアルグループとなった。

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大塚さんが加わったことで、トライアルは食品の開発をより強化しようと去年、「トライアル ゴー」の本格展開を見据え、料理別の専用キッチンをつくった。「安いからと言って(質を)妥協するのではなく、一品一品が深くならないと戦えない時代になっている」と大塚さん。新店舗の成功は、大塚さんが生み出す“目玉商品”にかかっていた。

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オープンまで3週間。目玉商品の開発を託された大塚さんは、大型店で人気のプルコギを、より手軽にする新商品を考えていた。電子レンジで温めるだけで調理が終わり、1人前を199〜299円に設定。使うのは外国産の牛肩ロースで円安のため高騰しているが、大塚さんは、「プルコギに最適な肉が欲しい」とこだわった。さらにコンビニと差別化するため、冷凍や調理済みではなく、生肉での商品化を目指す。

大塚さんがもう一つの切り札として考えていたのが、普段、飲食店で働くプロの料理人たちが考えた商品を競わせる「新商品コンテスト」。今回のテーマは「500円以下の焼き菓子」で、審査には廣石さんも参加。エントリーされた39品の中から新店舗で売り出すスイーツを決める。

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洋菓子店のパティシエが提案したのは、新感覚のシュークリーム。牛乳をムース状にしたクリーム入りだ。インパクト大の「めんパイ」は、生地に明太子を塗って焼き上げ、クリームの中にも明太子を入れた。「初めての感じ」と大塚さん。果たして、目玉商品に選ばれたのは?

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7月26日、新店舗「トライアル ゴー 福岡別府3丁目店」がオープンした。24時間営業の都市型小型店。見た目はコンビニのようだが、青果、精肉は充実しており、総菜・弁当はスーパーならではの品揃え。どれも格安で、その中身は別物だった――。

こだわりの“和の食品”が人気の高級店「久世福商店」が進める“お得戦略”と“新たな需要発掘”


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一方、「テラスモール湘南」(神奈川・藤沢市)内にあるのが、全国に159店舗を展開する「久世福商店」。店内には、こだわりの和の食品が約1000種類も並び、メーカーと共同開発したオリジナル商品が売り。3種類の柑橘類と藻塩を使った「塩ポン酢」(480円)は、一般的なポン酢の倍の値段。ご飯のお供「土佐の赤かつお」(799円)は、高知の老舗鮮魚店が秘伝のタレで炊き上げた逸品。品質重視の高級路線ながら付加価値のある商品が人気で、中には一度に1万円近く買う人も。売り上げの4分の1を占めるのがギフト需要で、専用のカウンターもある。

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久世福商店は物価高を受け、2年前に値上げを実施したが、その影響で客離れが起きてしまった。そこで去年12月、運営会社「サンクゼール」の久世良太社長は、値下げを実施。これまでに91品目、平均15パーセント値下げした。久世さんは、「今まで以上に価格に注目するのは当然のこと。“価値”に目がいくように新しい提案を、こういう局面だからこそしっかりやらなければならない」と話す。危機感を抱く久世さんは、新たな価値を提案できる新店舗の開発に乗り出した。

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それは、JR町田駅と直結している「町田マルイ」に、オープンさせる“都市型小型店”。
売り場面積は従来店の約3分の1で、店の内装を明るく一新。久世福になじみがなかった人にも気軽に立ち寄ってもらうのが狙いだ。
物価高で客離れが起きた高級店にとって、今回の小型店開発は社運をかけた重要案件。
1年半前からプロジェクトチームをつくっていた。

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商品開発リーダーの小倉未帆さん(32)は、新たな客層をつかむため、これまでにない商品の開発に取り組んでいた。
小倉さんが訪ねたのは、宮崎市内にある「平和食品工業」。8年前から、久世福のオリジナル商品を共同開発している。

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製造しているメイン商品は、宮崎名物「鶏の炭火焼き」。専用の大型七輪を使い、熟練の職人たちが豪快に手焼きすることで肉のうまみが凝縮され、香ばしい味わいに。
すでに久世福で販売している商品だが、小倉さんは選別の際に網の目からこぼれ落ちる小さな鶏肉に目をつけていた。
廃棄していた部分を使って「もったいない商品」をつくれないかと打診すると、メーカー側も大喜び。これまで、年間2トンぐらい廃棄していたという。「若い世代は(サステナブルに)意識が高い人も多くいると思う」と小倉さん。これなら、従来品より価格を抑えられるため、お客さんもお試し感覚で手に取ってくれそうだ。

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静岡・焼津市。小倉さんは、11年前から付き合いのある「新丸正」を訪れた。良質な材料を使い、伝統的な製法で香り高いかつお節をつくっているメーカーだ。
このメーカーと共同開発しているのが、ドリップ式の「飲むだし」。リラックス効果が期待できると注目されているだしを、もう一つの看板商品にしたいと考えていた。「新丸正」の吉田宗一郎さんは「本当にこの商品は難しくて、削りの原料を1ミリ単位で変えると、だしの出方が変わる」とこだわりを話す。開発には1年近くかかった。

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迎えたオープン当日。これまでの久世福を一新した明るい店内に、約300の商品が並ぶ。厳選した定番商品のほか、この店限定の「もったいない商品」も。ドリップ式の「雫だし」(190円~)は個別包装にし、鶏節やホタテなど6種類を用意した。オープン前、店の外には大行列ができ、その後、店も多くの客で大盛況となったが、小倉さんに、予想外の試練が待ち受けていた――。

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