「LGBTQ+当事者が幼くして覚えるのは“嘘をつくこと”」エンタメ作品に求められる意識の変化

公開: 更新: テレ東プラス

「25時、赤坂で」LGBTQ+インタビュー 後編木ドラ24「25時、赤坂で」最終回(第10話)より

木ドラ24「25時、赤坂で」(毎週木曜深夜24時30分)の脚本監修を務める“LGBTQ+インクルーシブディレクター”のミヤタ廉さん。インタビュー【後編】では、ゲイ当事者が背負ってきた思いや、これからのエンターテインメントへの展望を聞いた。

前編】では、“LGBTQ+インクルーシブディレクター”の仕事内容や、ゲイ当事者にとってのBL作品についてなどの話を。

【動画】LGBTQ+インクルーシブディレクター・ミヤタ廉が携わったBLドラマ

LGBTQ+当事者のキャラクターを描く上での意識の変化


「25時、赤坂で」LGBTQ+インタビュー 後編LGBTQ+インクルーシブディレクター ミヤタ廉さん

―― “LGBTQ+インクルーシブディレクター”という役職名にされたのは、どのような経緯なのですか?

「映画『エゴイスト』にスタッフとして参加した際に、今後も活動していく上でしっかりとした肩書きを作ろうと、鈴木亮平さんや有識者の方に相談して役職名を決めました。

海外を見ると、2022年にNetflixでヒットした”Heartstopper”にはJeffrey Ingoldさんという方が、コンサルタントという名称で参加しています。また、アメリカでは、 “組織” としてメディアにおけるLGBTQ+の描かれ方をモニタリングしている”GLAAD”という団体もあり、包括的な問題意識についても発信されていますし、GLAAD Media Awardという賞を催して、LGBTQ+コミュニティに貢献したメディアや人物を多くの部門で表彰しています。

映画『エゴイスト』(2023年公開)は北米やヨーロッパ、エンドロールで流れる僕のクレジットを見て興味を示す人が多かったと聞きます。僕自身も直接、イギリスやフランスの記者から『具体的にどういうことをしたのか』『あのシーンにおいてどういう考えで彼にアドバイスしたのか』などインタビューされ、関心の高さに驚きました。『25時、赤坂で』も、世界に配信されていますので、世界の方々が“LGBTQ+インクルーシブディレクター”のクレジットを見てどう思うのか興味深いです」

――お仕事をされる中で、LGBTQ+当事者のキャラクターを演じる俳優さんの意識や演じ方が変わってきていると感じることはありますか?

「今まで仕事でご一緒した、映画『エゴイスト』の鈴木亮平さんや、トランスジェンダー男性役が登場する映画『52ヘルツのクジラたち』(2020年公開)で主演をされていた杉咲花さんは、驚くほど勉強してましたね。その上で、どういう演じ方がいいのか、自分の役を演じる上でLGBTQ+のキャラクターをどういう気持ちで受け止めればいいのか、などたくさんの質問をされました。

また、映画『エゴイスト』『52ヘルツのクジラたち』の取材において、俳優さんたちが、特にLGBTQ+やセクシュアル・マイノリティについて伝えたい事に齟齬が生じないよう、僕やライターの松岡宗嗣さんが、言葉や表現について一緒に考えたりしていました。

それはキャストの皆さんにご自身の言葉で遠慮なく発信してもらう為の作業でもありますし、携わったほとんどのキャストの方々が、当事者や周りの方たちを意図としない形で傷つける言葉や間違った表現が一つでも入っていないかというところにまで意識を向けていました。そうした俳優さんの姿勢は周りの俳優さんたちに変化を与えていくのではないかと思いました。

ただ、ある程度年齢を重ねた世代の方の中には、過去のエンターテインメントで映し出されてきた“想像上のゲイ当事者のキャラクター”が強く刷り込まれていることもあるかもしれませんので、そうした部分を共に時代に合わせて調整していければと思っています」

「25時、赤坂で」LGBTQ+インタビュー 後編木ドラ24「25時、赤坂で」最終回(第10話)より

――そうした作られたイメージが影響していると感じられるのは、どんなところですか?

「例えば『オカマバーみたいなものを作りたいんです』と言われた時、まず作りたい理由を確認し、その上でコメディリリーフ的な描き方を求められている場合に『それは難しいです』とお伝えすると『実際にそうした店は存在するのに、なぜダメなんですか』と言われたりします。

実際、ビジネスとして現実に存在していても、それをフィクションの世界の中で映像として表現・表象することでは、そこに現れる意味が違ってきます。作品内の“笑いの要素”としてだけ“オカマバー”を使いたいというのは、物事の表層の一面でしかなく、そのために過去のエンタメにおいて、失われたきた背景や多様性があり、多くのセクシュアルマイノリティに不快さを抱かせ続けてきた歴史があることなどをお話しさせていただきながら、なぜダメなのか、何がNGなのかを先方に説明して、納得してもらって、より幅広い人たちにとって良いものができるように別のアイデアを提案していくことが僕の仕事です」

LGBTQ+当事者が幼くして覚えるのは“嘘をつくこと”


「25時、赤坂で」LGBTQ+インタビュー 後編木ドラ24「25時、赤坂で」第6話より

――そう考えると、これまで当事者の立場を慮ることなく、制作側の都合で扱ってきた映像作品やメディアにも罪深い部分があると反省させられます。

「ジェンダーやセクシュアリティに気を配ることが求められる時代になって、『大変だ』『面倒だ』と面と向かって言ってくる方もいらっしゃいます。その気持ちもよく分かります。今までOKだったものを変えていくのは手間暇がかかることなので。

僕が思うに、LGBTQ+当事者の多くが幼くして覚えることが“嘘をつくこと”だと思っています。その一つの例として、ゲイのキャラクターとして誇張されたものが“笑いの対象”としてテレビ等で放送された時、当事者たちが翌日学校などで自分に笑いやからかいの矛先を向けられないように“演技”をしてしまうんです。自分のセクシュアリティを明かさない人にとっては、本当の気持ちとは違うことを考え、発さなければいけない。

今でこそセクシュアリティを掲げた上で活動をしていますが、僕も幼稚園、小学校低学年の頃から、どう考え、どう振る舞い、どう演じるかを考えながら過ごしてきましたし、それでも見抜かれて虐められた経験だってあります。自分の気持ちや発言、行動すべてにひと手間ふた手間加えなければならない面倒くさいことを、僕たちはずっとやってきています。

ですので、セクシュアリティに気を配るのが大変だ、面倒だと言う方々には、『(面倒臭い)気持ちはよーく分かりますよ』と伝えます。それならば、お互いが面倒くさくないようにするためにはどういう形がいいのか、変えていくことを一緒に模索していきたいと僕は考えています」

「25時、赤坂で」LGBTQ+インタビュー 後編木ドラ24「25時、赤坂で」第6話より

――当事者の方々が最初に覚えるのが“嘘をつくこと”というのは、重いですね。自分が何かを発するにあたって、持っていない感覚や価値観にも目を向けられているかは、頭に置いておきたいです。

「実際、別の案を依頼すると、やはりさすが『プロだなぁ』と思わせる面白い意見を出していただいたりします。

ただ、その昔ながらの表現や表象の裏で、多くの人たちが透明化させられたり、かつ、そのネタを面白いと思わない人もいると意識していただくことが、これからの作品作りには必要になってくるのではないでしょうか。現在もセクシュアルマイノリティとして自分を隠して生きている子供(だけでなく、大人もですが)が、メディアや社会によって負わなくてもいい傷を負わされてしまう環境なんて、どう考えたって必要ないですし、誰もがそうした意識を持つことが当たり前になるためにはどうすればいいかを、みんなで考えていきたいですね」

――作品制作においてだけでなく日々の生活においてそうした意識を持つことが、これからの社会でさらに大事になっていきますね。

「人は、信頼関係があっても、誰にでも言えないことの一つや二つあると思うので、そういうところも含めて他者とどう接していくかが大切だと思っています」

“LGBTQ+インクルーシブディレクター”のミヤタ廉さんが脚本監修した、木ドラ24「25時、赤坂で」第1~3話と最終話を、「ネットもテレ東」で期間限定無料配信中!