45日かけて甘さを引き出す“究極の干し柿”
続いて向かったのは山梨県。戦国時代には、甲斐の武将・武田信玄が陣中食に干し柿を用いるなど、古くから柿の名産地として知られています。現在も、干し柿の出荷量は長野、福島に次ぐ全国3位。この地で、干し柿が完成するまでの全てを学ばせていただくことに。
早速、お世話になる農家さんの元へ。すると、軒先にのれんのようにずらりと干された柿が。その数、約1万3000個! 甲州市の冬の風物詩「柿のれん」です。その光景の美しさに、2人は大感動!
こちらは、家族経営で昔ながらの製法を守り続ける「岩波農園」。ここ松里地区で作られる「松里の枯露柿(ころがき)」は、その品質の高さから、江戸時代に幕府にも献上されたほど。最高級品は、1個1500円の値が。
干し柿の最高峰「枯露柿」作りの秘密を、「岩波農園」の岩波賢治さん、珠美さんご夫婦から特別に教えていただきます。
使われるのは、古くから山梨で栽培される「甲州百目」という品種。一般的な柿は、ひと玉200グラムほどなのに対し、約375グラムもある大玉です。糖度20%の生の状態から水分と渋を抜くと、糖度は70%に。
枯露柿作りは、収穫から完成まで45日。通常の干し柿に比べ、約2倍の時間がかかるそう。賢治さんによると、自然の果物の風味を損なわないよう、中身を熟させながら乾燥させていくのがこだわりで、「時間と手間暇をかけないとおいしいものはできないね」と話します。
と、ここで、干して1週間の柿を食べさせていただくことに。「フルーティですごく美味しいです」とソステネスさん。乾燥を1週間でやめ、水分量を50%残した半生の干し柿は、「あんぽ柿」と呼ばれ、ゼリーのようなジューシーな食感が特徴。そこからさらに1カ月以上かけ、水分量を20%に。極限まで甘みを引き出したものが枯露柿になるのです。
その後は、南アルプスから吹く「甲州からっ風」と呼ばれる冷たく乾いた山梨特有の風で、じっくりと吊るし干しに。すると水分が抜け、大きさは3分の1ほどに。
ここで行うのが「手揉み」と呼ばれる工程。乾燥は外から進むため、中心部に残った水分を全体に馴染ませ、均等に乾かします。しかし、何度も揉むと柿がカチカチに固くなってしまうそう。
「ブラジルでも手揉みはやっていましたが、インターネットの知識だと力加減がわからなくて」とカロウさん。賢治さんをお手本にし、手揉みの作業をお手伝い! 果肉と種を切り離すように、最小限の力と回数で揉んでいきます。
手揉みで乾燥を調整しながら、軒下で吊るし干しにすること3週間。竿から下ろし、平らな形に整えながら、藁を敷いた棚に並べる「棚干し」の工程へ。「柿が大きいから、これをやらないと平らに乾かない」と賢治さん。ふっくらとした食感を残すために、触りすぎは禁物です。「乾かすだけで2段階もあるなんて、おいしい干し柿を作るにはそれだけ手間がかかるんですね」とソステネスさん。賢治さんは、「果物作りは日本では園芸と呼ばれていて、芸術の『芸』が付くんだよね。だから作品っていう感じでみんな作っている」と教えてくださいました。
約1000個並べ終えたら、今度はひっくり返す作業。3日に一度裏返すことで、片面ずつ1週間かけ、じっくり乾燥と熟成を進めていきますが、棚干しができるのは、湿度の低い日中のみ。毎日、広げては片付けてと、繰り返す必要があるのです。
棚の下に藁を敷いておくのは乾燥のため。藁は中が空洞になっていて湿気を吸収しやすく、棚をしまっている間も乾燥を進める効果があるのです。「この棚は乾燥室の役割もあるんですね。すごく考えられています」とソステネスさん。
この日の作業はここまで。仕事終わりに珠美さんの案内で2階へ向かうと、柿のれんの間から富士山が! 美しい風景に、2人は大感動!
この日、賢治さんに勧められて向かったのは、近所のホームセンター。店内には、干し柿専用のコーナーが! 干し柿作りが盛んな甲州市では、秋になるとどこのホームセンターでも一般家庭向けの干し柿グッズがずらりと並ぶそう。
手動の皮剥き機に、吊るす道具だけで4種類も。「平井農園」で使っていたクリップなど、8500円分の干し柿グッズをお買い上げ!
そしていよいよ、仕上げの工程。1週間かけて昼は棚干し、夜は藁で乾燥させたら、乾いている柿を選別します。中の水分が程よく抜け、エクボのようなヘコみが現れたら、棚干し終了のタイミングです。
乾燥を終えた柿だけを回収したら、さらに2日ほど寝かせます。天日干しをやめ、室内で一度乾燥をストップさせると、中の果糖が表面に染み出て、甘さの証といわれる「柿霜(しそう)」という粉がふいた状態に。最後に3日仕上げの棚干しをしたら、収穫から45日目、究極の枯露柿が完成!
出来たていただいたソステネスさんは、「オイシ〜」と感動! 「間違いなく人生で最高の干し柿です」とカロウさん。じっくり45日かけて極限まで引き出した究極の甘味と風味を堪能しました。
「果物は、不思議と作った人の気持ちが出るんだよね。同じやり方を教えても、できるものがみんな違う」と賢治さん。「干し柿作りには愛が必要ですね」と話すソステネスさんに、「お二人なら絶対できると思いますよ」と激励の言葉をくださいました。
別れの時。「たくさんの伝統的な知識を教えていただき、ありがとうございました。この経験をブラジルでも生かし、もっと良い干し柿を届けられるよう頑張ります」と伝え、ブラジルのお菓子と、カカオで作られた保湿クリームをプレゼントします。
すると岩波さんご夫婦から、柿のれんがプリントされたキーホルダーとヘタ取り用のナイフ、さらに「学校パン」という、この地域の卒業式で配られるパンをいただきました。「岩波農園の卒業証書ですね」とカロウさん。
「お互い地球の反対側で干し柿を作ることになるけど、頑張って、いい干し柿を作りましょう」と賢治さん。ソステネスさんは「離れていても私たちの気持ちは同じですね」と伝え、ハグを交わしました。
「岩波農園」の賢治さん、珠美さん、本当にありがとうございました!
干し柿を通じて、さまざまな出会いと学びがあったニッポン滞在。帰国を前に2人は、
「ニッポンで出会った皆さんと干し柿、その全てから愛情を感じました」「今回の旅で干し柿への向き合い方が変わりました。ブラジルで最高の干し柿を作っていきます」「ニッポン、ブラジル、干し柿、ありがとうございました!」と話しました。
ソステネスさん、カロウさん、またの来日をお待ちしています!
月曜夜8時からは、月曜プレミア8「世界!ニッポン行きたい人応援団」を放送!
●ニッポンの“ひな人形”が大好き!
“ひな人形”を愛するアメリカのジュディさん。東京・目黒「ホテル雅叙園東京」の「百段雛まつり」を見て感動☆ そんな雛祭りが、今年4年ぶりに開催♪ ジュディさんが訪れた際に対面し意気投合した人形研究家が今回も監修! 800体の「座敷雛」を飾る様子に密着! さらに、全国で開催する「雛祭り」も! 中でも埼玉県岩槻は、人気漫画「着せ恋」の舞台でもあり“人形の街”として大盛況!
●ジュディさんの人生が変わっちゃった
ジュディさんは京都へ。伝統的手法を守り京人形の第一人者として位置づけられる大橋弌峰(いっぽう)さん、手足師・澤野正さん、頭師・川瀬猪山さん、髪付師・井上正幸さんに出会い、分業によって作られる「ひな人形」の匠の技を学ぶ。海を越えた奇跡の縁も!
あれから4年…ジュディさんからビデオレターが! ひな人形をアメリカに広めるため、新たに始めたことがあるとの報告が!