2月22日(木)"猫の日"、BSテレ東は「BSキャッ東」に改名し、1日中猫まみれの番組を放送!
藤あや子さん、住吉美紀さんが司会を務める「猫の幸せ 私の幸せ~猫のこと、ちゃんと考える~」では、遊んでくれない猫が豹変する「絶対遊ぶ秘密のコツ」や、猫大歓迎のお宿やスポットを巡る「愛猫との夢の旅」、ぽっちゃり猫ちゃんの「ダイエットに挑戦」など、猫と幸せに暮らすための大事な情報をお届け。
さらに、2年前に紹介した元東京大学教授、AIM医学研究所代表の宮﨑徹先生が登場。猫の宿命ともいえる不治の病“腎臓病”を解決するたんぱく質「AIM」の研究はその後どうなったのかを大発表! 番組収録後、宮﨑先生にさらに詳しくお話をうかがいました。
猫の“腎臓”薬の完成はいつ?
――宮﨑先生は、猫の8割以上がかかると言われている“腎臓病”の原因を世界で初めて究明し、AIMによる薬(AIM薬)を開発中です。「2026年から27年を目標に医薬品として承認を得たい」とのことですが、実現までに何%ぐらいの段階まで来ているのですか?
「長い時間をかけて薬を作ってきましたが、薬自体はもうほぼ完成していますので、科学者的にはほぼ100%です。後は省庁に医薬品としての承認を得る手続きだけですね。皆様に使っていただく許可を得るためには、非臨床試験と臨床試験の二段階をクリアすることが必要で、これから非臨床試験を行い、年内には臨床試験までできる予定です。もう80%ぐらいの段階には来ていると思います」
――もうすぐですね! 開発を進める中で、2021年夏、コロナ禍の経済的な理由で企業の資金が打ち切られ中断せざるを得なくなった際、愛猫家約2万人から計3億円近くの寄付がよせられ研究続行となったことも大きな話題となりました。この他にも、ご苦労や大きな壁となったものはありましたか?
「科学的な問題は我々研究者の技量で1つ1つクリアしていくことなので必ず解決できることなのですが、資金の面では苦労もありました。治験の資金は5億、10億となるため、企業や投資家の方々に賛同いただけるようお話をするのですが、科学者同士の話し方では伝わらないことが多いので、理解してもらえるような説明を心掛けました。
また、様々な利権が絡んできますし、薬が開発されると困る方々から横やりが入ったりすることもあって…。我々研究者はピュアなので、そういう事に心が折れてしまったりするんです。でも薬を待ってくれている人たちのためにも開発を遅らせるわけにはいかないと頑張ってやってきました。
2021年の寄付は、こちらからお願いした訳ではなく、愛猫家の方々が自発的に動いてくださったもので、温かいご支援が心の支えになりました。あれがなかったら猫薬の研究はやめて人薬の開発に専念していたかもしれません。責任感とモチベーションが大いに上がりました」
――目標通り2026年に認可されればAIM薬を注射で投与できるということですが、これまでの腎臓病の治療とはどのように変わってきますか? 猫は、美味しくない療法食や苦い薬を飲むのが苦手な子が多いですが、そうしたものは必要なくなるのですか?
「腎臓病の進行具合、ステージにもよりますが…。“療法食”はリンやたんぱく質など腎臓の負担になるものを減らしたフードです。AIM薬を投与していれば何でも食べていい、ということはありませんが、今までより制限が楽になるかもしれません。
腎臓は100%働いている必要はなく、50%になっても元気に生活ができます。“腎臓病”=山火事をイメージしていただくと解りやすいのですが、どんどん腎臓が燃えていき丸裸になっていく病気です。AIMによって燃え広がりをしっかり止めて、腎臓にまだある程度しっかり働くところが残れば、元気なまま生活できるはずです。」――山火事の例え、とても良くわかりました。末期の腎不全になってしまった猫でも、AIM薬は効果があるということですね。
「治験では、最後のステージでかなり悪い状態になっていても、AIM治療薬を注射すると元気になってご飯を食べ始める猫を何頭も見ています。ただ、重症になってからの投与では、元気になっても貧血など様々な病気を発症することがあります。そこを上手くコントロールしていく必要は出てきますが、効果は十分にあると思っています」
――腎臓病の初期であれば、宮崎先生監修のAIM総合栄養食やおやつを与えて様子をみるということでも大丈夫でしょうか?
「AIM総合栄養食やおやつには、猫が本来持っているAIMの働きを助ける成分が入っています。元々、猫のAIMは働いていないので、強制的にお尻を叩いて働かせているようなものですね(笑)。でも、猫が持っているAIMを十分働かせても掃除しきれないほどたくさんのゴミが腎臓にたまっているときは、AIM薬を投与しなければならないと思いますね。
腎臓病のステージにもよりますが、我々の見解としては、初期の段階ならAIM総合栄養食やおやつで進行を遅らせて、ステージが進んでしまったらAIM薬を投与するのが最適だと考えます。腎臓病は、具合が悪くなった時は、すでにかなり末期に近づいた状態です。年に一度でもいいので血液検査をして、今自分の猫が腎臓病のどのステージにいるのかを把握しておくことをお勧めします」
――2022年3月末、東京大学を退職し、猫の治療薬開発のために「AIM医学研究所」を立ちあげられました。先生にとって猫はどんな存在でしょうか?
「何と言っても“かわいい”ですよね。でも飼ったこともなく、これまであまりご縁はありませんでした。
私は人間の内科の臨床医で、腎臓病をはじめとする不治の病を治したいという思いから研究を始めました。大切な友人が不治の病で亡くなった時に、“病気にリベンジしたい”と強く決意したのですが、その友人は猫が大好きだったんです。きっと“人の病気だけでなく、猫も治して欲しい”と願いながら旅立ったのだと思います。これまであまりにもいろいろな偶然が重なって猫の腎臓病の薬を作ることになったので、これは友人の繋いだ縁なのだと感じています」
――猫が好きだったご友人に感謝です。きっと天国で喜んでいらっしゃいますね。
「今があるのはその友人のおかげだと思っています。なぜか私の知り合いには猫好きが多いんです。だから飼ってないのに猫の事は良く知っていました」
――猫好きの人に共通点は感じますか?
「猫が好きな人は猫のような人が多いですね。自分を持っていて、クールでほどよい距離を作ってくれるので付き合いやすいです。私が最初に留学したのはフランスでしたが、フランス人は自分の生活や主張を持ちながら付き合ってくれたので、心地よく暮らせました。猫の頭数はフランスが世界一多いそうで、“やっぱりな”と思いました」
――先生と猫とは、やはり深い縁があったようですね。そんな宮崎先生にとって「猫の幸せ」と「自分の幸せ」とは?
「猫の幸せは、人間の幸せと同じで、“本来の寿命まで元気で生きられること”だと思っています。人間の本来の寿命は125歳とも130歳ともいわれていますし、猫は30歳かも40歳かもしれません。今のところ猫の平均寿命は15~20年ですが、ほとんどの猫が末期腎不全で亡くなり、最期は症状が悪化して苦しんで、かわいそうな結末になってしまいます。人間も猫も、無理矢理な長生きではなく、元気なままで本来の寿命を全うできるようにすることが、究極のゴールですね」
――ご自身の幸せはいかがでしょうか?
「全ての猫と人間がそうして究極のゴールを迎えられるようにすることができたら、それが一番の幸せですね。私はそのために今生きて研究を続けているのだと思いますし、それ以上の望みはありません。ですから、AIM薬を作るにあたって余計なストレスを感じたくないですね。研究の妨げになるようなことが起きないよう、薬の完成に向けて100%集中することができたらいいなと思っています」
――猫の幸せのために人生を懸けてくださっている宮﨑先生には感謝しかありません。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします!
2月22日(木)"猫の日"、BSテレ東は「BSキャッ東」に改名! 昨年誕生したBSテレ東のマスコットキャラクター“るるる”(本名:びーえするるる)とともに特別な日をお祝いします! 1日中猫まみれの番組を放送するほか、チャリティ企画「#BSキャッ東は多くの猫を救いたい」キャンペーン、気まぐれな猫たちが予想外の時間に飛び出す「猫時報」なども実施。詳細は「BSキャッ東」でチェック!
「ネットもテレ東」でも「段ボールねこ仮装大賞」「にゃんこの眠いのガマン!ウトウト対決」など、猫まみれ動画を配信!
【プロフィール】
宮﨑徹(みやざき・とおる)
1986年東京大学医学部卒。東大病院で消化器内科医として勤務した後、フランス、スイス、アメリカで研究を重ねる。1996年、人や動物の血液中に存在する「AIM」という遺伝子を発見し、3年後に論文を発表。研究の過程で「AIM」が腎臓の働きを改善することがわかり、 猫の寿命を大きく伸ばす可能性の治療薬の開発に取り組む。2022年、東大を退職し、「AIM医学研究所」を設立し所長に就任。
「AIM医学研究所」公式サイト
公式x(旧Twitter):@Toru51557911
画像素材:PIXTA
(取材・文/猫咲泉)