伝統の職人技が続々!アメリカ男性が、日本一の生産地で「桐箪笥作り」を学ぶ:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は、アメリカ男性がニッポンを初めて訪れた際の様子をお届けします。

美しい木目の秘密や、高い気密性を生み出す技に驚き


紹介するのは、アメリカのワイオミング州に住む、「箪笥」を愛するロジャースさん。

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江戸時代、大阪で生産されたのが始まりとされる箪笥。当時は高価で衣装もちの貴族階級用でしたが、江戸末期になると庶民も持ち物が増えたため、急速に普及したといいます。

そもそも箪笥は物を収納する家具を指し、用途によって種類はさまざま。台所で食器や調理器具などを収納する水屋箪笥や引き出しが多い薬箪笥の他、階段下のスペースを有効活用するために考案された階段箪笥なども。

17年前、パブの店員だったロジャースさん。お客さんからニッポンの仏教を教えてもらい、その時に見た仏壇に心奪われ、独学で作り始めたそう。本格的にニッポンの木工技術を学び始め、図書館へ道具や障子について調べに行った際、初めてニッポンの箪笥を写真で見て一目惚れしたとか。

ニッポンの技を独自に磨き、箪笥作りに没頭。引いて削るニッポンの鉋の扱いもマスターしました。今ではお客さんから注文もあるそうで、現在作っているのは靴の収納箪笥。その組み立ての様子を見せてもらいます。

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加工から組み立てまで製作期間は4日、引き出しの金具は日本製のリサイクル品です。
扉の表面はブックマッチという技法で製作。本を開くように木材を半分に切ることで、左右対称の木目にしています。これらのパーツを組み立てれば、職人のもとで学んだことのないロジャースさんの箪笥が完成!

ニッポンにはまだ一度も行ったことがないロジャースさん。箪笥作りの知識や技術が不足した状態で訪れるのは失礼にあたると思っていたそう。今はそれなりの準備ができているとのことで、「ニッポンに行って箪笥の職人さんから技を学びたいです」と語ります。

そんなロジャースさんをニッポンにご招待! 初来日を果たしました。

出発前、ニッポンで桐箪笥について学びたいと話していたロジャースさん。木目が美しい桐箪笥は機能性にも優れ、内部の湿度を一定に保つことができるためカビが発生しにくくなっています。また、虫を寄せ付けない成分も含まれており、防虫効果も。

さらに桐は火に強く、炎が上がってもすぐに炭化するので、表面だけ焦げて全焼しない性質が。桐箪笥が火災で焦げてしまっても中の衣類は無事、というほど耐火性に優れています。そのため、江戸時代に起きた大火災で人々に桐箪笥が知られるようになったとか、

早速向かったのは、新潟県加茂市。桐箪笥の国内生産日本一の街です。加茂市周辺で作られている「加茂桐箪笥」は、国の伝統的工芸品に認定されています。

加茂桐箪笥の誕生は、約220年前の江戸時代。かつて豊富な桐があったこの地で、一人の大工が箪笥を作ったのが始まりとされています。明治になると多くの職人が箪笥を製造し、加茂川を利用して東北や北海道へ運ばれ、この地で桐箪笥産業が発展していきました。
現在も、加茂市周辺には多くの桐箪笥工房が。

今回お世話になるのは、原木の買い付けから製造までを一貫して行う「桐の蔵」。全国優良家具コンテストで優秀賞を二度獲得した、加茂を代表する桐箪笥工房です。

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早速、三代目親方の桑原隆さんに、ロジャースさんの憧れだった本物の桐箪笥を見せていただきます。桐の蔵の箪笥は、職人によるフルオーダーメード。価格は大きさや引き出しの数、細工などで決まり、高いものは330万円するものも。美しい箪笥の数々を間近で見たロジャースさんは、「職人のすごさが見て取れます」と感動します。

ロジャースさんが桐箪笥に大切なことについて質問すると、「桐箪笥は柾目が命」と桑原さん。柾目とは年輪が平行になっている木目のこと。桐箪笥は柾目が細かく真っ直ぐなことが重要だそう。

また桐箪笥には、引き出しを入れると別の引き出しが出てくるといったように、空気が逃げ場を失うほど高い気密性が。これによって埃や害虫などの侵入を防ぎ、水害時には桐が水分を含んで膨らむことで、浸水を防いでくれるといいます。ちなみに、一番下の引き出しを取り出した場所には、貴重品を収納する隠し箱も。ここで、ロジャースさんが作った箪笥の写真を桑原さんに見ていただくと「木の使い方、木目の使い方が素晴らしいですね。100点です」と嬉しい言葉をいただきました。
今回学びたいことは、高い気密性。そこで、まずは材料を知るために新潟県津南町に向かいます。

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桑原さんと一緒に、今年仕入れる桐の木を見に来たロジャースさんは、初めての桐材に興味津々。箪笥に使う桐の樹齢について質問すると、20〜30年が一つの目安だそう。桑原さんによると、日本では女の子が生まれると桐を植え、20〜30年後、嫁ぐ時にその桐で箪笥を作って持たせる習慣があったとか。

丸太を見て「年輪が細かいところが多いですね。いい桐ですね」と桑原さん。津南町は、冬は雪深く、夏は暑くなる場所。寒暖差が激しいと、年輪も細かく、木目が美しい材料に。
とはいえ、製材してみないと本当の価値はわかりません。虫食いなどがあると、見込んでいた利益の半分に満たないことも。

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今回購入した丸太は50本。樹齢20年ほどの桐を巨大な裁断機にかけます。製材した板には虫食いもなく、美しい木目が! この美しい板は、まず裏板や底板、さらに気密性を作る引き出しにも使用するそう。見えない場所にこそ良い板を使うのが、美しい桐箪笥の秘密なのです。

材料となる桐材について学んだ後は、桐箪笥作りを見せていただくことに。製作工程は大きく「木取り」「組み立て」「塗装」「金具付け」の4つ。それぞれ専門の職人がいる分業で、総責任者の親方しか行えない木取りから始まります。

木取りとは、親方が作った設計図をもとに、部品の板材を用意する作業。背板など大きな板は、何枚か貼り合わせる場合も。その際に重要なのは、木目を合わせ、きれいな一本の木に見せること。数多ある木材から、自然で美しい木目になる組み合わせを選んでいるそうで、「木目の美しさを最大限に引き出す技ですね」とロジャースさん。

一つとして同じものがなく、木目が命と呼ばれる桐箪笥。中でも箪笥の顔となる、引き出しや扉の前面に使用しているのは細かくて美しい柾目。この美しい柾目を引き出すために、曲がっている木目を矯正して真っ直ぐにする職人技が「柾目直し」です。

柾目直しを担当するのは、桑原さんの奥様・真里子さん。まず、曲がっている木目に沿って、割り箸のように板を割っていきます。そして側面に接着剤をつけ、木目のパーツを元の形に戻し、ハタガネという道具で挟み、圧縮。そのまま2時間乾燥させれば真っすぐに。柔らかい桐だからこそできる矯正術です。柾目直しで作られた材料は、特に引き出しの前面に使うそう。

続いて組み立ての作業へ。ここからは、桑原さんの弟で伝統工芸士の鈴木進さんが担当。まずは、高い気密性を生むのに重要な鉋がけをしていきます。

「桐箪笥職人は鉋を使うことがものすごい重要です」と桑原さん。高い気密性を生むかどうかは、鉋くず1枚2枚の差によるもの。桐箪笥職人の生命線ともいえる鉋の刃は、1日に何度も研ぐのだとか。

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ここで、引き出しの高い気密性の秘密が明らかに。桑原さんによると、大きく引き出しを作り、箪笥にあたっている場所を少しずつ削っていくそう。ぎりぎり入る大きさにするため、鉋で削っては引き出しを出し入れし、音と感触でどのくらい削ればいいかを判断していきます。

ぴったり収まったら、引き出しを吸盤で引っ張り気密性をチェック。高い気密性は、職人の経験と確かな技で生み出されます。

と、ここで、ロジャースさんも鉋がけに挑戦。アメリカから持参した日本製の鉋を出すと、桑原さんはアメリカでニッポンの道具を使っていることを喜んでくださいました。

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ニッポンの箪笥を作るために、日本製の道具は不可欠だと話すロジャースさん。「この鉋は持っていません」と目を留めたのは、一般的な鉋と刃の角度が全く違う鉋。これは、「立鉋」または「台直し」と呼ばれる、鉋の台の部分を調整する専用の道具。鉋台は硬い木を使用しているため、刃が直角に立っているのが特徴です。桑原さんによると、鉋台は湿気や乾燥など、季節によって狂うことがよくあるとのこと。

どのように使うかというと……鉋台に平らな板を当てると、凹んだ箇所に光が通ります。その箇所を立鉋で削り、平らにするのです。「鉋の台が狂っていると、鉋がかからないんですよ」と桑原さん。ロジャースさんは、ノミを使って削っていたそう。

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桑原さんに鉋がけを見ていただくと、「上手です」とお褒めの言葉が。「最後、もっと鉋を少し上げるように」とアドバイスをいただき、再度鉋がけをすると、少し修正しただけで歴然! 鉋くずの幅が刃の幅にほぼ近くなりました。進さんにも褒めていただいたロジャースさんは「私の技術はまだまだです。皆さんの神業を見て精進します」と話しました。

こうして、桐箪笥作りの技を教えていただいたロジャースさん。いよいよ気密性の高い桐箪笥作りに挑むことに。

この日の夜は、桑原さんのご家族と職人の皆さんが歓迎会を開いてくださいました。食卓には、里芋をふんだんに使った「のっぺ汁」や、納豆を挟んだ新潟特産「栃尾の油揚げ」が。郷土料理に舌鼓を打ち、皆さんとの交流を楽しみました。

翌日、ロジャースさんはどうしても訪れたかった場所へ。大正創業の「浅野タンス」です。こちらはからくり箪笥にこだわった工房で、皇室に桐箪笥を納入したことも。

からくり箪笥とは、隠し扉など仕掛けの細工が施された箪笥のこと。江戸時代からある、船上で使われていた船箪笥が発祥で、日本海を航路にしていた北前船に積まれ、お金や印鑑を保管していました。貴重品箱が奥に隠されているなど、盗難対策として簡単に見つからない細工が施されていたそう。

出迎えてくださったのは、四代目の浅野誠さんと、息子で次期五代目の克也さん。早速、からくり箪笥を見せていただきます。

お値段82万5000円の総桐のからくり箪笥。エジプトのピラミッドをモチーフに、四代目が考案したもので、7つのうち6つの引き出しにロックがかかっており、最初に開けられるのは1箇所だけ。決められた順番通りに開けなければ、すべての引き出しが開かない仕組みです。

このからくりを5分でクリアできれば箪笥をプレゼントしてくださるそうで、ロジャースさんがチャレンジすることに!

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早速、引き出しの奥に木製の錠を見つけたロジャースさん。引き出しを開けると錠が動き、別の引き出しが開けられるようになっています。この後も順番に引き出しを開け続けますが、なかなか最後の一つが開けられません。それもそのはず、最後の一つには他とは全く異なる仕掛けが。

残念ながらタイムアップ。一体どうやって開けるのか特別に教えていただくと、なんと最後の引き出しは横にずらして開ける仕掛けだったのです。克也さんによると「板に金具をつけて引き出しに見せているだけ」とのこと。ちなみに引き出しの数はさまざまあり、オーダーによってからくりの順番も変更可能。要望があればより複雑にすることもできるそう。

「賞品以上のアイデアをいただきました」と話すロジャースさん。浅野さんは「それが一番! ぜひ作ってください」と激励の言葉をかけてくださいました。

「浅野タンス」さん、本当にありがとうございました!

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