節目を迎えた“サントリー”で受け継がれる「創業の精神」:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

11月17日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「“サントリー”を継ぐ者たち」。「サントリー」は、これまで続いてきた創業の精神を、次の世代にどう託そうとしているのか。
「ガイア」は、常温の缶からキンキンに冷えた生ビールを作り出す新たなサーバーの開発に密着。さらに、本場フランスで培った技術で挑む“唯一無二のワイン造り”に迫る。鳥井信宏さんを始め、“受け継ぐ者たち”それぞれの挑戦を追った。

【動画】オークションで約8100万円の値がついた「山崎55年」

「山崎」100周年…未来に向けた「ものづくり」


9月12日、イギリス・ロンドン。今年で28回目を迎える蒸留酒の世界一を決める品評会「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ」には、ウイスキーの本場、スコットランドやアイルランドをはじめ、世界の名だたる蒸留所から、約2300品がエントリーしていた。

数日に及ぶ厳正な審査を経て、ウイスキーやジンなど約30部門で一位に輝いた酒が次々と表彰されていく。その中からたった一つ、全部門の最高賞が選ばれるのだ。
世界中の名だたる銘酒を抑え、栄誉あるシュプリームチャンピオンに選ばれたのが、「山崎25年」。25年以上、樽で熟成させた希少なモルト原酒を厳選。「サントリー」の自信作で、今年のナンバーワンに選ばれた。

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トロフィーを受け取ったのは、チーフブレンダーの福與伸二さん(62)。「サントリー」のウイスキー事業が100周年を迎えた記念すべき年に、最高の賞を手にした。
「日本の水、日本の自然、日本の気候で造ると熟成も深くなる。非常に丁寧なものづくりを心掛けていて、そこが評価されたと思う」。

大阪府・島本町。「サントリー」の山崎蒸溜所には蒸留釜が並び、ウイスキーのもととなる原酒を造っている。この貯蔵庫だけでも、熟成を待つ原酒の樽が約2000。中には、最初に造った1924年の樽もある。

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福與さんが特別に案内してくれたブレンダー室には、国内外で所有する樽の中から取り出した原酒だけで500本以上。「いろんな原酒を組み合わせて、最終的にここで決める」と福與さん。

「サントリー」には10人ほどのブレンダーがいて、日々、香りや味を確かめながら、調合のタイミングや組み合わせを見極めている。
福與さんが手がけた「山崎55年」は、100本限定330万円で売り出したところ、即完売。去年ニューヨークのオークションで、一本約8100万円の値がついた。

この日、福與さんたちブレンダー陣が待っていたのは、サントリーHD傘下で国内の酒類事業を統括する「サントリー」の社長・鳥井信宏さん。試作中の原酒が出来上がり、鳥井さんはテイスティングをするためにやって来たのだ。

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原酒には、「フロアモルティング100%」の表示が。フロアモルティングとは、原料の大麦を床にまき、発芽させる伝統的な製法。職人が見極めながらかき混ぜることで麦の甘味や香りが引き立ち、味わいがより深くなるといわれている。
手間がかかることから、今ではほとんど機械化されたが、「サントリー」は100周年を記念して、フロアモルティングを取り入れたウイスキーを造ろうとしていた。

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「すでに甘味の量が圧倒的に違う」と鳥井さん。売り出せるのは、早くても20年先と気の遠くなるものづくりだが、鳥井さんは、「次の世代のためという意識で造っている」と将来を見据える。

買収から40年…本場のワイン造りを日本へ


6月下旬。フランス南西部の町・ボルドー。鳥井さんは、世界的なワインの産地を訪れた。ボルドーには6000を超えるワインの醸造所があり、17世紀から続く醸造所「シャトー ラグランジュ」は、指折りの名門。わずか60ほどのシャトーにだけ許された“格付け”を持っている。

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「サントリー」は、40年前にこのシャトーを買収し、経営に携わってきた。決断したのは2代目社長の佐治敬三氏。ワインもすぐには成果の出ない商いだ。
鳥井さんは、「『とにかく時間がかかるから辛抱強くやらなあかん』と言っていた。『このシャトーは、次の次の次の世代のためのものだ』と。佐治敬三さんも父の鳥井信一郎も、“100年先の話”とよく言っていた」と話す。

当時の「シャトー ラグランジュ」は経営が悪化しており、買収は救済のためでもあった。しかし、地元の強い反発があったため、「サントリー」は雇用を守ることを約束。荒れ果てた畑に新たに50万本のブドウを植えると、この改革が実り、畑の広さは約2倍に。それでも、黒字になるまで十数年かかった。

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あれから40年…。地元の人や関係者を招待して行われたパーティーには、約70人が参列した。40年前のことを知る人は、「当時は驚いた。日本人がシャトーを買収することがなかったからだ。サントリーは完全にフランスに溶け込んでいる。地元へ敬意を払ってくれることがとても大きい」、「以前のシャトーラグランジュはレベルが落ちていた。サントリーが買収してからは輝きを取り戻し、格付けにふさわしいワインになった」と話す。
「サントリー」は、その後もさまざまな分野で買収を重ね、グローバル企業へと成長。ここでの40年が、その原点となったのだ。

2004年から16年間、「シャトー ラグランジュ」で、日本側の責任者としてワイン造りに携わっていたワイナリーワイン事業部 チーフエノロジスト・椎名敬一さんは、帰国後、“継ぐ者”として、日本ワインの品質向上に力を注いでいる。
現在、国内3カ所でワインを生産している「サントリー」。山梨・甲斐市にある「登美の丘ワイナリー」は、ブドウ畑の面積が約25ヘクタールあり、東京ドーム5個分に相当する。

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今、椎名さんが特に力を入れているのが、「プティ・ヴェルド」という品種。酸と渋みが強いため、ボルドーでは脇役として使われているが、椎名さんは、この脇役を主役にした日本ならではのワインを造ろうとしていた。

再参入から60年…ビールの常識を変える!新たなる挑戦


一方、「サントリー」の田町オフィス。2021年に立ち上がったイノベーション部は、今、ヒット商品を連発している。去年発売した「ビアボール」は、炭酸で割り、好みの濃さで飲めるビール。これまでにない商品は、SNSを中心に話題を呼んだ。
そして「サントリー生ビール」は、今年4月に発売され、半年で330万ケースを販売。想定を上回るヒット商品になっている。

節目を迎えた“サントリー”で受け継がれる「創業の精神」:ガイアの夜明け
ビールに特化した新商品を打ち出す精鋭たちは、異色の経歴の持ち主で、ビールと関わったことのない人ばかり。
入社以来、経理畑一筋だった、マーケティング本部 イノベーション部の伊藤優樹さん(38)が、開発中のビールサーバーを見せてくれた。
常温の缶ビールを機械にセットし、スイッチを押すと、きめ細かい泡の冷たい生ビールが出てくるこれまでにないサーバー。缶から吸い上げた常温のビールが、冷却された6メートルの管を通るうちに、キンキンに冷えた生ビールに変わっていく仕組みだ。

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伊藤さんが缶ビールのサーバーを思いついたきっかけは、ラーメン店が出すビール。「らぁ麺はやし田 中目黒店」では、業務用のサーバーは置かず、冷蔵庫に入っている瓶ビールと冷えたグラスで提供しており、平均して、1日5、6本の注文が入るという。「はやし田」を展開する「INGS」取締役・塚本一宏さんは、「売れるのであれば、生サーバーを入れた方がいいので検討しようと思ったが、そもそもビールの数が5、6本だと、損になってしまう」と話す。

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一般的な業務用サーバーは、通常10リットル入りの樽から生ビールが約30杯分とれる。中身は缶ビールと同じだが、開封すると3日で消費する必要があるのだ。さらに、洗浄などの手間がかかるため、小さな店ではサーバーの導入が高いハードルとなっていた。
こうした規模のお店は全国に数多くあり、伊藤さんは缶ビールを使うサーバーに商機を感じたのだ。

しかし、8月上旬。伊藤さんが営業の担当者を集めて自信作をお披露目すると、予想外の反応が返ってくる。

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