11月10日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「あなたの生活 アシストします!」。
私たちの生活を便利にしてくれる「お手伝いロボット」が広まろうとしている。開発したのは、世界が注目する日本の人工知能ベンチャー。自ら学習を続けるAIを搭載したロボットで、住空間を一変させようとしていた。
一方、医療の世界でもAIを活用した前代未聞のプロジェクトが始まった。下半身不随になった患者に特殊な装置を埋め込み、電気信号を送ることで、再び歩けるようにするという。
進化するAIは、私たちの生活をどこまで便利に、豊かにできるのか。
【動画】人手不足や障害者の支援も?“AIロボット”の実力は?
掃除ロボットより賢い? お手伝いロボ登場

3月。2年前に設立したばかりの「プリファードロボティクス」(東京・大手町)は、家庭用AIロボット「カチャカ」の発売を2カ月後に控え、最後の仕上げを進めていた。
37名いる社員は、東京大学や京都大学出身など、ロボット研究者が集うエリート頭脳集団だ。
カチャカは、配膳を手伝うために開発されたロボット。料理をこぼさないよう、モノにぶつからず動くことが求められるため、本体の前後に2台のカメラといくつものセンサーが搭載されている。指示を出すと、自ら障害物を認識し、通れるコースを探していく。
カチャカを人と同じように“状況を認識するロボット”に進化させる…これが、プログラム担当、村瀬和都さん(34)の役目だ。
しかし、現状は課題だらけ。40人いるカチャカのモニターに同時に試してもらっているが、「畳のヘリを障害物だと認識し、前に進めなくなってしまった」「ドアの前でカチャカが立ち往生してしまう」など。村瀬さんはAIの学習する能力を活用して、こうしたトラブルを解決していく。
村瀬さんの運命を変えたのは高校時代。愛知万博で見た人型ロボットだった。東京大学に進学し、武道に励みながら研究に熱中。就職した「トヨタ」でも、ロボット一筋! アメリカ・シリコンバレーで世界の最先端に触れ、2022年、“人に役立つロボットを開発したい”と、「プリファードロボティクス」に入社した。
妻の吏紗さん、2歳の娘・日那ちゃんと暮らす村瀬さん。修正したプログラムを、まずは自宅のカチャカで検証する。おもちゃを散らかすなど、日那ちゃんの予測不能な行動で、カチャカの行く手には次々と障害が発生する。「子どもがいる家は、絶対こうなる」と村瀬さん。家庭用ロボットとして役立つには、これをクリアしなければならない。
人手不足や障害者の支援も? AIロボットの実力は
10月。村瀬さんたちが向かったのは、介護付き老人ホーム「アズハイム練馬ガーデン」(東京・練馬区)。関東で46カ所の介護施設を運営する「アズパートナーズ」から、“介護の現場でカチャカを試してみたい”と依頼を受けた。
5月に発売されたカチャカの本体価格は、22万8000円。月6500円ほどで使えるプランもある。
この施設では、68人の入居者に対して、51人のスタッフが、24時間体制で介護にあたっている。1日の業務は、三度の食事の準備や各部屋の掃除。入居者宛のさまざまな荷物も届け、シーツやタオルの交換も行う。
カチャカでスタッフの負担を少しでも軽くする…それが、村瀬さんに課せられたミッションだ。早速、カチャカに食器の片付けを手伝ってもらうことに。まずはこうした単純作業をロボットに任せることで、現場はずいぶん助かるはずだ。
問題は、どれだけ重いものが運べるかだが、カチャカに10キロ以上あるペットボトルのケースを乗せてみると、問題はなさそう。最大20キロ(家具の重量含む)まで運ぶことができる。
さらにスタッフの高橋さんがお菓子とお茶を棚に載せると、カチャカは入居者の部屋へ。
「お待たせしました。お菓子をお持ちしました。召し上がってください」。
実は村瀬さん、開発中の会話プログラムをカチャカに組み込んでいた。もう、単にモノを運ぶだけではない。村瀬さんは、カチャカの会話機能に大きな可能性を感じていた。
10月下旬。村瀬さんは、新たな機能を使って家族を驚かせようとしていた。
実は村瀬さん、自宅のカチャカに娘の日那ちゃんやおもちゃの存在を学習させていた。こうすることで、カチャカがカメラで認識した状況を理解し、会話ができるようになるというが――。
下半身不随の男性がAIで歩ける!? 前代未聞の試み
イタリア北部の町・トリノ。歴史ある美しいこの町で暮らすミシェル・ロカティさんは、家族と一緒に警備関連の会社を経営している。趣味はバイクに乗ることだったが、今はもう乗っていない。
ミシェルさんは6年前にバイク事故を起こし、脊髄を損傷。下半身不随になってしまった。背中には大きな手術の痕が残っており、「医師からは、もう立つことはできないと言われた。人生が変ってしまった」と話す。
そんなミシェルさんはある取り組みを知り、わずかな望みに賭けてみることにした。その名も「スティモ プロジェクト」。脊髄の損傷で動かなくなった体を、再び動かせるようにする試みだ。
このプロジェクトを推し進めているのが、ミシェルさんの手術を担当したブロッホ医師(ローザンヌ大学病院)と、装置を開発したクルティーヌ教授(スイス連邦工科大学)。彼らのチームが開発したのが、この小さな装置だ。
「スティモ プロジェクト」は、特殊な電極を脊髄の上に埋め込み、小さなコンピューターとつなげる。この電極に、脳の代わりにコンピューターが電気信号を送ることで、神経に刺激が伝わり、徐々に歩けるようになるというのだ。
手術を終えたミシェルさんがいよいよ訓練を始める。立ち上がり、歩き出す…。コンピューターから送られる電気信号によって歩き出したのだ。
平らなところが歩けるようになったら、次は階段に挑戦。補助用の器具も徐々に小さくなり、器具の支えがなくても立てるようになった。
そして今年8月。頑張っているミシェルさんに、医師たちからある提案が。テクノロジーの進化で自分の頭で思った通りに足を動かせるようになるというのだ。今後5年をめどに実用化を目指すというが――。
番組ではこの他、カチャカと連携して未来の住みやすい住宅、スマートホームの研究を行う「旭化成ホームズ」の取り組みも紹介する。
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