独占取材!アイロボット~革命児が見据える未来:読んで分かる「カンブリア宮殿」

公開: 更新: テレ東プラス

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「ルンバブルな家具」も~性能アップでルンバ急拡大


今やお馴染みとなったロボット掃除機は年々性能が上がり、ユーザーが急増している。

段差も楽々と乗り越え、ソファの下へ。ロボット掃除機の室内の空間を把握する性能がアップしたことで、普通の掃除機と比べて圧倒的に隅々まで掃除を行ってくれる。掃除が終わると自動的に充電ステーションに収まる。

【動画】ルンバを世界商品にした不屈の男 次なる“家電ロボ革命”とは?


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ロボット掃除機の元祖・アイロボットの「ルンバ」。最近の「ルンバ」は最初に自動的に部屋のマップを生成。ある特定の部屋だけを掃除することも可能だ。ゴミの吸引力も大幅にアップ。カーペットに絡みついた厄介な髪の毛も、独自の回転ブラシが掻き出すことで力強く吸い取ってくれる。そのパワーを支えるのは巨大なゴム製のデュアルブラシ。髪の毛などを巻き込まず、さまざまな床の材質に対応しゴミを強力に吸い上げてくれるのだ。

一方、アイロボットの拭き掃除ロボ「ブラーバ」。フロアを把握し、何度も行ったり来たりを繰り返して、放っておくだけで床をピカピカに磨き上げてくれる。

家庭に普及するお掃除ロボは意外なヒット商品も生んでいる。

東京・新宿区のインテリアショップ「アクタス」新宿店には「ルンバブルな家具」のエリアがある。ルンバブルな家具とは「ルンバ」が掃除をしやすい家具のことだ。

「『ルンバ』がしっかりクリアしていく、10センチくらいを起点に開発を行っています」(「アクタス」家具開発チーム・渡辺宗生さん)

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椅子を引っ掛けられるテーブルも、足の下を高さ9センチほどのルンバがちょうど通過できるように設計されている。今やルンバブルな設計になっていなければ、家具の売り上げにも大きな影響が出るという。

「私たちの商品の構成の中でも、売れているトップ10を見ても8割くらいはルンバブルだと思います」(渡辺さん)

この5年で急拡大し、全世界で9000億円市場となったロボット掃除機。その市場をゼロから作り出したのがアイロボットだ。2002年の1号機発売以来、家庭用ロボットの累計販売は4000万台に達している。

熱いロボット掃除機市場~新機能搭載の最新ルンバ


9月12日、アイロボットの最新型のお披露目が行われる東京・世田谷区のプレス発表の会場。そこに座り込み、子どもと話し込んでいたのは、アイロボットの創業者にしてルンバの生みの親、コリン・アングルだった。

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20年間、コリンが進化させ続けてきたルンバの最新型「ルンバコンボj9+」。コリンは「この商品は他に類を見ないパワーと知能を備えています」と胸を張る。

最新型のルンバは天板が木目調のシックなデザインに驚くような機能を搭載していた。強化したのは室内の障害物を回避するAI機能。対象物が何かを自分で判断、回避する距離まで考えるという。

さらに「パッドが後ろについていて、床をパッドで掃除、3つの穴から適量の水が出てくる」と言う。汚れを前後にこするように拭き取ってしまう「ブラーバ」のような水拭き機能を搭載。これにより、床に残る花粉などの細かいホコリもきれいに拭き取ってくれる。

しかも、カメラとセンサーで認識し、カーペットの直前に来るとパッドが上部に移動。カーペットを水拭きパッドで濡らすこともない。

次々に新たな機能を搭載することで、コリンは日本市場でもロボット掃除機を拡大させてきた。

「日本の顧客はとても要求が厳しく細かいため、日本でうまくいけばどこでも成功できるでしょう。日本の普及率は20%、30%にまで伸ばせる。まだまだいけます」(コリン)

ところがこの発表の日、都内の別の会場では、中国のライバルメーカー「エコバックス」が、「ルンバ」の発表に合わせ最新の商品をぶつけてきた。アイロボットが築いたロボット掃除機市場は、今や最も熱い家電ジャンルとなっているのだ。

そんな中、コリンも3年ぶりに来日し、精力的に動き回っていた。忙しい合間を縫って東京・豊島区の「ビックカメラ」池袋本店に訪ねたのはビックカメラの秋保徹社長。自ら商品説明をし、新製品の売り込みを行った。

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家電量販店にとって「ルンバ」は常識を破る商品だったという。

「掃除機の普及率が高くなって伸びしろがないという位置づけだったのですが、ロボット掃除機の登場のおかげで需要を創出してくれました」(秋保さん)

シェア7割、強さの秘密~舞台裏アメリカ本社直撃


日本市場ではシェア7割という圧倒的な強さを誇るルンバ。その強さの秘密を本拠地のアメリカ・マサチューセッツ州ベッドフォードに訪ねた。

ボストンから車で1時間のアイロボット本社。コリンは執務室のロボットのような変わった机で仕事に没頭していた。ハワイで見つけたというお気に入りの机だ。

「これには癒しと、魔法を感じるんです。唯一残念なのはこの机が歩き出してくれないことですね」(コリン)

壁一面に掲げられたのは20年かけて作り上げた「ルンバ」の特許技術の数々。アイロボットの強さを支える源泉だ。「『ルンバ』はその設計のさまざまな部分について1000件の特許を取得しています」と言う。

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本社の開発部門では、畳での走行試験や、さまざまな種類の厳しい耐久試験が、延々と行われていた。

そして開発の心臓部。「ドアの先には、370平方メートルの住宅が再現されていて、『ルンバ』がどのように動作するか、実際の環境でテストをしています」と言う。

広大なテストルームに作ったさまざまな環境の中で、AIが制御する「ルンバ」の動きの精度を日々高めているという。80を超える障害物を認識し、スムーズに走行する性能も、ここで作り込んだものだ。

「ルンバ」が得意とする部屋を自動的に把握するマッピング機能。高度な画像解析でどこがリビングでどこがキッチンなのかを自動的に判断することまでできてしまう。

「キッチンによくある特徴的なパターンをカメラで記憶し、次に同じパターンをとらえた時「私はキッチンにいる」と認識します。室内にあるさまざまな視覚的ランドマークを記憶して場所を判断するんです」(最高技術責任者のクリス・ジョーンズ)

今や「ルンバ」はAI技術の塊なのだ。

「『ルンバ』の性能はまだまだ不十分です。さらに賢く掃除するにはどうすればいいのか、これからも考え続けます」(コリン)

コリンは「ルンバ」だけではなく意外なロボット開発にも没頭していた。個人的に開発しているロボットは、ミノカサゴを捕まえるためのものだという。

「ロボットでミノカサゴを大量に捕獲することで全体の数を減らすことができるんです」(コリン)

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実はいま大西洋で、外来種のミノカサゴの増えすぎが問題となっている。生態系に害を及ぼすミノカサゴを、コリンはロボットを使って退治しようと考えているのだ。

「ロボットを作りながら同時に環境にも貢献できるのなら、そんなすばらしいことはありません」(コリン)

爆弾処理ロボットがルンバに?~「便利」に挑んだ家電革命児


コリンの机の周りにはいたるところにロボットのおもちゃがある。筋金入りのロボット好き。その歴史は子ども時代にさかのぼる。「ルンバ」のヒントになったのは、最初の『スター・ウォーズ』に出てきた目立たないロボット。「MSE-6」という道案内をするロボットがコリン少年に強い印象を残した。

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「私にインスピレーションを与えてくれました。もし私がリンゴを見つけたければ、リンゴのところに連れて行ってくれる、便利なものに思えたんです」(コリン)

その後、コリンは名門・マサチューセッツ工科大学(MIT)に入学。自立型人工知能ロボット研究所に入り、ロボット作りに明け暮れた。

「MIT時代に作った重要なロボットが『ジンギス』です。人工知能による歩行が可能であることを証明するために作りました。MITで最優秀学位論文賞をとりました」(コリン)

在学中の1990年に人工知能の研究者たちと共同で、アイロボットを創業。人の役に立つロボットを追求しヒット商品を生み出していく。

だが、最初に当てたロボットは全く意外なものだった。「何千台ものこのロボットがアフガニスタンに送られました」と言うのは「パックボット」という製品。中東で爆弾の処理を行ったほか、福島の原発事故でも活躍した。

「ひっくり返ったとしてもアームを使って立ち直ることができ非常に耐久性があるロボットです」(コリン)

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当時のロボットの用途は人命救助などがほとんど。そんな中で、大規模な施設で使う大型の自動清掃ロボットの依頼が舞い込んだ。

「『ジョンソン・ワックス』社から依頼を受け作ったもので、非常に広いエリアを掃除するロボットです。重要なことは、このロボットのおかげで清掃を学び、低コストのロボット作りやナビゲーションシステムに大きなノウハウができたことです。これらはルンバの開発に必要な技術でした」(コリン)

さまざまなロボットに挑戦する中、アイロボットの将来を決める出来事があった。エンジニアたちが社長室に詰めかけ、「もっと多くの人の役に立つロボットが作れる」「誰でも簡単に使える、掃除機のロボットを作らないか?」と訴えたのだ。コリンは「オーケー。僕もそう思うよ」と即答した。

「『ルンバ』は従業員が生み出したプロジェクト。それはすばらしいことです。私は掃除機をかけることは嫌いじゃありませんでしたが、全く新たな掃除機を生み出すことに興奮しました」(コリン)

人の役に立つロボットを作りたい。そんな挑戦が、世界で初めてのロボット掃除機を世に送り出した。

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ロボットが教育を変える?~家庭ロボ大躍進の時代へ


家電製品とは思えない愛され方をしている「ルンバ」は学校教育にも登場していた。

東京・世田谷区。昼下がりの下北沢小学校で変わった授業が開かれようとしていた。体育館に集まってきたのは、小学2年生の子どもたち。この日の先生は、アイロボットの社員だ。来日中のコリンもサプライズで登場した。

いくつものチームに分かれ、取り出したのはプログラミングロボットの「ルート」。アイロボットが作った教育用のマシンだ。これは子どもたちにプログラミングを学ばせる授業。前後左右の動きを順番に入力していけば思い通りに動かすことができる。小学2年生でも、プログラムの基礎とロボットを操る楽しさを体験できるのだ。

「私の子どもの頃にもこんなロボットがあったらと嫉妬しています。子どものエネルギーはすばらしい」(コリン)

自身も子どものころ夢中になったロボットで未来のロボット開発者を育てるべく情熱を注いでいる。

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2022年8月、アマゾンが17億ドルでアイロボットを傘下に収め、子会社化する方針を発表した。

すでにアマゾンのアレクサと連携しているルンバだが、もしアマゾン傘下となれば、大きな後ろ盾を得てさらに進化を遂げることは間違いない。

ロボットと格闘して30年、コリンが見据える未来とは?

「テクノロジーが社会をどう変えるか想像するのは楽しいことです。私たちはすでに家の掃除をしてくれるロボットを何百万台も持ち、自動運転の車も何百万台も走っています。今後も、町を清潔で安全に保つためにロボットがやれることは増え続けると思います」

~村上龍の編集後記~
『スター・ウォーズ』劇中に登場する移動式ロボット「MSE―6」がルンバ着想の原点になったのだそうだ。コリン・アングルは10歳だった。10歳が興味を持つロボットではない。あなたは幸福だと、わたしは言った。J・ベソスも、H・シュルツも、小さいときの夢を実現したわけではない。ロボットで何かが起こって欲しいと思い、ルンバを作った。あなたは幸福な表情になる。ロボットが本当に好きなのだ。

<出演者略歴>
コリン・アングル 1967年、アメリカ・ボストン生まれ。1990年、マサチューセッツ工科大学在学中にアイロボット設立。2002年、ルンバ発売。

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