鬼速!新世代ネットスーパー快進撃の舞台裏に迫る:読んで分かる「カンブリア宮殿」

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「鬼速」がウリ!品揃え豊富~急拡大中のネットスーパー

小さな子どもがいて買い物に行くのもままならない母親の強い味方がネットスーパーのオニゴー。入会金や会費は無料。サイトを開いて欲しい品物をクリックするだけでOK。配達料は300円だが、5000円以上頼むと無料になる(総額2000円以下では少額手数料450円が必要)。

オニゴーは「最短10分、鬼速で届く」と謳っており、実際に10分以内で届くこともある。ネットにも「本当に便利」などと絶賛する書き込みがあり、サービス開始から、わずか2年で会員数は13万人を越えた。

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〇「オニゴー」拡大の理由①「配達時間が“鬼速”」

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今や多くのスーパーでネットによる宅配をしているが、ネットスーパーの多くは配達する時間帯が決まっていて、時には翌日の配達になることも。オニゴーは最短10分、平均で約20分という速さが最大の魅力だ。

東京・目黒区にあるオニゴー鷹番店の中はまるで倉庫。ここは「ダークストア」と言って、客は入れない商品をストックする店だ。ここには10分で届けるためのさまざまな工夫がある。

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短時間で商品を集めることを可能にするのは自社開発のアプリ。棚には商品ごとに番号が振られていて、スタッフのスマホには商品がどの棚にあるか、番号が表示される。そしてアプリが一番早く商品をピックアップできるルートを教えてくれるのだ。だから新人でも素早く、もれがなくピックアップできる。

配達するのはライダーと呼ばれるスタッフだ。オニゴーでは配達エリアを店から半径約4キロ程度に設定。店の地図には道に関するさまざまな情報が書き込まれている。

登録ライダーは全員自社で採用し、担当する店を固定している。だから、自社開発した配達アプリに表示されるのは大通りを通るルートでも、エリア内の抜け道や近道もみんなで共有している。

〇「オニゴー」拡大の理由②「スーパーにない独自の品揃え」

オニゴーでは、会員にならないと買えないコストコで扱っている商品も買える。600グラムと大容量のスイスの「リンツ」のチョコレート「リンドールアソート」(2797円、取材時の価格)に、450グラム入りのハワイ土産の定番「ホノルルクッキー ダブルチョコレートマカデミア」(2581円、取材時の価格)など。

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「ゼンブヌードル」(パスタ麺982円、マカロニ972円)のようなレアな商品も。えんどう豆だけで作られ食物繊維とタンパク質が豊富で糖質が少ないから、ダイエット食としても人気の商品だ。こうした実店舗ではほぼ売っていない商品も買えるのがオニゴーの魅力だという。

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オニゴーの独自戦略~スーパーでヤドカリ作戦とは?


オニゴー創業者・梅下直也(46)は、実店舗を持たない「ダークストア」による即時配達を日本でいち早く立ち上げた。今年に入ってオニゴーの店舗は急増、今や70店舗にまで増えている。

「ネットスーパーは儲からないというのがこれまでの発想。全店舗が黒字になるようなオペレーションフォーマットを作っていって、それを当てはめていく」(梅下)

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梅下は今、ダークストア方式と別の方法で店舗数を増やしている。

〇「オニゴー」拡大の理由③「スーパーでヤドカリ作戦」

「ヨークフーズwithザ・ガーデン自由が丘」新宿富久店。オニゴーは既存のスーパーと提携してバックヤードに拠点を作り、店舗数を増やしている。いわばこのスーパーが丸ごとオニゴーのダークストア。スタッフは店内をまわって商品を集めていく。

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「生鮮食品などは特に状態とかよく見させて頂いて、問題がないかを確認して選ぶように意識はしています」(オニゴー新宿富久店・安達浩之)

ダークストアの場合、普通の小売店と同じように、仕入れ値に利益を乗せた価格で販売する。一方、スーパーとの提携の場合、オニゴーはスーパーと独自の取引価格を決めている。例えばスーパーが100円で販売している商品をオニゴーは80円で仕入れる。オニゴーはそれに30円の利益を乗せ、110円で販売するという具合だ。

値段は商品によって異なるが、スーパーの店頭価格より平均で1割ほど高くなっている。

オニゴーにとってスーパーとの提携は、場所や設備などの初期投資をせずに拠点数を増やせるメリットがある。一方、スーパーにとっては、実際の来客エリアよりオニゴーの配達エリアの方が広いため、多くの客に存在を知ってもらえるというメリットがある。

オニゴーと提携スーパーのウィンウィンな関係はそれだけではない。

「アコレ」西葛西店を注文が少ない時間帯に訪ねてみると、オニゴーのスタッフが商品の品出しをしていた。提携するスーパーからオニゴーが正式な業務として請け負っている。

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「人材不足もありまして、急なお休みとかもある。オニゴーとは企業間の取引だから、その時間を確実に埋められるというメリットがあります。おかげさまで当社としても助かっております」(「ビッグ・エー」エリアマネジャー・髙久剛さん)

スーパーは人手が助かり、オニゴーは対価を稼げる。ウィンウィンの関係で提携が成り立っているのだ。

いまオニゴーが取り組んでいるのは顧客満足度のアップ。そのために進めているのが、

オリジナル総菜の開発だ。すでに3つが完成して、一部の店舗で販売している。

クラフトビールのような高級感を目指した「クラフト鬼餃子」(6個入り896円)。ひと口サイズの「クラフト鬼丸ミニメンチ」(4個入り680円)は口の中に肉汁が広がる。ランチ需要を狙った「クラフト鬼丸カレー」(907円)まで作っている。

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全国展開に向けて準備中。愛知県に51店舗を構える「アオキスーパー」との提携も11月にスタート予定だ。

「買い物も行く時間も、なんだかんだ30分ぐらいはかかっちゃう。すぐ届けてくれれば、その時間が自由な時間になる。そういう価値が作れる」(梅下)

東大野球部&ロシア駐在~祖母の死が起業に影響を…


梅下は横浜出身、勉強も運動も得意だった。東大経済学部では野球部にも所属。憧れの神宮のマウンドにも立った。野球部を引退するとベンチャー企業でアルバイトを始めた。

「堀江貴文さんとかが活躍されている時代で、新しいビジネスを起こしていくことに対してすごく興味はありました」(梅下)

当時はITブームの真っ只中、億単位の資金がすぐに調達できるスケールに圧倒された。

自分もいつか、新しいビジネスを興したい。そこでビジネスのイロハを学ぼうと、三井住友銀行に入社する。4年後、ロシアの現地法人の立ち上げに一から携わり、1兆円規模の事業へと成長させた。

だが2014年、ロシアがウクライナのクリミアに侵攻。取引先のロシア企業のほとんどが制裁の対象になってしまう。梅下は当時、制裁の対象外だった国営の巨大企業「ガスプロム」への資金調達を上司に進言。このプロジェクトは大成功し、社内では「ロシアといえば梅下」とまで言われるようになったという。

ロシアでのビジネスに区切りをつけた梅下は、目標だった起業を目指し、銀行を退職する。2015年、ライブオークション形式の中古車販売会社「カープライス」を創業。自分の車がいくらで売れたのか、リアルタイムで確認できる、当時の日本では新しいビジネスモデルだった。

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事業を軌道に乗せた梅下は、また新たな挑戦を始める。それがアメリカで増えていたダークストアによる宅配ビジネスだった。

起業の準備を進めているさなか、祖母の照子さんが100歳で亡くなる。実はその葬儀が、ネットスーパーの価値に気づくきっかけとなった。

「特別なことでなくても、もう少し話したかったなと。意識的に10分とか話を聞くだけでも、すごく実は大事なことだったりすると思っているので、そういう時間を忙しい中でも生み出せるようなサービスにしたい」(梅下)

祖母との時間を作れなかったことを悔やんだ梅下は、日常のちょっとした時間の大切さを痛感。ネットスーパーが生み出す10分が、その人にとって大切な時間になるかもしれないと気づいたのだ。

ロシアのウクライナ侵攻で…~既存スーパーとの提携に注力


2021年8月、オニゴーの1号店をオープン。だが、できたばかりの企業だけになかなか商品を卸してもらえない。そこで自分たちの足で仕入れ先を開拓して回った。

東京・目黒区のオニゴーの店舗に近いコメの卸売業者「大沢商店」。梅下自ら飛び込み営業したうちのひとつだ。

「ある日突然、『ここでお米が買えますか』みたいな質問から始まりました。誠実な印象を受けましたし、企業間の取引というよりかは、梅下社長と取引させて頂くようなイメージでした」(「大沢商店」専務・大沢達弥さん)

他にもお酒や日用品、ペット用品などの仕入れ先を自分たちで開拓し、商品数を増やしていった。だが、軌道に乗りかけた矢先、大きな危機が訪れる。

それはロシアのウクライナ侵攻。世界的に株価が下がり、スタートアップ企業への投資が一気に冷え込んだのだ。

「すごく危機感を持った。もう少しライトなモデルにしないと、この事業は100%失敗すると思ったので、そこから事業転換をすることを決意したんです」(梅下)

客を入れないダークストアとはいえ、家賃や光熱費などそれなりにコストはかかる。そこで考えたのが既存のスーパーとの提携。これなら少ない投資で配達拠点を増やしていくことができる。

そのひとつが関東を中心に300店舗以上を展開するディスカウントスーパーの「ビッグ・エー」だ。「ビッグ・エー」は自前のネットスーパーを持っていなかった。オニゴーからの提携話は渡りに船だったという。

「どうしても我々のような小型のディスカウントとネットスーパーは経費的に合わない。一緒にやりたいと思いました」(「ビッグ・エー」社長・三浦弘さん)

オニゴーとの取引で販路拡大につながった小さな食品メーカーも出てきている。

東京・渋谷区の「グリーン・スプーン」は瞬間冷凍の技術を使った野菜スープなど、野菜本来の味を生かしたヘルシーな料理をネット販売している。しかし、企業としての知名度が低く、販路が広がっていかないことに悩んでいた。

「直接、(オニゴーに)持っていきました。こちらから営業をかけてアタックをさせていただきました」(営業企画・塩澤史也さん)

オニゴーと取引を始めてから売り上げは3倍以上にアップ。さらに、評判を聞いた都内のスーパーが取り扱ってくれることになったという。

新たな収益モデルを模索~企業向けマーケティングも


宅配以外で利益を出すため、オニゴーが新しい取り組みを始めている。

「どういう方が何人ぐらい見ているかという情報は常に取得している感じになります」

オニゴーのアプリ会員は今や13万人。その力を新たなビジネスにしようというのだ。

その相手が食品大手「味の素冷凍食品」のマーケティング担当者だ。

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今、オニゴーで「味の素」の新商品を販売している。おつまみ需要を狙った冷凍の中華シリーズ。味の素側は酒とセットでアピールしたいのだが、つまみとしてアピールしたくても、実店舗では酒売り場と離れていて、客に伝わらないというのだ。

そこでオニゴーでは、それぞれの商品と合う酒を組み合わせて客に提案した。例えば黒ビールや赤ワインにはチーズ焼売。白ワインには大エビの餃子、さらにロゼワインには黒豚餃子を提案した。

そしてここからが真骨頂。商品への賛否両論、遠慮のないナマの声が13万人の会員から届く。こうした声を集約して売り方を提案する、コンサル的な業務にも乗り出したのだ。

「購入していただいた方に紐づいたアンケートはなかなか実施するのが難しい。それがオニゴーでは実施可能というところは非常に魅力的です」(「味の素冷凍食品」製品戦略部・金澤治さん)

さらに提携するスーパーでも新たな取り組みを始めようとしている。

「(CMを)女性が見てるいのか男性が見ているのか、50代くらいの人が見ているのか若い人が見ているのか。視聴データを集めることができます」(商品企画本部・鈴木あかね)

モニターに流れる商品のCMにどんな人が目を向けたかが分るようになっている。性別から年齢、さらに表情から商品にどんな感情を持ったかを判断、商品に対する興味を数値化するという。

こうした売り場での顧客調査をメーカーやスーパーから請け負い、収益化を目指しているのだ。

「メーカー、小売りの販売のご支援という形に育てていきたいと思っています」(鈴木)

オニゴーは意外な所でも役立っている。埼玉・入間市の高齢者施設「イリーゼ武蔵藤沢」。オニゴーはこの施設専用の注文システムを開発。施設の入居者は食料品や日用品を注文できる。するとオニゴーはひとり分ずつ袋に分けて届けてくれるのだ。

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施設側は買い出しの負担が減って助かるし、利用者にも喜ばれている。

※価格は放送時の金額です。

~村上龍の編集後記~
オニゴーより前の体験。ロシアでの仕事、約10年間、楽しく過ごしていたが、ウクライナ危機が起こり、顧客のほとんどが制裁の対象に。ロシアといえば梅下という地位だったので会社から調べるように言われ、「ガスプロム」が制裁の対象外になっていることがわかり、ファイナンスできれば圧倒的な収益が。今の、オニゴーの仕事は、地味だ。だが、非常に細かいこと、配達エリアの確認など必要で、苦労と、その成果という点では同じだ。日本を起業家フレンドリーな国にしたいと考えている。梅下さんがやれば、そうなるだろう。

<出演者略歴>
梅下直也(うめした・なおや)1977年、神奈川県生まれ。2002年、東京大学経済学部経済学科卒業後、三井住友銀行入社。2013年、カープライスジャパン代表取締役に就任。2019年、キャピタルドライブ代表取締役就任。2021年、OniGO(オニゴー)創業、代表取締役に就任。

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