「バーミキュラ」「おもいのフライパン」を生み出した町工場 思わず欲しくなる“新製品”:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

10月27日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「食卓をもっとおいしく!~コスト高に立ち向かう町工場の闘い~」。
無水調理鍋「バーミキュラ」、肉が“世界一おいしく焼ける”と評判の「おもいのフライパン」。いずれも町工場が生み出したヒット商品だが、原材料費の高騰などのコスト高で、これまでにない逆風が…。そんな中、現場は“新たなものづくり”に挑もうと立ち上がっていた。
生き残りをかけた、町工場の人々の闘いを追う。

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あの大ヒット鍋「バーミキュラ」知られざる苦悩と新たな挑戦


愛知・名古屋市内にある鋳造メーカー「愛知ドビー」(昭和11年創業)は、かつては小さな下請け工場だったが、無水調理鍋「バーミキュラ」を生み出したことで一転。25人だった従業員は約250人に増え、売上高は35億8000万円。当時の約10倍に成長した。

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「バーミキュラ」誕生から13年。ここに来て、兄で代表取締役社長の土方邦裕さんと弟で副社長の土方智晴さんは、これまでにない挑戦に乗り出した。

5月には初めてのファンミーティングを開催。イベントには工場見学も含まれるが、真の狙いはファンの声に直接耳を傾けることだ。ファンからは、「取っ手の取り外しができないか」「シリコンのフタがほしい」など、具体的なリクエストも。

なぜ今、二人はユーザーの声に向き合うのか…。きっかけは1通のメールだった。
「経営者様。多少利益が落ちてもいい製品を安価に届けるのが正道であると考えます。正直がっかりしました」。
バーミキュラは、去年6月、コスト高で一律10%を値上げした。今年4月、企業努力で元の価格まで引き下げることができたものの、智晴さんは、あることに気付かされたという。
「価格の話も、しっかりお客さんに向いていなかった。常に目を向け続けてきたのかというと、そこにはすごく反省がある」。

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実際のお客さんはどう思っているのか。ファンミーティングに参加した女性は、「バーミキュラと出会ってお料理を作る楽しさを味わっている」と話す一方で、「調理時間が長い」「重い」との不満も。
鋳物製のバーミキュラは、中身が空でも4キロ以上あり、こうした声は以前から届いていた。智晴さんは、「僕たちは、『世界一おいしいものができる鍋を作る』という目的のもとに、重いのはしょうがない、『高い』『調理時間が長い』という意見に目を背けてきた。もう一度、バーミキュラを開発し直すぐらいの気持ち」と前を向く。

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5月、バーミキュラビレッジにある本社に、新しい鍋の試作品が届いた。手にしたスタッフは「めっちゃ軽い」と感動。鍋の厚さを3ミリから2ミリ前後に薄くしたことが軽さの秘密で、熱が伝わりやすくなり、調理時間も短くなるという。

6月、工場で量産化のテストが始まった。鋳造費を抑えるため、一度に二つ作れるようにした鍋の砂型に、1500度の溶けた鉄を流し込む。
しかし1時間後、鉄が冷えるのを待って取り出してみると、全てに大きな穴が。二つの鍋の砂型に鉄を同時に流し込むと、隅々まで行き渡るのに時間がかかり、途中で鉄が冷えて固まり、穴ができてしまうのだ。
素材の配合を変えたり、流し込む速度を変えたりと試行錯誤するものの、なかなかうまくいかない。客の声に向き合うものづくりは、予想外の苦戦が続いていた。

8月。毎日のように工場に通い続けた土方さん兄弟。この日できた鍋を確認すると、穴が開いていない。以前は鍋を二つ同時に作る砂型だったが、鍋とフタの組み合わせに変えたことで鉄が素早く行き渡り、クリアした。鍋とフタが一緒にできるので効率的だ。

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そして大切な工程、ホーロー加工。ガラス成分を吹き付けることで熱の伝導率と耐久性がアップするが、ここで新しいトライをすることに。内側のホーローを、別のものに変えたのだ。800度の高温で焼き付け、その出来を見た智晴さんは、「むちゃくちゃきれい!」と大満足。

9月。ついに、東京・代官山にあるバーミキュラの旗艦店でお披露目する日がやってきた。人気の鍋の新作とあり、大勢の人が詰めかける。

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誰もが驚いたのは、格段に軽くなったこと。薄くしたことで3割の軽量化に成功し、料理時間も短縮。フタの取っ手も立てて置けるようになった。
22センチサイズで2万7500円からと、コスト高の中、以前とほぼ同じ価格で販売。今後はこの鍋で勝負する。

そして、工場に再び、土方さん兄弟の姿が…。また新たなものづくりに挑戦するというが、一体何を作るのか――。

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町工場のフライパン×メーカーで、これまでにない調理家電をつくれ!


愛知・碧南市にある「石川鋳造」(従業員約30人、売上高10億円)。
水道管や工作機械の部品などを下請けで作る町工場だが、自社製品として“世界で一番お肉がおいしく焼けるフライパン”がキャッチフレーズの「おもいのフライパン」も作っている。

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4代目社長の石川鋼逸さんは高校教師だったが、父との約束を守り、30歳で家業を継いだ。鋳物で作るフライパンで肉がおいしく焼ける秘密は、約4ミリと普通のフライパンの2倍ほどもある厚さ。石川さんは、「鋳物は熱伝導が非常に良く、蓄熱温度が高いことで熱が伝わりやすい。これで焼くと、お肉がおいしく焼ける」と話す。

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「おもいのフライパン」シリーズは、発売して6年で累計7万枚が売れ、売り上げ全体の約3割を占めるまでに成長したが、ここにきて逆風が…。
「電気代が高く、これが経営を圧迫している。笑っている場合じゃない」。
鋳物工場は金属を溶かす炉を始め、電気を大量に使う機械ばかり。2年前、月400万円だった電気代は、電力を抑えても879万円に膨れ上がっていた。
さらに、鉄をはじめ原材料費も高騰。コスト高の今、利益が見込めるフライパンに期待をかけるしかない。

石川さんの次の一手は、電化製品を作ること。生き残りをかけてコラボした相手が、アパレルから食品まで幅広く生活用品を扱う「ドウシシャ」(売上高1057億円、東証プライム上場)だ。

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主力はユニークなオリジナル家電で、ファンと照明が合体したサーキュライトや折りたたみ洗濯機、焼き芋専用機など、アイデアにあふれたものばかり。石川さんは「ドウシシャ」と組み、フライパンを生かした家電づくりに乗り出していた。

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コラボ製品の候補が、去年リニューアルしたホットプレート。アルミのプレートを鋳物のフライパンにできないかというのだ。

2月、「ドウシシャ」の東京本社を訪れた石川さんは、すでにホットプレートの寸法に合わせて、四角いフライパンを作っていた。実際に肉を焼いて食べ比べてもらうと、「ドウシシャ」の社員らは、「全然違う」と驚く。

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石川さんは笑顔を見せるが、「ドウシシャ」側から、取っ手の温度について思わぬ指摘が入った。家電には、安全基準を定めた法律があり、ホットプレートの場合、取っ手の温度は55度以下が決まりだが、試作品の温度を測ると、センサーの表示は77.5度。やけどをする熱さだ。

5月。石川さんは、取っ手の改良に取り掛かっていた。託したのは、「おもいのフライパン」を開発したエース、製造部課長の横山博さん。2人でいろいろ案を出すが、「結構ハードルが高い」と横山さん。

その頃「ドウシシャ」では、一緒に開発を担当するライフスタイル事業部の本藤昭次さんが、ヒーター部分の改良に取り組んでいた。重い鋳物のフライパンを乗せても壊れない工夫が必要で、連日のように中国の工場とリモートで結び、解決策を練る。話し合いの末、ヒーターの間にクッションになるバネをつけ、衝撃を吸収することに。
「ドウシシャ」にとってもヒット商品を生み出すチャンス。一切妥協はしない。

一方、「石川鋳造」の横山さんは、工場で使うほとんどの鋳型を作ってもらっている「小笠原木型」へ。熱が伝わりにくい取っ手の形を考えてほしいと、工場長に頼みにきたのだ。
仲間の町工場の力も借りて取っ手の改良に取り組んで4カ月、どんな製品が生まれたのか――。

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