10月20日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「秋の味覚に異変!~温暖化に立ち向かう~」。
地球温暖化による気温の上昇で、国内で生産する農水産物の収穫量や品質に影響が出始めている。気候変動にどう適応していくのか…。魚種変化に対応しようと動き出したのが、人気鮮魚チェーン「角上魚類」だ。安くて新鮮、うまい魚を求め、腕利きバイヤーたちが、東北、北海道へ向かう。
一方、温暖化を逆手に、日本では珍しい南国フルーツに挑戦する生産者も。和歌山県で新たに手掛けるのが、「世界三大美果」といわれる「アテモヤ」。地域を救う救世主になるのか。
【動画】新鮮で安い!大人気鮮魚チェーン「角上魚類」の舞台裏
北上する魚を追え!「角上魚類」腕利きバイヤーたちの挑戦
東京・東久留米市。「角上魚類 小平店」の店内は活気にあふれ、抜群の鮮度と豊富な魚の種類、驚きの安さでお客を惹きつけている。
1974年に創業した「角上魚類」は、従業員1125人、売上高は400億円を超える。
7月には、群馬・前橋店がリニューアルオープンし、関東を中心に22店舗を展開。さらなる新規出店も計画され、売り上げ好調の一方で、栁下浩伸社長は、「獲れる魚が変わってきている。漁獲量もどんどん減ってきているのが実情。魚を確保していくには、産地へ行って良いものを見つけ、自分たちで売り込んでいくことが大切になってくる」と話し、強い危機感を抱いていた。
日本海に面した港町、新潟・寺泊にある「角上魚類」本店。
朝6時には、魚を満載したトラックが次々と出発し、東京方面へ。午前中には各店舗に届けられる。
この日の目玉は、「新潟・佐渡の甘エビ」。今朝水揚げされたものが店頭へ…これが鮮度抜群の理由だ。
12人のバイヤーは、新潟と豊洲市場に分かれて買い付けをするが、秋商戦に向けて戦略会議が開かれていた。
新潟のバイヤーは、「ハタハタ、ギス、タラが全く揚がっていない」、豊洲のバイヤーは、「戻りガツオは宮城・気仙沼がメジャー。最近だと長崎でも獲れている」と報告。魚の旬や産地が大きく変わっており、仕入れの対応を迫られていた。
商品統括本部の栁下元昌さんは、「うちのウリである魚種の豊富さが段々なくなってきている。自分たちで浜に足を運び、地方の市場を開拓していく」と前を向く。
「角上魚類」は、近年の海の異変にいち早く対応し、新潟や豊洲での仕入れだけに頼るのではなく、独自で産地の開拓を行っていた。
例えば、京都・伊根の本マグロ。質の良いものを安定的に買い付けるために、独自の契約を結んでいる。兵庫・淡路島では、太刀魚に目を付けた。網ではなく一本釣りなので、魚体が傷つかずキレイだ。
バイヤーの有馬徹さんが開拓した産地は、京都、兵庫、静岡、神奈川と、全て東京より西だったが、海水温の上昇で魚が北上しているという。9月20日の海面水温は、27度以上を示す赤いエリアが、東北にまで広がっていた。2年前の同じ日と比べると、その範囲が大きく北上しているのが分かる。
6月下旬。有馬さんは、九州や瀬戸内海でよく獲れる真鯛が石巻港で豊漁だと知り、現地を訪れた。しかし、水揚げされた魚はイワシばかりで、鯛の姿がない。1週間前の石巻港では、サバなどと共に真鯛が大量に水揚げされていたが、この日、獲れた真鯛は1匹だけ。
有馬さんは、「魚が北上しているが、それに合わせて行ったところで、そこで揚がらなかったり、元の所で揚がったりする。魚の動きがなかなか読めない。難しい」と話す。
9月中旬。「角上魚類」のバイヤーはさらに北上し、秋の味覚・鮭を確保するため、北海道・紋別市へ。バイヤー歴30年、大ベテランの中越敏光さんは、オホーツク海に面した紋別港を訪れるが、鮭の水揚げは去年から3割以上も減っていた。
鮭は海水温が20度以下にならないと北海道沿岸に近づいてこないため、原因は海水温の上昇だと考えられる。今年は9月になっても20度を超えており、例年より4度近く海水温が高いのだ。中越さんは「今の段階だと(鮭は)少ないし、魚体も小さい。(価格が)ちょっと高い」と話す。
この日は、鮭に混じって、温かい海域を好む魚が揚がっていた。その中で、中越さんが興味を示したのは、丸くてふっくらとしたブリ。近年、北海道でもブリが数多く水揚げされるようになっていたが、元々ブリを食べる習慣がないため、紋別港では、比較的安値で取引されていた。
予定を変えてブリを買い付けようとするが、仕入れるには少なすぎる量。ブリに狙いを定めた中越さんは、紋別から南へ300キロ行った、えりも町まで車を走らせる。
こうしてバイヤーたちは、臨機応援に仕入れようと努力するが、鮮度が良くうまいブリを、お客さんに届けることができるのか。
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9月下旬。有馬さんは、岩手・大船渡港に向かった。三陸沖の海水温が下がり、質の良いサンマが揚がり始めたという情報をキャッチしたのだ。肝心なのは身の質と脂の乗りだが、
「頭がふっくらしているので、脂が乗っている。水温が下がってきたので」と有馬さん。
この日までは、北海道・根室からサンマを仕入れていたが、大船渡に切り替える決断を下した。
10月の3連休初日、東京・小平店。大船渡港で水揚げされたサンマが届いた。値段は1尾180円とかなりお値打ちで、飛ぶように売れていく。
と、そこに、木箱に入った巨大な魚が運ばれてきた。宮城の塩釜港で買い付けた、体長90センチ、重さ47キロの赤マンボウだ。
「角上魚類」で赤マンボウを扱うのは初めて。川﨑真論店長による「解体ショー」が始まるが、味はどうなのか。気になるお客の反応は?
温暖化逆手に! 南国フルーツ生産者の挑戦
和歌山・御坊市に、この温暖化を商機と捉えた人がいる。
井ノ上和彦さんは、熱帯の植物がぎっしり植えられた自慢のハウスを案内してくれた。
沖縄や宮崎産がブランドのマンゴー、ライチ、切ると星の形になるスターフルーツ…。
中でも井ノ上さんの一押しが、「アテモヤ」だ。
世界三大美果のマンゴー、マンゴスチン、アテモヤ。森のアイスクリームと例えられるアテモヤは、熟すと柔らかい果肉が、ミルキーな強い甘さになる。国内では沖縄産がほとんどで、果物の専門店などで一個1000円もする高級品だ。
井ノ上さんは花の栽培をしていたが、9年前からアテモヤを作り始めた。温暖化が進み、ほとんど暖房なしで南国フルーツが冬を越せるようになったという。
安定して収穫できるようになり、御坊市のふるさと納税の返礼品にも採用されたが、井ノ上さんは、「去年ふるさと納税で選んでくれたのは2件。アテモヤは、まだそんなに認識されていない」と話す。
「この状況を何とかしたい」と考えた井ノ上さんが、アテモヤの実を持って向かったのは、国立・和歌山高専。生物応用化学科・奥野祥治教授に、アテモヤの成分を分析してもらおうというのだ。アテモヤの良さをアピールできるポイントはないのか…。すると、体に良い“ある成分”が豊富に含まれていることが分かった――。
番組ではこの他、暑さに強いミカンの新品種「あおさん」の生産者にスポットを当てる。
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