世界で急増!命を奪う感染症…快適な機能素材で<命を守る服>を作る:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

9月22日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「命を守る!ニッポンの技術~世界に迫るリスクとの闘い~」。
機能素材を駆使し、バングラデシュの感染病と闘う企業、深刻な医師不足に悩まされるブータンで、“新しい命”を守るために奮闘する企業にカメラが密着。“ニッポンの技術”で世界の人命を守ろうと奮闘する人々の姿をカメラが追った。

【動画】新たな命を守る!世界中のお母さんと赤ちゃんに安心安全を

アジアの途上国で ‟デング熱の脅威”から命を守る!


記録的な猛暑だった今年の夏。8月だけで、3万3000人以上もの人が熱中症で救急搬送され、夜も暑さで体調を崩す人が多かった。

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そんな中、神奈川・川崎市に住む上田彩花さんは、寝苦しい夜を快適に過ごしている。昼間の熱が部屋にこもり、夜になっても30度を超えている室内で使っているのが、2万2000円で買った寝具のブランケット。
「(生地が)薄手でひんやり。すごく気持ちいい。今年はエアコンつけずに扇風機とこれだけで過ごしている」と上田さん。サーモグラフィーで見てみると、青色で25度前後を示していた。

魔法のようなブランケットのタグを見てみると、「COVEROSS(カバロス)」という文字が。
「カバロス」とは、衣類に様々な機能を持たせる加工技術のことで、数百種類ある薬品の中から付けたい機能を調合。特殊なランドリーを使い、服に薬剤を定着させる。

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例えば、嫌な臭いを98%カットする消臭機能や、水につけるだけでシミが落ちるセルフクリーニングなど。こうした機能を複数組み合わせることも可能。既製品に後から加工できるのも、カバロスの大きな特徴だ。

この機能性に、大手衣料品チェーン「しまむら」も注目。下着が透けやすい白いズボンを見えにくくするのもカバロスの機能で、「しまむら」は、消臭やセルフクリーニングなど、6つの機能が付いたシャツやズボンを先月から販売し始めた。
カバロスを開発したのは、社員25人のアパレル・ベンチャー「hap(ハップ)」(2006年設立 東京・中央区)。 社長の鈴木素さん(46)は、「10年前はスポーツ衣料ぐらいしか機能性は使われていなかったが、コロナになって、抗菌・抗ウイルス・消臭など、一気に時代が変わった」と話す。

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鈴木さんの次なる舞台はバングラデシュ。首都・ダッカには、日本の4割ほどの国土に約1億7000万もの人が暮らしている。
今や世界の縫製工場とも呼ばれ、「ユニクロ」をはじめ、数多のアパレルメーカーが生産拠点に。6年前からバングラデシュで製造を開始している「hap」の鈴木さんは、この国の人々が日々脅える疫病があることを知る。

世界で急増!命を奪う感染症…快適な機能素材で<命を守る服>を作る:ガイアの夜明け
デング熱は、アジアや南米などで深刻さを増しているウイルス性の感染症で、発症すると高熱や激しい頭痛に襲われ、死に至ることも。感染源はウイルスを持つ蚊で、日本でも2014年に東京の代々木公園からデング熱が広がり、160人が感染。一時はパニックに陥った。
デング熱に有効なワクチンは未だ普及していないため、鈴木さんは、カバロスの技術を使い「蚊に刺されない服」が作れないかと考えた。

7月。鈴木さんが向かったダッカ市内の病院は、デング熱の患者であふれかえっていた。
7月だけで、デング熱の患者は4万3000人、死者は204人と、去年の同時期に比べ、共に20倍以上という深刻な状況。
鈴木さんが次に向かったダッカ大学 生物学部には、蚊の生態に詳しい信州大学の平林公男教授も日本から駆けつけていた。デング熱の研究者・タンジン教授によると、例年は6~9月にデング熱患者が多いが、気候変動による気温上昇が蚊の成長に影響を及ぼしているという。

雨の多いバングラデシュは短時間に激しく降り、雨が上がると、いたるところに水たまりが。これが蚊が卵を産みつける格好の場所になる。蚊はわずかな水さえあれば発生し、水たまりをのぞくと、すでに蚊の幼虫・ボウフラになっていた。

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経済が急激に発展する一方で、貧しい地域が多く残るバングラデシュ。危険に晒されているのは、こうした場所に住む人たちだ。暑さから服を脱いでしまう生活習慣も、蚊に刺されやすい要因になっていた。

翌日。鈴木さんが、タンジン教授の実験室で見せたのは、防虫加工したカバロスの生地。バングラデシュの蚊にどの薬剤が効くのか検証するため、異なる薬剤を使った6種類を持参した。実験に使うのは、デング熱を媒介する「ヒトスジシマカ」で、日本にも広く生息する。
平林教授は、「ウイルスを持ったヒトスジシマカが日本に入ってくれば、デング熱は日本国内でも広がる。いつ入ってもおかしくない」と話す。

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蚊は、どんな反応を示すのか。1つ目の生地は、人体に影響のない範囲内で殺虫効果の高い薬剤を使用。鈴木さんの想定では、蚊が生地に触れると次第に弱って死ぬはずだったが、実験では生地の上を歩き、元気に動き回っている。蚊の強さは予想以上だ。
そこで、最も殺虫成分が強い生地を試すと、生地から離れて逃げる蚊もいるが、別の蚊は、生地から逃げようとせず、あまり嫌がらないという想定外の事態に。

近年バングラデシュでは、デング熱の感染を食い止めるため、殺虫剤の散布が頻繁に行われてきた。その結果、特定の殺虫剤に耐性を持つ蚊が増えてきたというのだ。
東京に戻った鈴木さんは、改めてどの薬剤に効き目があるのか、戦略の練り直しを迫られるが…果たして、壁を越えることができるのか。

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新たな命を守る!世界中のお母さんと赤ちゃんに安心安全を


瀬戸内海の島々を望む、香川・高松市。社員22人のベンチャー企業「メロディ・インターナショナル」(2015年創業)の尾形優子さんが開発したのは、離れた場所を結ぶ遠隔医療。その医療機器は、分娩監視装置「iCTG」といい、尾形さんは「お腹の赤ちゃんの状態などを遠隔でリアルタイムで見ることができる」と話す。

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現在、妊娠7カ月の吉田香織さん(仮名)は、切迫早産気味で、母子の安全のために主治医から勧められたのが、iCTGを使っての診察だった。ピンクの機械をお腹に当てると赤ちゃんの心音、ブルーの機械は、陣痛などでお腹が張るとボタンが押されるという仕組み。この状態で約1時間、胎児の心拍数とお腹の張りを計測する。

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そのデータは、リアルタイムで病院にいる主治医のもとへ。今回のデータを見ると、胎児の心拍数は110~160の正常値に入っているが、胎児に十分な酸素が届いていない場合は心拍数が160を超え、グラフの上下もほとんど見られなくなる。お腹の張りを示すグラフは、陣痛が起きると一目で分かる大きな山ができる。通院や入院をしなくても、朝晩2回、こうして診察を受けられるのだ。
この医療機器はすでに国内135の病院に設置されており、1セット165万円。医師にとっても大きなメリットがある。

「亀田総合病院」(千葉・鴨川市)の末光徳匡医師は、「分娩を取り扱える施設が少しずつ減っていて、医療過疎みたいな状況になっている。(iCTGを使い)在宅で患者さんの状態を確認するとか、救急車やドクターヘリの中でつけられると、搬送中の情報を先生に伝えることができる。医療者がアプローチしづらい状況を打破してくれる」と話す。

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iCTGを開発した尾形さんは、京都大学大学院で原子核工学を専攻。病院間でデータ共有ができる電子カルテを開発し、起業当初から遠隔医療に携わってきた。
尾形さんの会社には、海外からのお客さんも少なくなく、この日はタイから来た医師や看護師たちの姿が。尾形さんは、早速iCTGの使い方を見てもらうことに。

アフリカ・タンザニアからの留学生は、「安全な妊娠や出産には まだまだたくさん障壁がある。タンザニアは妊婦の死亡率も世界と比べて高い」と話す。医療が行き届かない途上国では、妊娠中や出産直後の死亡率が日本の90倍以上という深刻な状況に陥っているのだ。

現在iCTGは、日本を含む16カ国で採用されている。尾形さんは「世界中の妊婦さんに安心安全を届けたいと思っている。一人でも多くの命を救いたい」と前を向く。

8月。尾形さんは、3年ぶりにブータン王国へやって来た。九州ほどの広さの国土に、人口は約80万人。国内に信号機が1つもなく、今も警察官が交通整理をしている国だ。
経済的な繁栄ではなく、精神的な豊かさを重んじるブータン。 “幸せの国”と呼ばれるゆえんだ。

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しかし、医療では大きな問題を抱えていた。朝7時、首都・ティンプーの病院には、診察の順番を待つ行列ができている。ブータンの医師はわずか279人で、深刻な医師不足。産婦人科医は15人で、そのうち8人が首都の国立病院にいる。
こうした事情を知った尾形さんは、2020年にiCTGを2台寄付。それは危険な出産から、新たな命を救う挑戦だった。当時第2子を妊娠していたペマ王女の安全のためにと医療チームが採用し、その後は国王の指示のもと、55台が導入された。

今後の海外展開のために、実際の使われ方を視察に来た尾形さんだが、iCTGは、すでに数々の奇跡を起こしていた――。

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