7月21日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「島国ニッポン 令和の開国へ」。
四海に囲まれ、独自の文化を育んできた日本は、外国からの労働者受け入れにおいて、諸外国に比べて閉鎖的と言われてきた。しかし、人手不足が叫ばれ、すでに外国人労働者なしでは、日本経済を維持できないのが現実。こうした中、外国人労働者の争奪戦が起きていた。
老舗ホテルから伝統文化まで、支える外国人労働者と日本企業の新たな取り組みを追った。
外国人労働者争奪戦! 狙うは“大草原の国”モンゴル!?

外国人が日本で暮らしていくのには、さまざまな課題がある。例えば家を借りるとき、保証人がいないため借りられなかったり、スマートフォンやクレジットカードが作りづらいなどの不便が起きている。
2006年創業の「GTN(グローバルトラストネットワークス)」(東京・池袋)は、こうした課題を解決するため、在日外国人の生活全般をサポートする会社。不動産からスマホの契約、クレジットカードも外国人専用のものを提供している。
現在24の言語に対応し、これまでに180の国と地域、累計70万人以上をサポートしてきた。外国人の増加と共に、売り上げを伸ばしている。
GTNの社長・後藤裕幸さんが外国人サポートビジネスを始めたきっかけは、大学時代。共にITベンチャーを立ち上げた仲間が、中国や韓国からの留学生だった。優秀な外国人に長く日本にいてほしいと思い、「GTN」を起業したのだ。
そんな後藤さんが今、力を入れているのが、外国人と日本企業との人材マッチングサービス。すでに日本にいる外国人の採用だけでなく、企業が海外にいる人材を直接採用できるようサポートするサービスも始めた。
5月下旬、後藤さんはモンゴルの首都・ウランバートル(人口約160万人)へ。
若者たちでにぎわう広場を見た後藤さんは、「この中にも、日本に来たいという人がいると思う。一人でも多く来てもらって、日本とモンゴルの架け橋になってくれたら」と意気込む。
日本の高専をモデルに作られたモンゴルの高専では、技術だけでなく日本語も教えている。ロボットを組み立てるだけでなく、パーツも手作りするなど、5年間みっちり実践的な技術を身につける。
日本語が堪能な学生も少なくない。「必ず日本の会社や工場で働きたい」と意気込む学生も。
そんなモンゴルは車社会。悪路を走るため故障が多く、修理のための技術はニーズが高い。
日本で不足している機械工学などの技術者が多いのだ。
一方で、平均月収は約5万円。そのため若者は高収入を得ようとこぞって海外を目指す。
こうした中、後藤さんは外国に人材を送り出す政府機関へ向かった。
若者たちの日本行きへの後押しをお願いするも、政府側は厳しい表情…。「モンゴル国民の中では、韓国に行く人が一般的。韓国の方が、日本より給与が高い」と話す。韓国には、既に日本の約3倍のモンゴル人が暮らしているという。
厳しい現実を突きつけられた後藤さんは、「変えられることはどんどん変えていかないと取り残されてしまう。日本に行きたい人がたくさんいるのも事実なので、その人たちの期待に応えられるようにやっていきたい」と前を向く。
お互いに「歩み寄る」 中小企業の共生策
神奈川・横浜市にある「金子機械」は、ショベルカーなどの重機をレンタルする会社。
重機は高価なため、建設会社が自社で持たず、レンタルするケースが増えている。需要は右肩上がりだが、一般に知られていない業界のため、人材獲得に苦戦。そこで、外国人社員を採用し、現在7人が働いている。
社長の金子直樹さんは、「雇ってよかった。非常に勉強熱心で、誠意を持って教えると応えてくれる。それが自分たちもうれしくて、日本人社員との相乗効果がある」と話す。
モンゴルから5年前に来日し、金子機械で働くガラムさん。初めは日本語に苦労したが、努力の甲斐あって、今では漢字が多い注文書も読みこなせるように。国立大学で学んだ機械工学のエキスパートでもあり、時には仕事をリードすることも。
「日本人のように働きたい」その思いが、ガラムさんの原動力になっている。
金子機械で外国人採用を進めているのが、人事担当の市村明奈さんだ。どうしたら外国人をスムーズに受け入れられるのか…市村さんは独学でノウハウを学び、試行錯誤を重ねてきた。外国人材の受け入れには、「お互い歩み寄ることが大切」と考えている。
歩み寄りのために大切にしているのが、外国人社員とのこまめな面談。
さらに、受け入れる日本人管理職にも定期的に講習会を行っている。指示の出し方でも誤解を生まないよう、伝え方などを具体的に指導する。
週末の夜には、コロナ禍でなかなかできなかった、モンゴル人社員との交流会が実現した。
金子機械は今後も外国人採用を進める方針で、早ければ今年の秋にも、モンゴルから新たに3人を迎えるという。
日本の“伝統工芸”を守れ! 多国籍人材で挑む、ある地方企業の挑戦
大分・豊後高田市に、外国人を積極的に採用する会社がある。その名も「ワンチャー」。
社員の約8割が外国人で、出身国はまさにグローバル。扱っているのは日本の伝統工芸を取り入れた万年筆で、伝統の技を受け継ぐ全国の職人と組み、唯一無二の高級万年筆を作っている。
「螺鈿(らでん)」という装飾が施されたこちらの万年筆は、約15万円。美術品のような美しさを誇る「ワンチャー」の万年筆は世界中で高く評価され、売り上げの約8割を海外が占めている。
「ワンチャー」の社長、岡垣太造さんによると、そもそも万年筆の価値を見出したのは外国人だそう。「新たな視点、興味を見つけ出すことができる。できるだけいろんな方が一緒に働き、融合することで“新しいもの”が生み出されることを目指す」と話す。
岡垣さんがリーダーに抜てきしたのが、インド人のラムシャルマ・カルパナさんで、この日、「ワンチャー」に木工職人の酒井康司さんと「田谷漆器店」10代目の田谷昴大さんがやって来た。
「田谷漆器店」は、石川県輪島市で200年続く、伝統工芸・輪島塗の専門店。その田谷さんたちにカルパナさんが持ち掛けたのは、酒井さんの木工と輪島の職人の技を掛け合わせ、新作を作りたいという話だった。
「ワンチャー」の万年筆を手に取った酒井さんは、「いいですね。すごいなあ」と感動。
田谷さんも「僕らにはない新しいマーケットで、デザインも今までと違うところなので。もしかするとヒット商品になって、職人の育成にもつながっていく」と乗り気だ。
商品の魅力を世界に発信するのも、カルパナさんの大事な仕事。万年筆の紹介は、海外の人に価値を伝えるため、英語の解説をつける。「漆のことをあまり知らない海外のお客様にもそれを読んでもらって、もっと職人さんのことを知ってもらえれば、信用できる」とカルパナさん。
5月、カルパナさんがやって来たのは、九州を代表する漆塗り作家・廣田洋子さんのアトリエ。1年近く、通い続けた場所で、半年前、カルパナさんが製作を依頼した万年筆が完成に近づいていた。
「ワンチャー」との作品作りについて、廣田さんは「自分からはほとんど発信しないのに、こうやって訪れてくれる。今まで身につけた技術を生かしてくれているし、私そのものも生かしてくれるので、ありがたい存在」と感謝する。
しかし別れ際、カルパナさんは廣田さんに「もうすぐインドに帰る…」と告げた。一体なぜ――?
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