ドラマ24「初恋、ざらり」(毎週金曜深夜24時12分)の原作は、SNSで話題となり、「このマンガがすごい!2023」にもランクインした同名漫画。軽度知的障害と自閉症がある主人公・有紗の恋愛を描く「初恋、ざらり」をはじめ、多くの共感を集める作品を生み出してきた漫画家・ざくざくろさんにインタビュー。
「初恋、ざらり」で描きたかったもの

――「初恋、ざらり」のドラマ化にあたり、この部分はブレないようにしてほしいなど制作陣へのご要望はありましたか?
「『見た目で有紗に障害があるとはわからないようにしてほしい』と頼みました。それ故の苦しさや感情を描いているので、そこが一番大事かなと思いました。
――ドラマはご覧になりましたか?
「ドラマの第1話を見て『テレ東さんにやっていただいて本当によかった!!』と思いました。主演のお二人はもちろん、脇役の方たちも『漫画から飛び出てきたみたい!』と。また「ざらり」の世界観を大事にしつつ、より伝わるように演出などを加えてくださり、漫画家としても勉強になることが多かったです」
――漫画「初恋、ざらり」を描こうと思ったきっかけは? また、この作品を通じて描きたかったこと、伝えたかったことは?
「最初のきっかけは、自分と近い子のほうが描きやすいなと思ったからです。私自身も発達障害(ADHDと軽度の自閉スペクトラム症)があるので。『見た目で障害とわからない故の苦しさや感情』を描こうと思っていました。でも正直言うと、社会に何か訴えかけたいとかは全くなく、“有紗を可愛く描きたいなぁ”と思ってたのがほとんどです」
――まさに、ドラマで主人公・有紗を演じる小野花梨さんも「原作を読んで“かわいい”と思った」とおっしゃっていました。“有紗”というキャラクターは、どのように作られましたか? また、有紗を取り巻く周りの人々はどのように?
「有紗は、髪型や性格など私の好みを詰め込みました。不器用だけど頑張っている子が好きなのです。周りのキャラは、私が今まで人生で出会ってきた人達のエッセンスを入れています」
――有紗は軽度知的障害と自閉症がある女性ですが、障害について描く上で留意されたことは?
「よりリアリティをだすために、有紗の障害の特性(身体がちゃんと洗えない、体温調節が下手、空間把握能力の低さ等)を自分ももっているものにしたところです」
漫画を描き始めたきっかけ
――ざくざくろ先生が漫画を描き始めたきっかけは? 影響を受けた人や作品などはありますか?
「漫画を描き始めたきっかけは、漫画好きだった4 歳上の姉です。彼女の真似をして描いていました。大きくなってから影響を受けたのは、夫です。彼も元クリエイターなので、創作に対するマインドを色々教えてもらいました」
――「ざくざくろ」というペンネームの由来は?
「とあるゲームで主人公の名前をつけるときにパッと思いついたものをそのままペンネームにしています」
――「初恋、ざらり」について“自分と近い子の方が描きやすい”とおっしゃっていました。コミックエッセイ「痩せてる女以外生きてる価値ないと思ってた。」には、「自分は価値がない」と思っていた子供時代、母への思い、結婚生活での衝突、発達障害の診断などについて描かれていますが、こうした経験も物語やキャラクター作りに投影されているのでしょうか? また、苦しみや葛藤を漫画で表現することで、気持ちの変化はありましたか?
「投影されている部分はあると思います。エッセイは、ずっと覚えていたことでも、描いたら記憶が薄れていくので(楽しいことも辛いこともです)、そういった意味では色々な呪縛から逃れられていったのかなと思います」
――創作活動の原動力となっているものは?
「小さい頃から漫画が好きで、姉や妹が私の漫画を読んで反応してくれた快感が今も残っています。“漫画で読者さんの心を動かしたい!”という想いがあります。現在の私にとっては、漫画を描くのは楽しいばかりではないですが、読者の皆さんからの応援の言葉は本当に描く力になっています」
――創作される上で心がけていることはありますか?
「創作の上で心がけていることは、キャラの感情を丁寧に描くことなのですが、大雑把にしか捉えられてないなぁと思い、反省することも沢山あります」
――ざくざくろ先生は、ご夫婦で滋賀県にお住まいですが、普段はどんな毎日を送っていらっしゃるのですか?
「だいたい昼頃起きてすぐ漫画を描き始めます。2~4 時間で薬が切れてぐったりするので漫画を描けるのはそれくらいの時間です。趣味は『どうぶつの森 ポケットキャンプ』で、ポケ森にでてくる家具を模写したりして遊んでいます。
週に一回、漫画家友達4 人と定例会をしていたのですが、前よりメンタル調節がうまくいかなかったり、体力が落ちたこともあって、今はお休みしています。できるだけ同じ毎日を過ごたいので(新しいことをやると異常に疲れるから)かなり狭い世界に生きていると思います」
――Twitter(@timtimtooo)で連載中の新作「クリオネの初恋」では、幼少期に性的虐待を受けた主人公を描かれています。どんな作品になりそうですか?
「その家庭環境のせいで、性欲に嫌悪感をもった女の子が好きな子(同性)に性欲を向けてしまったとき、どんな感情になるのか、ということを描こうと思っています。私自身、好きになるのは男性なのですが、女性に性的興奮を覚えることが多々あり そのときに罪悪感を抱いた経験が、この物語のきっかけだったように思います。しかし、あくまで恋愛漫画なので、ドキドキしたりきゅんとしたりということを描きたいです」
――これから描いてみたい題材、興味のあるジャンルなどはありますか?
「中学生のときに、祖父の戦争時代の体験談をもとにして読み切り漫画を描いたのですがそれをいつか連載にしたいです」
【プロフィール】
ざくざくろ
漫画家。Twitterで連載した漫画「初恋、ざらり」が話題となり、単行本(KADOKAWA刊)も発売。著書に、コミックエッセイ「ウチにはクズがちょうどいい ADHD女子の恋愛変歴」「痩せてる女以外生きてる価値ないと思ってた。」「夫はわたしじゃいけないの?」ほか。現在、Twitterなどで新作「クリオネの初恋」を連載中。
Twitter:@timtimtooo
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