――当時は学校に通いながらお仕事をされていたと思いますが、学業との両立は大変でしたか?
「連ドラに出るようになった中学1、2年生の頃はちょっと大変でしたね。距離的にも、地元から仕事場まで通いづらくなってしまったので、中2から違う学校に移りました。転校生だし、学校に行くとみんなが見に来たりして…」
――「観月ありさが来た!」と騒ぎになってしまうわけですね(笑)。
「地元のままだったら、同級生も幼い頃から一緒にいるので、『頑張ってるな』ぐらいの感じで見守ってくれたと思うんですけど、新しい学校だとなかなかそうもいかなくて…。運動会や文化祭、修学旅行などの行事も、学校に迷惑がかかってしまうので、ほとんど参加できませんでした」
――スターならではのエピソードですね。同年代の友達、仲間との交流が難しかったと。
「そうですね。私がデビューした頃、世間的にはバンドブームで、アイドル氷河期と言われた時代だったので、あまり若いアイドルがいなかったんです。同年代の仲間は、本当に慎吾くんぐらい。2人ともデビューが早かったから、同期と呼べるような人がいなかったんですよね。
でも、20代になってからは、同年代の友達が増えました。芸能界という枠の中でだけで生きていると、自分のキャパが狭まると思ったので、芸能界とは関係のない友達をたくさん作ったんです。そうすると視野が広がって、自分にとっての当たり前が全然当たり前じゃないと気づくなど、いろんな感覚を知ることができました。
一人暮らしで頑張っている友達を見ると、“大人だな”と感じましたし、芸能界の外にいる友人から刺激を受けることはたくさんありました。私自身もどんどん自由になっていって、10代で味わえなかった青春時代を取り戻すというか…(笑)。友達といろんな場所に出かけて、年相応の遊びをしていました」
――具体的には、どのようなことをしていたのでしょう。
「ツアー旅行に参加したこともありますし、激安宿に泊まったこともありました(笑)。温泉に行って、みんなと修学旅行みたいに大広間で雑魚寝をして…。楽しかったですね。その頃、遊んでいた友達とは、今も交流があります」
――ツアーに参加して観月さんがいたら、さぞや皆さんビックリしたでしょうね(笑)。
観月さんの印象を聞かれて、「長く芸能界にいるのに、いつもフラットでいられるのがスゴイ」と語る共演者も。芸能界という荒波の中で、いつ何時もフラットでいる…実は簡単なことではないのでは? と想像しますが、経験を重ねる中で得たスタンスなのでしょうか。
「若い頃はもちろん、イライラすることもありましたよ(笑)。でもどんな現場も、なるべく平穏無事に、みんなで楽しく笑ってる方がいいに決まってますよね。
笑いの絶えない日々を送っていたいんです。だから多少嫌なことも笑いに変えて、ネガティブにとらえないように心がけています。
コロナ禍になり、それまでの生活と変わった部分がいっぱいありました。普通にできていたことがどれだけ幸せだったのかと感じたことも多く、そういう経験も今の自分につながっているのかもしれません」
▲「週末旅の極意~夫婦ってそんな簡単じゃないもの~」第2話より
――日常の大切さを再認識する中で、どんなことに幸せを感じますか?
「働けることがありがたいですし、最近はつくづく“体が丈夫で良かったな~”と。今はドラマの撮影で旅に出ていますが、東京に戻ってきた時、我が家の犬たちに会うとホッとしますし、家のベッドでゆっくり寝られるとか、些細な日常に幸せを感じる機会が増えました」
――10代の頃から第一線を走り続けてきた観月さん。その時々で、何か“目標”のようなものを持っていたのでしょうか。
「10代の頃は、いろいろ考えていたかもしれないですね。『伝説の少女』という曲でデビューしたからには、“私自身が伝説にならないと、あのタイトルなんだったんだ?”となってしまうので(笑)、伝説を残せる人にならなければいけないと思っていました。でも、そんなことも今となっては…という話で。こうなりたいとか、その都度目指していたこともあったんでしょうけど、今はそういう目標のようなものは、あまりないかもしれません。
これまでの芸能人生を振り返ると、ありがたいことに、川の流れにのって行き着いたところで評価していただく…そういうことの繰り返しだったように思うんです。自分で“こうなりたい!”と思って頑張ったとしても、思い通りになることはほぼなくて、意外とふわーっとたどり着いたお仕事が自分の性に合っていたりするものなんですよね。
気負いなく、流れに逆らうことなく、流れて流れてたどり着いた先が、無理なく正しい方向性だったんだろうなと、最近そう思うようになりました。
流れに逆らって頑張り過ぎていた時期もあったけど、そこまで気負わなくても、もうちょっと楽に、流れに身を任せて自分を見つめ直していくことも大事なのかなと。無理すると、もう疲れてきちゃいますしね(笑)。だから今は、とてもシンプルに生きているのかもしれません」
【観月ありさ プロフィール】
1976年12月5日生まれ。東京都出身。CMや雑誌などで子役モデルとして活動し、1989年、「教師びんびん物語II」で連続ドラマ初出演。1991年、「伝説の少女」で歌手デビューも果たし、「日本レコード大賞」新人賞を受賞。「TOO SHY SHY BOY!」「happy wake up!」など、数々のヒット曲を持つ。
俳優としても幅広く活動し、主演ドラマ「ナースのお仕事」「鬼嫁日記」「斉藤さん」など、シリーズ化多数。水ドラ25「週末旅の極意~夫婦ってそんな簡単じゃないもの~」にも主演している。
(取材・文/伊沢晶子)
【「週末旅の極意~夫婦ってそんな簡単じゃないもの~」第2話】
「世の中はたくさんの『誘惑』に満ちていて、誰もが欲望と理性の間を行ったり来たりしているんだろう」。仁(吉沢悠)は会社で部下の三好エリカ(森高愛)に自慢のネクタイを褒められ、食事に誘われた。
今回の夫婦週末二人旅は会津・東山温泉「御宿・東鳳」。大パノラマで広がる会津の絶景の温泉に、郷土料理の「小汁」や名物「ネギ蕎麦」を食す二人だが、どこか上の空で様子がおかしい仁。果たして仁は己の罪悪感に勝てるのか…?