日本には、アメリカやロシアや中国など、さまざまな国のスパイがたくさんいる。彼らは銃やスパイ道具は持たず、会社員を装い、目立たない服装をしていることが多いという。
そこで今回、実際にあった“大手通信会社の社員がロシア人スパイに狙われた手口”を、完全再現VTR(※捜査関係者への取材などに基づく)にしてお届けする。
◆
2017年、東京・新橋。大手通信会社S社に勤める菅野大介(仮名:40代)は、仕事を終え家路へ。すると、1人の見知らぬ男に声をかけられる。
「この辺りでおいしい店か…あそこの角を曲がって2つ目の路地を右に入ったところに…」と教える菅野だが、困ったような顔をするベルナルド。菅野は思わず、
「よかったら、店の前まで一緒に行きましょうか?」と、男を店の前まで案内してしまう。
「私は在日ロシア通商代表部(貿易関連の業務を担うロシア大使館の組織)の職員です。よければ日本のことをもっと教えてください」というベルナルド。
(これも何かの縁かな…)と思った菅野は、以来2人で会食を重ねることに。
「私はもうちょっとしたら、ロシアに戻らなくてはなりません。私の後任とも仲良くしてください。彼は日本語があまり上手ではないので、ぜひ日本語を教えてあげてください」
数日後、ベルナルドは後任の男性を連れ、3人での会食が開かれた。
「菅野さん、セルゲイは在日ロシア通商代表部のナンバー2にあたる代表代理です」
【ここで池上解説!】
「このセルゲイという人物、ロシア情報機関の1つ『SVR』対外情報庁所属で、その中でも科学技術に関する情報を専門に収集する『ラインX』と呼ばれるグループの一員と見られています」。2人は、約2カ月に1度のペースで会食していた。
「最近の若い社員は扱いが難しくて…」
「それはロシアも同じですよ!」
意気投合し、酒を酌み交わす2人…。
【ここで池上解説!】
「セルゲイは実に巧みでした。対外情報庁のやり方は、ターゲットとなる人物、今回の場合、菅野が協力者として好ましいかどうかを徹底的に調べあげ、菅野が好む人物になっていくのです。まさに“プロのスパイ”の手口」。
◆
しかしセルゲイの行動には、不審な点がいくつもあったという。日本の店に詳しく、会食の場所は全てセルゲイが指定。決して同じ店を使うことはなかった。
さらに、直接店で会うことはなく、尾行を気にしてか、必ず人目に付きにくい場所で待ち合わせをしてから店に向かったそう。
関係を深めていった2人…やがてセルゲイは、
と、S社に関する情報を求めるように。
「インターネットを検索すれば分かりますよ」
「日本語が得意じゃないので…私には難しいんです…」
当初はホームページで公開しているなんでもないような情報だったが、次第にセルゲイの要求は、「電話基地局設置の際、どういう手順で作業を進めたらいいのか」など、機密情報にまでエスカレート。それと引き換えに、菅野にそっと封筒を手渡すのだった。
菅野は謝礼を受け取ってしまうのか? さらにセルゲイは、菅野の家族をも脅かす“ある行動”に出るのだった……。
この続きはぜひ、7月12日(水)夜9時放送! 「60秒で学べるNews」【池上彰が解説!世界のニュースの裏にはスパイあり】(MC:ウエンツ瑛士)で確認を。