6月23日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「空き家を眠らせるな!~驚きの活用法~」。
日本が抱える大問題のひとつ“空き家”。国の調査では全国に849万戸(2018年)と右肩上がりに増加。2030年には、3軒に1軒が誰も住んでいない家になるという予測もある(※野村総合研究所 予測)。法律の改正で、税金が最大6倍になる可能性も。
そんな“空き家”を深い眠りから目覚めさせ、活用する新たな動きをカメラが追った。
都心の一等地も空き家だらけ⁉︎ “官民一体”で再生をお助け!
ベンチャー企業「空き家活用株式会社」(東京・港区)は、全国の空き家の情報を発信し、買いたい人や借りたい人に紹介している。
代表の和田貴充さんは大阪の不動産会社に勤めて経験を積んだあと、2010年に独立。
主に新築物件を販売していたが、「建物がどんどん増えて人が減っていく…自分たちが空き家をつくる製造機になってしまっている」と危機感を抱くように。
そこで「空き家活用株式会社」を設立。今は空き家対策の専門家として、全国16の自治体と提携している。
東京・世田谷区も、和田さんを頼る街の一つ。区の空き家対策専門部署 空家・老朽建築物対策担当係長・千葉さんによると、世田谷区はマンションの空き家も多く、さまざまな対策を講じるにも関わらず、なかなか空き家が減らないという。
そこで2年前、和田さんと組み「せたがや空き家活用ナビ」という取り組みを始めた。
区が窓口になって相談を受け付け、和田さんの会社が解決策を提案する。相談は無料で、官民がタッグを組む、珍しいサービスだ。
去年8月、和田さんと千葉さんが向かったのは、相談者・沖さんが住む3階建て住宅。
2階と3階は沖さん夫婦と兄弟が住んでいるが、1階(100平米、3LDK)は、住んでいた両親が亡くなって以来、3年間空き家に。生前、お母さんが気に入っていたサンルームも物置状態になっていた。
リフォームして賃貸住宅にしたいとの依頼を受けた和田さんは、提携する80の業者や専門家の中から、沖さんに合ったプランを作る。遺品整理に始まり、リフォームやその後の賃貸管理、ローンを組む地元の信用金庫の紹介まで、まさにワンストップの提案だ。
「区が精査してくれているところなので、安心かな」と沖さん。
約9カ月後、和田さんが沖さんの家にやってきた。リフォームの仕上がりはどうなったのか…それはまさに、驚きのビフォー・アフターだった。
個人投資家も注目!利回り10%超⁉︎“空き家投資”とは
今、各地で「空き家投資ツアー」が開催されている。参加者の多くが会社勤めの人や主婦など一般の人たち。空き家を買い取ってリフォームし、賃貸物件として家賃収入を得ようというのだ。物件にもよるが、利回りは年10%を超えることも期待できるという。
ツアーで売買が成立し、空き家の再生に成功した数は1800軒以上。主催するのは、一般社団法人「全国古家再生推進協議会」(全古協)だ。
理事長の大熊重之さんは、大阪で塗装の会社を経営。約10年前から空き家のリフォームを手掛けるうちに、この仕組みを考えついた。
全古協がツアーを開き、空き家を投資家に紹介。購入が決まれば、全古協を通じて地元の工務店がリフォームを行い、投資家は賃貸物件として家賃収入を得る仕組みだ。
大熊さんは「投資家、入居者、工務店、地域…“四方良し”のビジネス。空き家が減り、地域に喜ばれる」と話す。
全古協は、地方でも投資ツアーを開催している。富山・高岡市でのツアーでは、大熊さん自ら案内役を買って出た。
まずは駅から徒歩10分、築51年の一軒家。売価は240万円で、ツアー参加者は「めちゃめちゃきれい」と声を上げる。家の状態は良く、全古協スタッフの説明では、懸案のリフォーム費用が抑えられるという。
続いて向かったのは、土壁が特徴的な古い日本家屋。売価は80万円と格安だが、風呂がなく、リフォーム費用が膨らむ可能性がある。しかし2階は、天井が緩やかなカーブを描く珍しい造りで、古民家ならではの特徴が出せそうだ。
1日で5軒の空き家を見て回った一行。その日の夜、買い付け会が開かれた。
物件ごとに購入希望者を募ると、天井が特徴的だった古い日本家屋に2組が手を挙げた。競合したため、どちらが買い付けるか、くじ引きで決めることに。
購入権を得たのは都内でIT企業に勤める男性だった。決断した理由を、「物件に特徴があり、(空き家投資は)初めてだが、投資してもいいかなと思った」と話す。
くじで負けた夫婦は、石川・金沢市にある売価320万円の物件を購入した。
IT企業の男性が購入した古い家屋は、屋根を生かしてリフォーム。風呂を作るなど水回りは一新したため、総額費用は640万円に。家賃を8万円に設定し、単純計算なら7年で元が取れる想定だ。
夫婦が買った金沢の一軒家は、台所とリビングをLDKにリフォームし、総額は700万円。家賃は7万5000円、9年で元が取れる計算だ。
注目を集める空き家投資だが、もちろん楽をして儲かるわけではない。4年前から投資を始め、今や29軒を所有する男性が、その知見を教えてくれた──。
「無印良品」が“空き家”を再生!過疎の町も頼る、知られざる実力
おしゃれな家具や生活雑貨が人気で、全国に約550店舗を展開する「無印良品」。その「無印」を運営する「良品計画」が、空き家の再生事業に乗り出している。
今回の舞台は北海道・十勝平野に位置する人口約9000人の酪農の町、清水町。
今回の空き家再生プロジェクトを担当する「良品計画」空間設計部・野元あゆみさんは、清水町商工観光課の前田真課長と物件を見に行くことに。
元教員住宅だった空き家は、洋室も和室もある3LDK。25年前に建てられたが、少子化で先生が減り、4年前から空き家になっていた。
過疎に悩む清水町は、ここを移住体験できる宿泊施設にしたいと考えていた。前田さんは「都会の人たちに受けているセンスを取り入れた住宅をつくりたい」と「無印」を頼った理由を明かす。
野元さんが所属する空間設計部は、「無印」の店舗だけでなく、他社の店舗や公共施設などのデザインを担当する部署。野元さんはこれまで山科駅(京都市)の地下連絡通路や京都橘大学(京都市)のキャンパスなど、数々のプロジェクトを担当してきたすご腕だ。
早速、清水町の物件に取り掛かる野元さん。部屋の設計だけでなく、どんな家具や調度品を置くかも決めていく。実際に「無印」の店舗に足を運んで、黒い椅子やリビング用のビーズクッション、センスのいいキッチン用品を選んだ。
それにしても、なぜ「無印」が空き家の再生に力を入れるのか。野元さんの上司「良品計画」執行役員の長田英知さんは、「生活に関わるさまざまなものを売っているので、活用してリノベーションしていく。多くの空き家が全国各地にあるので、非常に大きな市場がある」と話す。
去年11月、野元さんはインテリアの最後の仕上げをするため、清水町の木工所へ。目玉の家具は、ぜひ地元で作ってほしいと依頼していたのだ。そしていよいよ「無印」が再生した住宅が完成。町の人も驚く仕上がりになっていた!
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