2月3日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、SDGsウィークエンド「古い家が宝の山になる!」。多くの人が頭を悩ませる、実家などの古い家の整理。解体して処分する際、捨てられる古い木に価値を見出し、現代の建築に取り入れようする企業が注目を浴びている。さらに、古い家のガラクタを引き取り、再び価値をつけると飛ぶように売れる秘密にも密着。SDGsの時代、大注目のビジネスに迫った。
解体する古民家の木材で驚きのビフォー・アフター
去年11月。新潟・糸魚川市の山間で、築200年の古民家の解体工事が行われていた。家主の池亀俊幸さんもここで育ったが、空き家になったこの家をやむなく処分することに。
解体を依頼したのは「山翠舎」という会社。創業家3代目、山上浩明社長(46)の指示で、職人が手作業に切り替え、豪雪に耐えてきた丈夫な梁を取り外す。
「手間をかけなければ折れてしまうんですよ。この形状はあまりない、素晴らしいです」と山上さん。「山翠舎」は、こうした古い木を買い取っているのだ。
2階に上がった山上さんのお目当ては、昔の大工さんが手作業で削った木。
「今だったら(機械で)平らに切るだけだけど、(当時は)ないからね。こういう手作業の跡は面白い。こちらの梁もしっかりと引き取らせていただく」。今回買い取った古い木は30本ほど。その分を解体費用から差し引くので、依頼主にもメリットがある。
「山翠舎」(長野・大町市)の倉庫には、解体された古民家から買い取った約5000本の古木が積まれていた。こうした木を現代建築に取り入れ、商業施設や店舗で再利用するのだ。
例えば長年、蔵の屋根を支えてきたこの古い木。長さが約9メートルあり、約500万円で売れるそう。それほど大きくない古い木は10万円前後。いつどこで建てられたのかが書かれたものは、むしろ希少価値がつくという。山上さんは、「住宅で梁に使われる場合もあれば、家具に古い木を使う場合もある。活用の幅が日に日に増している」と話す。
これまで、捨てられたり燃やされたりしていた古い木だが、SDGsに貢献できるビジネスになっている。
「山翠舎」の古い木は、「ニューバランス」のコンセプトストア(東京・中央区)や、東京駅のエキナカにあるバームクーヘンの「治一郎」など、いたるところで活用。これまでに手掛けたのは500軒以上で、解体から施工まで一貫して行えるのが「山翠舎」の強みだ。
社長の山上さんは、大学卒業後、家業を継がず「ソフトバンク」に勤めるが、売り上げが低迷していた「山翠舎」を立て直すため、28歳の時に実家に戻った。その時に目にしたのが、古民家の解体。建具を扱う職人の技術を生かせば新しいビジネスになると考えた山上さんは、2004年に古い木の再生事業をスタートさせた。
去年11月、大阪。「山翠舎」は、日本初上陸となるブランドホテルのエントランスの内装を任された。古い木を知り尽くした職人たちが、別々の木を組み合わせる"金輪継ぎ"という伝統の技を駆使し、次々と柱を建てていく。少しでも寸法が狂うとうまくいかない高度な作業だ。
今年1月、ホテルのエントランスが完成した。そこには52本の木で組まれた巨大な櫓が。これぞニッポンの職人技だ。山上さんが古い木の再生ビジネスに取り組んで19年...当初はなかなか伸びなかった業績も急拡大し、今や10億円以上を売り上げている。
古い家の家財道具を"レスキュー"新しい命を吹き込め!
去年11月、東京・立川市。コロナもあって3年ぶりに開催された「東京蚤の市」は、200店舗以上が出店する国内最大級の骨董市だ。中でも「リビルディングセンタージャパン」、通称「リビセン」は人気の店。2000点以上の豊富な品揃えで、ほとんどが古い家から買い取ったものだ。
例えば、昔の薬の瓶は770円。一見ガラクタにしか見えない物もどんどん売れていく。お客さんが買った木箱には持ち主の字が書いてあるが、「裏の板の具合がすごくいい。陶芸品を作っているので、オブジェを乗せて作品にしたい」とのこと。4400円で大きな板を買ったお客さんは、「子どもの絵を飾りたい。額を買うと高いから」と話す。
この日1日で72万円以上を売り上げた。
「リビセン」本社(長野・諏訪市)の2階は、買い取った雑貨が並ぶショップになっており、ここを目当てに、年間約5万人が諏訪にやってくる人気スポット。
代表の東野華南子さんは、「箱や籠はすごい人気。籠を玄関先に置いてポストみたいにしている人もいる。不在の時、籠に荷物を入れておいてくださいとか、使い方を考えてくれるお客さんが多いのが『リビセン』のいいところだと思う」と話す。東野さんは自分たちのビジネスを"レスキュー"と呼んでいる。「モノだけでなく持ち主の思いも救いたい」という考えからだ。
番組は、「リビセン」の買い取り現場に同行。着いたのは築50年以上のお宅で、依頼者は不要なものを整理したいという79歳の女性だ。案内された納屋には、長年使われていない物がほこりを被っていた。
マニュアルなどはなく、全て買い取りを担当するスタッフの目利き。「デザインや物の雰囲気で、僕たちが引き取ってしっかり次の方に伝えたいなと思うものを選ぶ」という。
今回は、イスやバケツ、食器類に加え、漬物の重しに使っていた石など、合わせて70点を買い取り。捨てるはずだったものが2700円になった。
「リビセン」では、古い木材も買い取り、一般向けに販売。さらに奥の工房では、オリジナルプロダクトも制作。この日は、古いガラスと木を組み合わせた額を作っていた。手作りの額は「東京蚤の市」でも売れられており、小さいものでも7000円ほどするが、約100点が完売した。
東野夫妻が「リビセン」を設立して7年、理念に共感したスタッフも全国から集まり、18人に。SDGsを追い風にネット販売も展開し、年商は1億円を超えるまでに成長した。
そんな中、店長の岸本優芽さんには悩みが。雑貨などに比べて、古い木材はなかなか買い手がつかずたまっていく一方。どうしたら再び価値をつけて循環できるか・・・。岸本さんは、とびきりの"ある秘策"を思いつくが...。
番組ではこの他、「山翠舎」の女性大工・堀内みな美さん(28)の奮闘に密着する。
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