芸能生活20年、MEGUMIが”詰んだ”と思った瞬間...厳しい現実を突きつけられ選んだ道

公開: 更新: テレ東プラス

動画配信サービスParaviでは、これまでの放送を一挙配信中! ドラマチューズ!「完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの」(毎週火曜深夜0時30分放送)の企画・プロデュースを手掛け、美容業界のカリスマ女社長役も演じるMEGUMIさんにインタビュー。

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ドラマ制作への思いを聞いた【前編】に続く今回は、MEGUMIさんご自身の"詰んだ"経験をうかがいました。

命がけでやれば誰かが気付いてくれる

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――2001年にデビューされて以来、20年以上にわたり第一線で活躍されたきたMEGUMIさんですが、"詰んだ"経験はありますか?

「歌手を目指していたんですが、とにかくオーディションに受からなくて。当時19歳であせっていた頃、たまたま紹介してもらって当時の事務所に入ることができました。"グラビアやるの?"とは思ったんですけど、このチャンスを逃したら芸能界には入れないだろうと、わらにもすがる思いでグラビアの仕事を始めました。それから数年して、夢だった歌手デビューができたんです。でも、CDもライブのチケットもまったく売れなくて......。そこが最初の"詰み"でしたね。子供の頃からの夢が叶ったら、その次にこんなことが起きるのかと、ショックでした」

――現実を突き付けられたということになるんでしょうか。

「"お前に才能はない"とハッキリと数字で見せられました。その頃はありがたいことに、バラエティやグラビア、ドラマの仕事があって、それが楽しかったんですよね。だから、すぐに舵を切って方向転換できたと思います。"私には、これがあるじゃん"と。壱子がアナウンサーとして天下を取ろうとしていたけど失敗して、カリスマになろうと切り替えた気持ちに近いというか。なんとも苦くて甘い経験でしたね」

――デビュー後、すぐにバラエティでも引っ張りだこでしたが、この頃、ご自身の中に不安はありましたか?

「当時は、1年に1日の休みがあるかどうか、というぐらい忙しくて、精神的に相当枯れていました。プロレスやったり水着でバンジージャンプやったり、どんどんすり減っていく感じ。辛いことがあったりしても、泣きながらふざけている日々だったかな。今思えばあの時の経験が自分を強くしてくれたというか。若いからこそできたことで、もう一度やれと言われたら無理ですけど、その時期に自分のコアができたと思います」

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――超多忙な中、将来については、どう考えていましたか?

「"これっていつまでやるんだろう"という思いはありましたね。"自分のやりたいことはこれじゃないんだよな"という思いはあって、映画を観ることが好きなので映画に出たいと思っていました。でも当時は、バラエティをやっている人間が映画に出たいなんて言えないような時代で、"このままじゃダメだけど、映画も無理だしな"と考えていて。子供ができて一度立ち止まることになったので、禅問答のように自分と向き合って、実際に自分はどうしていきたいのかと考えました。結果、"ちゃんとした役者になりたい"という答えが出て、そこに向かって頑張っていこうと決めました」

――出産がきっかけになったんですね。

「自分の子供に見せても恥ずかしくない仕事をしたいと思いますからね。ただ、母親になった私に来たのは、『冷蔵庫を見せてほしい』『夫の悪口を言ってほしい』『収納術は⁉』みたいなママタレントとしての仕事で。やりたいこととズレていたので、そういう仕事は全部お断りさせていただきました。

そうしたら仕事が減り、収入も減っていきて。子供はかわいいし家庭も円満で幸せなんだけど、"大丈夫かな""役者になれるのかな"と焦る中で、"それでも自分は役者になりたい"という思いがあって、どうしたらいいのかと周りに話していました。

役者になるなら映画をたくさん観なくちゃと、毎日映画を観て、感想を書くノートを作ったり、アクティングコーチをつけて芝居や脚本の読み方を習いました。そこで自分は芝居のことを何も知らなかったんだと分かったんです。仕事もなくて不安だったけど、あの学びの時間は今に効いてきています」

――不安な時期、どのように乗り切ったのでしょうか?

「ドラマの仕事が来ても1シーンでセリフが一言あるかどうかという役でした。それまでテレビにたくさん出ていたからプライドもありましたし、ある意味傷つきもしたのですが、それでもめげず、いただいた役に対して誰よりもこだわって取り組むようにしました。役を理解するために、脚本を読んだ上で自分の演じる人物が生まれた時から劇中の状況にたどり着くまでのプロフィールを書いたり、その人物が暮らしている町に行って、何か食べてみたり。とにかく命がけで役に向かっていました」

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――現在、MEGUMIさんはさまざまな映画やドラマで素晴らしいお芝居を披露し、注目の俳優さんになられました。それだけの努力が実った転機は、何だったのでしょう?

「小さい役でも命がけでやっていると、監督が気付いてくれるんです。元々芝居ができないと思われているグラビアのタレントだったので、"あれ、芝居できるんだ?"と気付いてもらえると、ちょっとずつ呼んでいただけるようになって。何も仕事がない時に呼んでくださった監督には一生頭が上がらないのですが、中でも白石和彌監督の『ひとよ』(2019年)と、市井昌秀監督の『台風家族』(2019年)の2作で賞(ブルーリボン賞助演女優賞)をいただけて一気に周りの方の目線が変わっていった感じがしますね」

――お仕事に悩む一方で子育てもされていて、両立は大変だったのではないですか?

「確かに、子供を育てながら体力的にも精神的にも大変だったし、"自分がこんなに好きなことをやっていていいのかな"とか"子供を置いてまでやることなのか"という迷いはありました。でも、子供とずっと一緒にいればいいのかというと、それはそうでもなくて。一緒にいて、子供と私がギクシャクしてしまった時期もありますし。

息子が通っていた幼稚園の先生からの『子供は手が離れてからの方が人生は長いのよ』という言葉は、自分の中で大きかったですね。子供は20歳ぐらいになれば独り立ちし、そこから自分の50代60代の人生が待っている。『先の人生のためにも、子供がいる時に何でもいいから仕事をしていなさい』と。

子育てしながら、子供を産んでからも自分が求められるようなタレント、役者になるには、ここでイメージチェンジしないとダメだという強い思いがありました。息子には『ごめんね、あなたも頑張ってね、私も頑張るから』と声をかけて、一緒にいられる時はベタベタするとか、自分なりのルールを作っていました」

――芸能の仕事だけでもお忙しいのに、カフェの経営やいろんなお仕事を手掛けられていますよね。すごいバイタリティをお持ちだと思うんですけど、元々そういうタイプなんですか?

「気質ですね。小さい頃から、習い事もぎゅうぎゅうに入れないと気が済まないようなタイプだったんです(笑)」

――MEGUMIさんが何度も"詰んだ"経験をしながらも、それを乗り越えてきた原動力は何なのでしょう?

「月並みですけど、やりたいと思ったことを、しつこくやり続けたからじゃないかと思います。それで、経済的に破綻したり家族が崩壊するのはダメですが、バランスを取りながら夢を追い続ければ、何らかの形になる。夢をかなえる一つの方法だと思います」

ichiko_20221206_05.jpg「完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの」第6話より

MEGUMIさんが企画・プロデュースを手掛け、美容業界のカリスマ女社長役として出演するドラマチューズ!「完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの」は、動画配信サービスParaviで、これまでの放送を一挙配信中!


(取材・文/伊沢晶子)

【プロフィール】
MEGUMI(めぐみ)
1981年9月25日生まれ。岡山県出身。2001年、グラビアアイドルとしてデビュー。バラエティタレント、俳優、実業家として活躍。第62回ブルーリボン賞助演女優賞受賞(2020年)。近年の出演作は、映画「ひとよ」(2019年)公開、「台風家族」(2019年公開)、ドラマ「石子と羽男」(TBS系)、 「おい、ハンサム!」(THK)。2016年、石川県に「カフェたもん」 をオープンさせる。WEBメディア「+COLLABORATE」でプロデュース業を務め、初プロデュース作のショートフィルム「LAYERS」(2022年公開)は国際映画祭の賞にノミネート。
WEBメディア「+COLLABORATE
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