現役作詞家が語る音楽業界の裏事情...アーティストからクレームも?「修正が何回もきて嫌になることもあります(笑)」

公開: 更新: テレ東プラス

作詞家と聞くと、阿久悠秋元康などの大御所を思い浮かべる人は多いかもしれないが、実は底辺から売れっ子までさまざまな作詞家がいるらしい。
音楽業界と言えば、とてつもなく華やかで遠い夢の世界のようだが、果たして、その裏側はどうなっているのか?

今回の「テレ東プラス人生劇場」では、作詞家歴30年以上のベテラン女性作詞家・Oさん(仮名)を取材。「私は底辺作詞家」と謙遜しているが、何曲かはみんなが知っているアーティストの作詞を手がけている。
長きに渡って作詞の仕事をし続け、変化していく音楽業界に身を置いた者でしか知ることができない"作詞家裏事情"を、前後編に渡ってお届けする。

sakushika_20221119_01.jpg画像素材:PIXTA

「作詞家になりたい!」と思ったことはありませんでした

――Oさんは、10代から仕事を始め、現在50代。長らく作詞家として活動していらっしゃいます。まずは作詞家になったきっかけから教えてください。

「アマチュアバンドをやっていた時にコンテストで入賞し、業界関係者と知り合うようになり、作詞家の世界にスカウトされたことがきっかけです。元々、詞も曲も書いていましたが、『あなたは詞がいいね』と言われたので、『じゃあ、何かあればお仕事ください!』と軽くお願いしてみたら、本当にすぐに仕事が来ました(笑)。80年代後半は、ソロデビューしたおニャン子クラブのメンバーをはじめ、メジャーなアイドルがたくさんいる時代でした」

――当時を振り返っていただき、ご自身が書く詞の魅力は、どこにあったと思いますか?

「若者の心情をうまく表せていたのではないかなと思います。当時の私はバンドでプロデビューするのが目的でしたし、『作詞家になりたい』と思ったことはありませんでしたが、やり始めたらスルスルと書くことができたんです。当時は私も10代だったので、アイドルの人たちと年が近いというのはかなり武器になり、仕事でもあまり苦労しませんでした」

――スルスルとは、やはりスゴイ才能ですね! 詞というのは、いきなり書けるものなのでしょうか。

「それがすぐに書けてしまったんです(笑)。やっぱりバンドをやっていたことが大きくて、曲が先にあって作詞をするということに慣れていたんですよね。私の場合、メロディが先にあって、そこにピッタリと詞をつける『曲先(きょくせん)』のお仕事がほとんどで、今もそれは変わっていません」

――素人からすると、曲先の方が難しそうに感じます。細かいところまで合わせなくてはならないのですよね?

「曲が先にあった方がやりやすいんですよ。詞から先に書くと、ダラダラ書いてしまいがちですが、メロディという制約があると、パズルのように言葉を入れ替えて整理することができるので。それに曲があれば、ある程度のイメージが湧くので書きやすいです」

――詞の修正も多いのでしょうか。

「昔は、オーダーの段階ではっきりとしたテーマをもらえたので、修正はそんなにありませんでした。例えば、"遠距離恋愛でけんかをしている恋人同士"でお願いします"といった感じ。今は逆に、"刺さるやつ""明るい感じで"といった大雑把なオーダーしかないので、修正が何回もきて、本当に嫌になることもあります(笑)。キャッチボールしながら考えていくという感じで...。それならいっそのこと、全部を任せて欲しいんですよね」

――私のようなライターでも、何回も修正が来たら、「ならお前が書けよ!」と思っちゃいますからね(笑)。他にもつらいことはありますか?

「作詞って、いろんな人がクレーム入れやすいんですよね。曲やアレンジに対しては専門知識が必要ですが、日本語ができれば誰でも文句を言いやすいのがつらいところ。だから、"苦労したけど、スタッフ全員が納得できる作詞ができた!"と思ったのに、アーティスト側の誰か1人が『やっぱりこのフレーズが嫌!』となると、その鶴の一声で書き直しになることも。つらいです...本当に」

――ちょっと古い感覚かもしれませんが、ファミレスなどで隣の人の恋バナに聞き耳を立てて、詞を書く際の材料にするという話も聞いたことがあります。Oさんも街に出て、そういうリサーチをしますか?

「作詞家を始めた頃は、自分の引き出しにないテーマに食らいつくのに必死だったので、街に出て周りを見ている暇なんてなかったのが正直なところです。逆に今はメモをしていますよ。今でも10代のアイドルに詞を提供する機会が多いので、街に出て気づいたことをメモしたり、年の割に、むちゃくちゃたくさん恋愛映画を見ています(笑)。でも、"女の子の恋する気持ちは永遠に変わらないのかなぁ"なんて思ったりもします」