800回SP第二弾~秋元康 激流を攻略せよ!:読んで分かる「カンブリア宮殿」

公開: 更新: テレ東プラス

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秋元ドラマがハリウッドへ~追跡!海を渡ったAKB48

東日本大震災から11年が経った福島・双葉郡。被災地には今も生々しい傷跡が残る。8月4日、ふたば未来学園中学校・高等学校で、変わった授業が行われていた。

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リモート画面から語りかけるのは、芸人・絵本作家の西野亮廣さんやライブ配信サービス・SHOWROOMの前田裕二社長だ。

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実はこれ、地域の中高生280人以上が参加したサマースクールで、テーマは「落とし穴の埋め方~挑戦の準備」。

画面の向こうは東京のスタジオ。そこに、このサマースクールの仕掛け人、秋元康がいた。

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秋元が7年前からプロデュースしてきたこのイベント。毎年、元HKT48指原莉乃さんサイバーエージェント藤田晋社長など、さまざまな業界の著名人を講師に招き、被災地の生徒たちと交流してきた。困難な状況で育った彼らに何かできることはないかと、秋元が発案した。無限の可能性を秘めた若者たちに"きっかけ"を与えたかったという。

「この中から10年後に『私、あの中にいたんです』と、成功する人がいるかもしれない。そういう『きっかけ』となる種をいっぱい作ってあげたかった」(秋元)

一方で、秋元康の新たなビジネスも動き出していた。この日のリモート会議の相手はアメリカのエンターテインメント会社だ。

「今回は大きな作品にするつもりです。トップクラスの監督や脚本家を集めようとしています」と興奮気味に話すのは、ハリウッドスター、ウィル・スミスが作った会社「ウェストブルックスタジオ」のテレビドラマ事業部本部長、デービッド・ブアスタインさん。秋元が手がけたドラマ「共演NG」をリメークするプロジェクトが進んでいるのだ。

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「今回のアメリカバージョンで一番面白いと思っているのが、アメリカの契約が厳しいこと。ワケありの2人が契約書に『出演する』とサインしてしまったところから始めるつもりです」(秋元)

「この作品にはユーモアあり、暗い闇の部分あり、不安な心理もある。全てが素晴らしいと思っています」(プアスタインさん)

秋元は海外展開に強い使命感を持っている。

「企画が面白いものは、ちゃんと国境を越える。僕らの先輩も海外にチャレンジしてきたけれど、なかなかうまくいかず諦めてきたところがある。どこかで僕らが世界とやらなきゃいけない」(秋元)

10年以上前、秋元はすでに海外に挑んでいた。AKB48のアジア版を作ろうとしたのだ。東南アジアを中心に6つのグループを立ち上げた。

2011年のJKT48結成以来、現地で奮闘し続けてきたJKT48運営責任者の見城良さん。この日は情報通信省主催のイベントに出演するため、メンバーとともに真新しい巨大なジャカルタ国際スタジアムへ。地鳴りのような大歓声とともにメンバーが登場した。JKT48はアイドル文化のなかったインドネシアで、熱狂的なファンを生み出していた。

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「インドネシアにはJKT48が進出した2011年頃、『アイドル』という考え方が全くなかった。努力する姿を見せて応援してもらうという考え方がなかなか理解してもらえず、非常に苦労しました」(見城さん)

JKT48はAKB48と同様に小さな「JKT48劇場」を作り、地道にファンを増やしてきた。今では国内にライバルとなるアイドルグループがいくつも誕生しているという。

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JKT48の初期のメンバーに日本人がいた。AKB48から移籍した仲川遥香さんだ。

「どうやったらAKB48のやり方をJKT48のメンバーにうまく伝えられるか、苦労しました」(仲川さん)

仲川さんはインドネシアで人気に火が付き、今やさまざまな番組に引っ張りだこの国民的アイドルになっている。

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「『きっかけ』をくださったのも、ジャカルタに送り出してくれたのも秋元先生。インドネシアで活動できるようにたくさん協力してくださった。感謝しかないです」(仲川さん)

韓国が席巻する世界エンタメ~日本のアイドルはどう挑む?

そんな秋元の挑戦を横目に世界のエンタメ市場で存在感を増すのが韓国勢だ。BTSの登場は世界の音楽シーンにK-POPの実力を知らしめた。

NETFLIXでメガヒットを連発するのも韓国ドラマだ。韓国の財閥令嬢と北朝鮮の軍人が恋に落ちるラブストーリー「愛の不時着」が大ヒット。借金を背負った者たちが命懸けで挑むサバイバルドラマ「イカゲーム」は90カ国以上で視聴数1位をとり、爆発的ヒットを記録した。

韓国では世界で戦えるコンテンツメーカーが次々と誕生している。最近ヒット作を連発して急成長しているドラマ制作会社「ASTORY」。現在、NETFLIX非英語部門で世界ランク1位の、自閉症の女性弁護士の奮闘を描いたドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」も作っている。CEOのイ・サンベクさんに日本のドラマとの違いについて聞いてみた。

「私たちは世界に通用するための作品作りを常に考えています。日本のドラマが海外でヒットしないのは、国内だけを見て制作しているからです。世界へ向けたコンテンツを作らないと大きな収入は得られません。収入が増えれば制作費も増え、より質の高い作品を作ることができます」

そんな韓国で2018年、オーディション番組「PRODUCE48」が放送された。番組から生まれたアイドルグループ「IZ*ONE」は、世界各国の配信チャートで1位を獲得するなど絶大な人気を誇った。

この番組を作るにあたり、韓国側からプロデュースを依頼されたのが秋元だった。アイドルをヒットさせることにおいて、韓国からも一目置かれる存在なのだ。番組を制作した韓国有数のエンタメ企業「CJ LIVECITY」代表のシン・ヒョングァンさんに、秋元に依頼した理由を聞いた。

「秋元さんはまさに総合プロデューサー。放送作家、作詞家、脚本家などさまざまな経歴を持っているので、私たちのプロジェクトに関して的確にアドバイスしてくれました。エンタメのジャンルや世代も超えて、常に新しい挑戦を続けているものすごい人だと思っています」

ドラマも映画も倍速&縦型~激変エンタメにレジェンドは?

深川史那さんには、自宅の小部屋で毎日行っている仕事がある。簡易的な照明やマイクがセットされている小部屋に入ると、「皆さん、こんにちは!」と言って、スマホに向かって歌い始めた。

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深川さんが行うのは「SHOWROOM」というプラットフォームでのライブ配信。自宅でのアイドル活動だ。「SHOWROOM」は仮想ライブ空間で、誰でも配信することができる。視聴者は「ギフト」を購入し、それを使うことで深川さんの活動を応援できる仕組み。深川さんにとって、アイドルになる夢を叶えてくれたサービスだ。

「『SHOWROOM』がないと今の自分はない。アイドルになる夢を諦めていたかもしれません。すぐにファンと話ができてコミュニケーションが取れるのは、『SHOWROOM』や配信アプリならではだと思います」(深川さん)

「SHOWROOM」の会員数は590万人を突破。プロのアイドルから、ミュージシャン、お笑い芸人の卵まで、今や若い世代の表現の場となっている。

「SHOWROOM」の前田裕二社長は「これからファンを増やして人気になりたいというネクストブレークの方たちが配信しています。手を挙げれば簡単に発信や表現ができる場を作りたかった」と言う。

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その前田さんは、若い世代を応援したいという秋元から、さまざまなアドバイスを受けてきたという。

「秋元さんがすごいと思うのは、発想力もさることながら、その高い発想力をものすごい数、打ち続けること。努力の量で勝ち続けていく、僕が一番憧れる勝ち方をするタイプの天才です」(前田さん)

だが今、そんな秋元さえも驚くほど時代は激変しているという。

「僕らが育ってきたテレビ文化が大きく変わろうとしている時だと思う。今の子どもたちはテレビを見なくなった」(秋元)

信じられないことも起きている。若者の間ではドラマなどを早送りで視聴するのが当たり前になっている。いわゆる「倍速視聴」だ。実に20代のおよそ半数が「倍速視聴」で動画を見ているという。

さらに、ドラマの撮影現場を訪ねると、そこにも異変が。撮影中の映像をのぞくと、画面が縦向き。撮影していたのは、スマホで見ることを前提にした「縦型」ドラマだった。今や映像コンテンツはテレビ画面ではなくスマホで楽しむ時代なのだ。

ドラマ「LINE NEWS VISION『終わらせる者』」のプロデューサー・内田準一朗さんは縦型ドラマについて、「電車や移動中のスキマ時間に見やすい。左右にある余分な要素を削ぎ落としているので、没入していくのに向いているのではないかと思います」と言う。スマホで見ることに特化した縦型の動画配信サービスも登場している。

若者の変化について、秋元はスタジオで次のように語っている。

「『テレビの視聴率が取れない』『テレビがつまらなくなった』というのはテレビの全盛期にも言われた。だからそれはみんなが言いたいだけ。僕は今もテレビはつまらなくなったと思ってないし、ちゃんと見るとどの番組も面白い。ただ『テレビを見る時間がなくなった』というのが正しいと思う。その時間にスマホやタブレットを見ているとか、SNSや配信コンテンツに時間を取られていると思います」

ビートたけしが語る秋元康~大衆の心を掴んで48年

プライベートでも秋元と交流があり、長年、同じ世界で戦ってきたビートたけしさんに、秋元について聞いてみた。

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「秋元さんは時流に乗っているわけではなく、時流を作ってきた。そこに安住しないし、逆にリードする。リードしているけれど、基本的には変わらない。食べ物屋さんで言えば『米』みたいなもので、新しい丼は作るけど『米』は変わらない。古典的なものだけど、社会の流れに応じて変化している。どちらかというと実業家の感じがする。実業家としての感覚が鋭い」

時代が激変する今、秋元が作るエンタメを、たけしさんはこう評した。

「『YouTube』を見ても別に新しくはない。テレビで若手がさんざんやってきたくだらないことを『YouTube』でやると『YouTuber』だと言われる。人気はあるけどたいしたお笑いではない。ジャンクフードみたいなもの。秋元さんは『ちゃんとしたレストランを予約して、おいしいものを食べる』というようなエンターテインメントを考えていると思う」

秋元のクリエイティブへの思いを知る機会があった。秋元が足を運んだのは東京・渋谷区の「Bunkamura」、演劇ファンから絶大な人気を誇るケラリーノ・サンドロヴィッチさん演出の舞台だ。公演終了後、旧知の仲のケラリーノさんに、秋元が映画や連ドラをやらないかと話を持ちかけていた。才能あるクリエイターはどんどんサポートしたいのだという。

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「僕もいろいろな先輩がきっかけを作ってくれたから、才能のある人にきっかけを作りたいと思います」(秋元)

「ありがたいし、多角的なアプローチの仕方は自分には分からないから、すごいと思います」(ケラリーノ・サンドロヴィッチさん)

ある日、秋元は東京・世田谷区の東宝のスタジオにいた。始まったのは、秋元が出演する「Yakult1000」のCM撮影だ。

別の日には、千代田区の秋元のオフィスを身長185センチの屈強な俳優、本宮泰風さんが訪れた。早速広げたのは、完成したばかりの映画「劇場版 山崎一門~日本統一」のポスター。極道の抗争を描いたVシネマの人気シリーズの映画化。この映画の主題歌「男の貧乏くじ」の作詞が秋元なのだ。

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国民的な名曲から若者をつかむアイドル、そして屈強な男たちまで......時代も世代も超えて秋元の紡ぐ物語が、今日も日本に響いている。

村上龍の編集後記~
秋元さんとは、よく偶然に会う。新幹線のホームで会ったときは、あまりの偶然にびっくりした。秋元さんは、いつも急いでいる。新幹線も、入ってきた車両にすぐに乗り込んだ。お互いに、連れはいない。必ず一人だ。新しいものを作るということは、結局は勇気でしかない、彼はそう言う。こんなものがあり得るのかという道がヒットを生む。踏み出す勇気は、自分が感動すること。だから自分が感動するものを作る。どれだけ売れても「大御所」にならない、それが、秋元康という表現者だ。

<出演者略歴>
秋元康(あきもと・やすし)1958年、東京都生まれ。高校時代から放送作家として活躍。1981年~、作詞家として活躍。1991年、「グッバイ・ママ」で初映画監督。2005年、AKB発足、総合プロデューサーに。2007年、京都造形芸術大学副学長就任。2011年、乃木坂46、JKT48発足。

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