<介護にかかる費用>の平均をアンケート調査。家族のストレスとは?専門家が語る費用捻出のポイント

公開: 更新: テレ東プラス

今回のアンケートの結果やご意見・疑問などを踏まえ、医療・介護に関するコンサルティングを行っているケアポットの代表で、介護にかかる費用についてアドバイスしている髙橋佳子さんを取材。お話を伺いました。

※介護保険を利用した場合の自己負担は、所得によって1~3割と幅があります。以下のお話で例として挙げる費用は、基本的に自己負担が1割の場合です。

Q.給付金などのあらゆる制度を利用した場合、介護にかかる費用負担は、トータルでどれくらいの金額になるのでしょうか?

「生命保険文化センターが2021年度に行った『生命保険に関する全国実態調査』によると、リフォームや介護ベッドの購入などの初期費用平均は約74万円、月々の費用平均が約8万3,000円。介護期間の平均は5年1カ月ですから、合計で約580万円になります。

ただ、介護費用というのは、状態によっても大きく変わりますし、介護の期間も人それぞれです。実際は千差万別のため、平均金額はあくまで目安でしかありません」

Q.初期費用として、まとまった金額が、必要になるのですね?

「初期費用を全然かけず0円という方もいますし、バリアフリーにする場合、どこまでやるかでリフォーム費用が膨らむため、ケースバイケースですね。それに、介護ベッドを入れる際、購入する方もいれば、レンタルを利用される方もいます。

リフォームかかる費用は、上限20万円まで介護保険の対象になります。仮に上限の20万円かけた場合、自己負担は1割の2万円で済むわけです。
注意が必要なのは、先に介護保険の申請をする必要があること。申請前に、リフォームを実施した場合、全額自己負担となります」

Q.在宅か施設かでも、介護費用は大きく違うと思います。仮に自宅介護の場合、要介護認定が上がると、比例して負担額も増えますか?

「家計経済研究所が2016年に実施した、在宅介護にかかる費用についての調査では、要介護3と4では差がほぼないものの、基本的には介護度に比例して、費用負担の平均額は増加します。要介護1の月額平均は3万3,261円、要介護5では7万4,576円です。

介護サービスにかかる費用とそれ以外にかかる金額、大きく2つに分けられますが、介護サービス費用を例にすると、要介護5は2万1,086円で要介護1の7,118円の約3倍。おむつなどの介護用品の費用は、要介護1が6,131円に対し、5では2万4,630円と約4倍です。介護度が上がると、介助する領域も増える上、お金の負担も大きくなっていきます」

施設選びで大切なのは「退去基準」

Q.施設を利用する場合、特別養護老人ホームといった公的施設と、民間の施設では、どれくらい費用に差があるのでしょう?

「最初にかかる入居一時金は、公的な施設なら必要ありません。民間施設では初期費用0円もありますが、その分、月額利用料が高くなるケースもあるので注意が必要です。高額な施設だと初期費用だけで数億円など、提供するサービスや規模で大きく変わります。

月額では一般的に、公的施設が8~20万円、民間だと15~40万円くらい。ただし、この金額以外にも、医療費や日常生活にかかる実費負担があります。民間施設なら他に有料イベント、マッサージや理美容といった外部スタッフが施設を訪れて提供する有料サービスなどがあり、皆さん追加で必要な費用を見落としがちです。

施設に入れば、『あとは月額利用料だけ』と思ってしまいますが、施設を選ぶ際は実費負担や提供している有料サービスについて、担当者としっかり確認し、実際に必要な金額を把握するようにしてください」

kaigo_20220923_04.jpg画像素材:PIXTA

Q.施設選びで、気をつけるべきポイントはありますか?

「月額利用料などの費用を軸に絞り込み、現在の症状から入居基準を確認して、施設を選ぶ方が多いと思います。ただし、重要なのは『退去基準』です。

症状が進んだり、新たな疾患を発症したりして、医療行為が必要になるケースがあります。施設によっては、そうした対応ができず、別の施設へ移る必要が出てくるため、退去となる条件が契約書や重要事項説明書に記載されています。入居時の健康状態は問題なくても、先々の状況を踏まえて、考えることが大切です。また、退去の際、入居一時金などの一部返金があるのか? 運営会社のグループ内で、適した施設への移転などのフォローはあるか? このような点も、契約書できちんと確認しましょう」

費用捻出のコツは「もらう」より「減額」

Q.アンケートでは「介護費用の捻出をどうすればいいのか?」という悩みが、非常に多くありました。

「介護費用は、お子様やご家族が全額負担するのではなく、年金など、介護される本人の収入や資産を軸に、使える金額を考えるのが基本です。仮に資産があっても、認知症になり、判断能力が低下すると、貯蓄などの資産を動かせなくなる可能性があります。

判断能力が不十分になってから成年後見人をつける場合、本人の意思確認ができないため、裁判所が後見人を選任します。家族以外の専門家が成年後見人なるケースが多く、毎月の報酬が必要になるなど費用がかかります。

元気なうちに、ご家族などから任意後見人を選び、公正証書で任意後見契約を結んでおく。貯蓄を家族が動かせるタイプの信託に切り替えるなど、事前の準備ができているかによって、介護開始後の負担が大きく違ってきます。なかなか切り出しにくい、介護の話ですが、ぜひ早めに、家族や周囲の方と話し合ってほしいですね」

Q.介護費用が生活費を圧迫し、要介護者のお子様だけでなく、孫がアルバイトをして家計を助けている…といった意見もあります。

「介護度によって、利用上限が変わる介護保険以外では、自治体ごとの補助金制度があります。ただ、月に1~2万円前後。介護費用の捻出には、こうした補助金などを『もらう』より、負担しているお金を控除などで『減額する』ことが効果的です。

例えば、同居のご家族に収入があり、世帯所得が高いと、介護保険の自己負担が1割ではなく、2~3割と高くなります。そこで、同居したまま要介護者の世帯を分け、住民票上は別世帯とする『世帯分離』の手続きをします。要介護者が年金収入だけで、非課税世帯となるなら、介護保険の自己負担が1割になる他、住民税や国民健康保険料も減額されます。

もう一つ、要介護認定の審査を基にして、自治体の障害者控除を適用し、所得税や地方税を減額できます。介護度によっては、特別障害者手当が受けられる、特別手当支給制度もあるので、自治体窓口に確認してみてください」

まずは地域包括支援センターへ

Q.介護が必要になった際、「どこに相談すべきかわからない」という人も多いです。

「介護が必要な方が住んでいるエリアの地域包括支援センターへ連絡してください。窓口に行かなくても、電話で相談できますし、週末に対応しているケースもあります。『何をどう質問し、相談したらいいのか?』がわからない場合、状況を伝えるだけでも大丈夫です。

まだ介護が必要なくても、65歳以上の方やそのご家族なら『介護に関する、漠然とした不安』にも、利用できる高齢者サポートサービスや必要な手続きを教えてくれます。親御さんに介護が必要なのに、本人が『そんなことはない!』と拒否する…といった、介護に関連する悩みも気兼ねなく相談してみましょう」

良いケアマネに出会うために

Q.介護保険の利用などで、頼りになる存在が介護支援専門員――ケアマネージャーの存在。ケアマネに感謝するコメントがある一方、不満を抱えている意見も見られます。

「介護保険サービスの申請手続きが完了した時、ケアマネの一覧を渡され、ほとんどの人は、『近いから』という基準で選びがちです。こちらの話を聞かず、一方的にプランを押し付けるダメなケアマネもいますが、大事なのは介護を受ける方との相性。

仮に優秀なケアマネでも、得意・不得意があります。地域包括支援センターや自治体窓口で、介護を受ける方が『どういう症状か』『男性か女性か、若い人かベテランか、よく話すか無口な人か…など、どういうタイプの人だと接しやすいか』を伝え、適切な人を推薦してもらうことをお勧めします。

もし、病気や怪我から介護が必要になり、入院や通院している場合は、病院のソーシャルワーカーに相談すると、症状や状況に合ったケアマネを紹介してもらえると思いますよ」

kaigo_20220923_05.jpg画像素材:PIXTA

Q.ケアマネと、コミュニケーションがきちんとできるか? という点で、相性が大切なんですね。

「ケアマネと良いお付き合いができるかどうか、そこには3つポイントがあります。まずは症状や人柄の面においての『相性』。次に、こちらの話をよく聞き、相談に乗って適切なサービスを提示してくれるというケアマネ側の『対応力』。そして、依頼する側が『お金の問題も含め、何でも話すこと』です。

他人に家庭の経済状況を打ち明けるのは、気が引けます。でも、介護費用をどこまで自己負担できるのか、介護しながら働かないといけない…などを伝えなければ、ケアマネは適切なプランやサービスを案内できません。ケアマネ自体の対応力だけでなく、ケアマネに味方になってもらう努力も意識してもらいたいですね」

「まだら」な場合の介護認定

Q.認知症の症状がまだらで、「認定された介護度が、実態と異なる」ケースもあるようです。「調査の時はしっかりしている」場合、どうしたらいいのでしょうか。

「調査員を前に、“大丈夫アピール”する方は多く、よくあるケースですね。その際、本人の目の前で『いつもはできない』と言わないこと。調査員には本人のいないところで、そっと伝える。連絡先を聞いておいて、後から普段の状況を話すなど、介護を受ける方が傷つかないよう、配慮しましょう。

予め『○月○日 こういう症状や行動があった』と普段の状況を書面にし、調査員に渡すとしっかり伝わると思います。同居ではなく、電話などで症状を感じるような場合、『こういうことが〇回あった』といった回数や頻度をできる限り記録しておき、審査の際に渡す準備をしてください。調査時の様子だけでなく、そうした記録があれば、審査の参考にしてくれますよ」

【髙橋佳子(たかはし よしこ)プロフィール】

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ケアポット株式会社代表取締役。医療・介護等に関するコンサルティングを行う中、幅広い知識を活かしたYouTubeチャンネル「ゆるっとかいご」で、介護にかかる費用についてなど、さまざまな情報発信を行っている。

(取材・文/鍬田美穂)

画像素材:PIXTA

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