スーパーでは買えない!~激レア&美味なお菓子ベンチャー:読んで分かる「カンブリア宮殿」

公開: 更新: テレ東プラス

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人気のお菓子のサブスク~美味で珍しい100種の菓子

サブスクとはサブスクリプションの略。毎月一定の金額を払って利用する定額購入サービスのことだ。旬の野菜や、全国選りすぐりの魚や肉が届く定期便タイプのサブスクもあれば、動画や音楽の配信サービスに、季節に合わせて選べる洋服、カメラなど、借り替え放題タイプのサブスクもある。新車に次々と乗れるサービスも登場している。

今や日本人の8割がサブスクを利用していて、今年度の市場規模は1兆円を超える見通しだ。

年末には、その年に最も注目を集めたサービスを決めるイベント、日本サブスクビジネス大賞も開催されている。去年、大賞を獲得したのは、旅のサブスク「HafH」。月額9800円で、全国約1000軒のホテルに3泊まで宿泊できる割安なサービスだ。

また、特別賞には住宅サブスク「ADDress」が選ばれた。月額4万4000円で全国200軒の家をめぐって住むことができる。

埼玉・草加市に住む宮城さんが利用しているのはアートのサブスク「Casié」。1300人のアーティストが描いた原画の中から月額3300円で好みの作品が借りられ、月に一度交換が可能だ。高級ブランドバッグのサブスク「Laxus」も利用中。エルメス、ルイ・ヴィトン、グッチなど、数十万円するブランドバッグが月額7480円で借りられ、交換もできる。

ダイニングセットやガスコンロ、冷蔵庫に炊飯器、お掃除ロボットまで月々で借りている。ほぼ全ての物をサブスクでまかない、その支払いは月9万円にのぼると言う。そんな宮城さんが特にお気に入りのサービスが、お菓子のサブスク、スナックミーだ。

毎回8種類、自分で選んだものではなく、全てお任せの詰め合わせが定期便で届く。サービスを始める際、お菓子の好みをスマホのアンケートで答え、アレルギーなども入力。すると100種類以上の中からAIがその人に合ったお菓子を選んでくれるのだ。送料込みで1箱2210円。

「箱を開けるまで何が届くか分からないサプライズ感があります。開けてみたら『今月も私の好みだ。うれしい』みたいな」(宮城さん)

小さな子どもがいる家庭にも人気だ。岡田さくらさんは、娘の咲ちゃんが2歳の時からスナックミーを始め、4年近くになる。白砂糖や人工添加物を使っていない健康志向のお菓子。しかもコンビニやスーパーには並んでいないものが届く。

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咲ちゃんは「メロンパンクッキー」、サクラさんは十勝産の枝豆を揚げて塩を振った「枝豆ポリポリ」がお気に入り。

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食べ終わったら、味を5段階で評価しスマホで送信。こうすることでAIが学習し、その人の好みに対する精度が上がっていくのだ。

「1カ月目より2カ月目、2カ月目より3カ月目と確かに好みがどんどん反映されていく。だから飽きがこないしサービスをやめようと思うこともありません」(岡田さん)

和菓子、洋菓子、珍味も~協力メーカーは180社

そのラインナップには、皮付きフライドポテトなど珍しい酒のつまみもあれば、ショコラ羊羹や枝つきレーズンなど、他では見かけない商品を取り揃えている。人気のベスト3の第3位はキビ砂糖を使った優しい甘さのパイにチョコレートを乗せた「幸せのリスのしっぽショコラ」。第2位は有機アーモンドの粉末を使ったフランスの伝統的なお菓子「ブールドネージュ(バニラ味)」。第1位はカマンベールチーズクリームを白だし風味のおかきでサンドした「おかき揚げチーズ」だ。

ユーザーの心をしっかり掴み、利用者数は右肩あがりで15万人に迫る。スナックミーの本社は東京・箱崎にある。2015年の創業で従業員は80人というベンチャー企業だ。

社長・服部慎太郎(41)はお菓子のサブスクを始めた理由を「自分では買わないような商品を試して、自分の新しいおやつの好みに気付くことを実現したい。そういう体験ができればいいなという思いで始めました」と言う。

オフィスには甘い匂いも漂う。すぐ裏がお菓子工房になっているのだ。ただし、本社で作っているのは全商品の1割程度。残りの9割は全国のお菓子屋さんやメーカーと共同開発している。

人気ランキングでトップだった「おかき揚げチーズ」は宮城・大崎市の「精華堂あられ総本舗」が製造している。米どころ・宮城県産のもち米でおかきを作っており、これまでもお菓子の大会などで数々の賞を受賞。業界ではよく知られたメーカーだ。そんな会社をスナックミーは口説き落とし、オリジナル商品を共同開発した。

「『こんなものが食べてみたい』とか『こういうものに興味がある』という要望がスナックミーさんから寄せられて我々と一緒に作り上げていく。他にはない商品開発の取り組みの仕方かなと思います」(清水敬太社長)

スナックミーが手を組んだ全国の協力メーカーは180社にのぼる。そうしたメーカーと力を合わせ、毎月約10種類のお試し商品を共同開発しているが、そこには生き残りをかけた厳しい競争もある。

この日は愛知のメーカーから焼き菓子・フィナンシェの試作品が届いた。チーフバイヤーの淺野がメーカーの担当者とオンライン会議スタイルで試食にあたる。こうしてお試し商品を選ぶのだが、この後、最終的に評価を下すのはユーザーだ。食べた後にユーザーが送ってくる5段階評価で、その商品がレギュラーに残れるかどうかが決まる。

協力メーカーから毎月、新商品が提案されるが、それをまずスナックミーが10個に絞り、お試し商品として客に届ける。それを客が採点し、5点満点の平均4点以下ならラインナップ落ち。最終的にレギュラー商品になるのは二つ程度だと言う。

お客さんが書き込むのは点数だけではない。感想を書くコメント欄もある。過去の商品へのコメントには「どうしたんだろうと言うくらいおいしくなかったです」「抹茶ペーストが甘すぎるのと食感が苦手だった」という辛辣なものも。これらも隠すことなくメーカーと共有する。

「確かにハードルは高いと感じます。より良い商品を提案していかないといけないと感じるし、継続していただけることを目標にしてやっていきたいです」(「井桁堂」上杉完さん)

メーカーから門前払い~突破策は足で稼ぐ・電話をかける

東京・江東区の清澄白河に今年4月、スナックミーの実店舗「snaq.me清澄白河」がオープンした。

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ふだんはサブスクでしか手に入らないお菓子が揃い、食べてみたい物を好きなだけ買える唯一の店だ。小さなカップにサンプルが置かれていて試食もOKだ。

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「サブスクだと好きかどうか分からず試しにくいところがあります。ドライフルーツが苦手だと思っていたのに食べたらすごく好きになったという方がいたりする」(服部)

お試しの冒険をしながらサブスクを頼むきっかけに、というわけだ。

慶應義塾大学大学院で微粒子の研究に打ち込んだ服部は卒業後、日本総合研究所を経てボストン・コンサルティング・グループに勤務。寝食を忘れ、仕事に没頭した。2013年にはDeNAに入社し、ベンチャー企業への投資業務を担当した。

そこで多くの起業家と出会い、自分も挑戦してみたくなる。そして思いついたのが食のサブスクだった。全国各地の生産者がこだわりの食材や加工食品を売るマルシェがきっかけだった。

「マルシェの魅力は新しい発見、出会い。その部分をECでも実現できないかと。マルシェに来て『今日は何があるかな』と入口に立つ瞬間と、箱を開ける瞬間は、結構近い感覚だと考えています」(服部)

2015年、3人の仲間で会社を立ち上げた。最初はマルシェなどで食品を買い集め、客の好みに合わせて詰め替え、送っていた。会員は順調に増加。すると「こんな商品はないか」という声が増え、探すより作ったほうが早いと、オリジナル商品の開発を目論む。

しかし、協力メーカー探しは難航した。「なかなか理解してもらえず、一番辛かった時期」と服部は言う。例えば「無添加のお菓子を作ってお客様に届けたいんですが」と伝えると、「賞味期限がどれだけ短くなるか知ってんのか?」と素人扱いされる。お菓子のサブスクはまったく理解されず、食品業界の知識不足もあって門前払いが続いた。小さなお菓子メーカーから中堅まで30社以上と交渉したが、全て断られた。

創業メンバーの一人で、協力メーカー探しの責任者だったCOOの三田村健一(41)は当時をこう振り返る。

「断られただけなら良かったのですが、説教された。『業界の知識もないのにこの業界に入られたら困る』と言われ、悔しい思いをしました」

「やっと取引が始まったと思ったら『何か変だぞ』と。賞味期限がすごく短い商品が送られてきた。規模も小さかったしなめられたみたいなこともありました」(服部)

オリジナル商品と言いつつ、売れ残って賞味期限の迫った別の商品が送られてきたこともあった。

そんな中、スナックミーを後押ししてくれる店が現れる。東京・笹塚にあるパンと焼き菓子の店「渋谷まる福」だ。最初は難色を示されたが、なんとか賛同してもらえたのだ。

「一生懸命さと熱心さが伝わってきました。ゼロから始めて形にすることは、大変さもあるが喜びもある。志があったので、私たちもそれに応えたいなと」(代表理事・加藤敦さん)

そして出来上がったのが、スナックミー初のオリジナル商品、シリアルの一種の「グラノーラ」。白砂糖の代わりにキビ砂糖を使うと、健康志向のお客さんに受けて大ヒットした。この時に服部は悟ったという。

「面白がってくれたり、一緒にやろうという方と関係を深めていくという考え方にしています」(服部)

以後、全国を歩き回り、共感してもらえるメーカーを探し回った。交渉した会社は500社以上。そして現在、180社と手を組むことができた。

こうした汗をかくアナログな手法は顧客サービス改善の場でも見られる。

服部の電話の相手はスナックミーのユーザー。服部は創業以来、毎週欠かさず自ら電話取材をしている。熱量の高いユーザーを選び「今、どうして欲しいのか」を直接、聞き出していくのだ。

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「我々が想定していなかった使い方や、思わぬ言葉に気付かされることもあります」(服部)

スナックミーはコロナ禍で苦境に立たされたメーカーを支える役目も果たした。

長野・飯田市の老舗菓子店「はと錦」。店主の原隆澄さんは「冠婚葬祭がなくなってしまい、和菓子がきつく影響しました」と言う。結婚式などの引き出物が消え売り上げが激減。廃業がチラつくまでになっていた。しかし、スナックミーとの共同開発が復活につながる。

この日、訪ねてきたのは、チーフバイヤーの淺野僚太。リモートで試食会を重ねた新商品候補「ふかふかどら焼き珈琲」の最終試食にやってきたのだ。

他の風味を消してしまう小豆の代わりにインゲン豆で白餡を作り、そこにコーヒーを練り込んだ。さらに生地にもコーヒーを含ませ、混ぜ方や火加減などの工夫でふっくら焼き上げた。

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「完璧です。あとはユーザー様に届けて実際に評価していただいて、レギュラー商品として残っていくかどうか」(淺野)

「一生懸命やった甲斐があったなと思います」(原さん)

サブスクだけじゃない~銀座進出&フードロス削減

東京・中央区の銀座ロフト。1階にあるセレクト食品売り場の一角にスナックミーのコーナーが新設された。並んでいるのはサブスクでは買えない新たに立ち上げたブランドの商品。これらは「snaq.me清澄白河」清澄白河の実店舗でも販売している。

例えば、「クラフトアロマコーラ」(450円)は、炭酸水を注ぐだけで出来上がる、砂糖や人工甘味料を使わず天然スパイスで仕上げた健康的なコーラ。チキンに塩・胡椒だけで作ったジャーキー「JQ」(498円)も。素材そのものの味が楽しめると言う。女性に人気急上昇中なのがプロテインバー「CLR BAR」(378円)。大豆ではなくソラマメを原料に使っている。

お菓子のサブスクにとどまらず、新ブランドを続々と立ち上げ、攻勢に出たスナックミー。新たな販路を模索し、規模の拡大を図っている。目指すは売り上げ2000億円だという。

一方で服部は、いったん送った商品について「『食べられなそうなものがあったら、送料を負担するので送り返してください』と。それを寄付する仕組みを作りました」と言う。

スナックミー本社に送り返してもらったお菓子は、中身を取り出したら、ダンボール箱に詰めて、希望する児童養護施設や福祉施設に寄付している。こだわりのお菓子を無駄にはしない。贈った先から感謝の声もたくさん届いている。

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~村上龍の編集後記~
服部さんは、ハードワークで有名なコンサル会社に入り、まともな食事ができなかった。せんべいなどで我慢しているうちに、子どものころ楽しみだったおやつを思い出し、会社を作った。だから徹底している。客への電話インタビュー、アナログの極致、創業時から続けている。わたしははじめてD2C、つまり「直接消費者へ」というビジネスを知った。間にあるものは全部中抜き。革命的だ。ただスナックミーは単なるD2Cではない。サービスを作り込まない。徹底的に改善していく。

<出演者略歴>
服部慎太郎(はっとり・しんたろう)1981年生まれ。2006年、慶應義塾大学大学院卒業後、日本総合研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、DeNAを経て、2015年、スナックミーを設立。

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