【3行まとめ】
・ドラマ24「雪女と蟹を食う」第4話「似たもの同士」をプレイバック
・彩女が死ぬためにこの旅についてきたと知った北は、彩女の冷たい表情に何も言えなくなってしまう
・函館へ向かうフェリーに乗り込んだ2人。彩女は北に「本当は死ぬのが怖くなったのではないか」と問う
毎週金曜深夜0時12分からはドラマ24「雪女と蟹を食う」(主演:重岡大毅 ジャニーズWEST)を放送!
「テレ東プラス」では、第4話「似たもの同士」をプレイバックする。
※下記ネタバレあり
痴漢冤罪により全てを失い、人生に絶望した男・北(重岡大毅)は自殺を図ろうとするが、あと一歩踏み切れずにいた。
テレビでグルメ番組を見た北は「人生最後の日は北海道で蟹を食べたい」と思い立ち、図書館へ。そこで見かけたセレブ妻・雪枝彩女(入山法子)に狙いを定め、家に押し入り、金を要求するが、彩女に促されるがまま情事を交わしてしまう。
彩女に「私も食べたいです、蟹...」と告げられた北は、戸惑いながらも2人で不思議な旅を始めることに。
◆
彩女が死ぬためにこの旅について来たと知った北。
「旦那が構ってくれなくて寂しいなら、浮気の一つや二つしてやればいい。それで彩女さんが死から逃れられるなら...!」と必死に訴えるが、彩女はゆっくりと北を見据え、「それは本当の幸せじゃない」と言う。
「本当の幸せって...?」
「終わりにしたいの、もう。繰り返すこの日常を。私というつまらない人間の物語を」
彩女の冷たい表情に、何も言えなくなる北。
2人は青森から津軽海峡フェリーに乗り、函館に向かうが、ベッドとテーブルつきの客室で、気まずい空気が流れる。
「私、少し外で風に当たってきますね。北さんは?」
「俺は船酔いしそうだから、やめておきます」
「そう、行ってきます」
彩女は客室を出て行き、北はベッドに寝転がる。そしてポケットから、彩女の夫・雪枝一騎(勝村政信)が書いたベストセラー小説「蝉時雨」を取り出し、ぼんやりと眺める。
(旅の途中、都合のいい妄想が何度も俺の頭をよぎって、何度も消えていった。彩女さんが、時々旦那の目を盗んで俺と会ってくれるなら...それだけのことだったのに)
「...彩女さん?」
ふと不吉な予感が脳裏をよぎり、がばっと起き上がった北は、客室から飛び出す。
「バカだ、俺!」
甲板への階段を必死に駆け上る北。彩女は死にたがっているというのに、どうして一人で行かせてしまったのだろう。
甲板にたどり着き、辺りを見回すが、誰もいない。北は不安と恐怖に襲われ、ふらふらと手すりに近寄る。そして絶望的な気持ちで海を見下ろすと...
「北さん?」
甲板の入口に彩女が立っていた。北は思わず駆け寄り、彩女の手首をぎゅっとつかむ。
「痛いわ」
安心しつつ、何も言えない北。2人はロビーに移動し、向かい合って座る。
「土左衛門ってさ、全身水吸ってぶよぶよになって、すごい顔になるんだって。だから、入水はやめよう」
「きっと、どんな死に方もきれいなものじゃないわ」
真剣な眼差しを向ける彩女。
「北さん、正直に答えてください。怖くなったんですか?」
「違う、そんなことじゃない」
「いいですよ。北海道に着いたら、あなただけ飛行機で東京へ戻っても」
「違う、ちょっと彩女さん...!」
彩女の腕を強く握る。
「残りのお金を半分あげる。30万円...それであなたがやり直せるかどうかはわからないけど。やり残したことがあると感じているうちは、死なない方がいいわ」
今まで見たことないほど冷淡な顔の彩女。
(出会った時、俺は彼女を雪女のようだと思った。でも今は...)
握っていた彩女の腕に違和感を感じ、目線を落とす。すると彩女の手が骨になっているような錯覚に襲われ、ゾッとした北は、思わず彩女から離れる。
(これが"死"から逃れる最後のチャンスかもしれない...)
一瞬心が揺らぐが、彩女との思い出が次々と頭に浮かび、北は意を決したように彩女を見つめる。
「俺、彩女さんのことを酔狂な人だと思ってた。体を差し出して、強盗にわざわざついてきて、お金まで出して優しくしてくれて...」
「......」
「今だったら分かる。強盗でも死神でも、一人になるくらいだったら側にいてほしい。俺は彩女さんに側にいてほしい。彩女さんしかいないから...」
黙り込む彩女に、北は必死の様相で続ける。
「だから約束してよ。絶対一人で死なないで。そしたら俺も、彩女さんを一人にしないから」
しばらく見つめ合う2人。
「じゃあ、あなたも約束して」
ようやく口を開いた彩女が、北の頬に優しく手を添える。
「もっと楽しそうな顔をするって。せっかくの夏休みなんだから」
ゆっくりうなずく北に、微笑む彩女。
「せめて旅の間は笑顔でいたいの」
小指を差し出す彩女に北も応じ、指切りをする。客室に戻り、愛おしそうにキスをし、ぎゅっと抱き合う2人。
(俺たちは、わずかな生気を振り絞って、必死にお互いを求め合う。この熱を失ってしまえば、人間である定義すら失ってしまいそうだ)
(この体温を抱えたまま死ねたなら...それが『本当の幸せ』なのかもしれない)