熱海で人気のドラァグクイーン・六拳龍子。波乱万丈な生き様を経て本当の自分に...「目の前にいる”その人”のために何かがしたい」

公開: 更新: テレ東プラス

――ジャズダンスから始めて、どのようにしてポールダンスに出会ったのでしょう。

「たまたま友達のショーを観に行ったら、男の人がポールダンスをしていて、『メンズでもポールダンスするんだ!』と感動しました。しかもその方は、偶然にもサークルの先輩で、ここでも繋がりが。自分もやりたいと思いましたが、当時はメンズのポールダンサーは少なくて、レッスンスタジオも紹介制。唯一行けたスタジオに通い始め、そこからイベントや発表会などに出演させてもらったり、自分から積極的に声をかけて二丁目に踊りに行ったりしました。そうしていくうちにいろいろな繋がりができ、ポールダンスの世界がどんどん広がっていったんです」

――最初は趣味だったダンス…本気で取り組むようになったのはいつ頃ですか?

「ポールダンスを始める前の出来事ですが、大きなイベントに出演することになり、本番直前に先輩に見てもらったんですよ。そうしたらボロクソにダメ出しされたの。悔しくて悔しくて、そこから本気でダンスに取り組むようになりました。
『もっと表現力を増やしたい』と思った時に出会ったのがポールダンス。私は負けず嫌いなので、負けを味わうと『何くそ! 絶対に見返してやる』と奮起するタイプ。美容専門学校の時もいつも1位だったのに3位になったことがあり、悔し泣きしながら練習したことも。一度ハマったらとことん突き詰めたくなってしまうんです」

――そこからわずか数年でダンスのインストラクターになるまで成長。ダンスを始めてから、以前のやさぐれていた気持ちは無くなりましたか?

「葛藤した時期はあります。一時期はダンスをやりながらビル清掃、カフェやマッサージのバイトなど、あらゆることを掛け持ちしていて、30歳を目前にして、ダンスを趣味にするか仕事にするかすごく悩んで、『もういいや、全部辞める!』と思ったことも。新しいことを探そうかとも思ったんですけど、ある時、『やっぱりダンスが好きだわ。それならダンスでやっていこう!』と思って心を決めました。やっとダンスで生活できるようになったので、あの時決断して良かったと思っています」

jinseigekijo_20220428_07.jpg▲ダンスを始めた当時の龍子さん

――ダンスをやりながらそれだけのお仕事を掛け持ちするとは…龍子さんは本当にパワフルなんですね!

「生活のために、合計7個くらい仕事をしていました。フットケアや指圧、骨格矯正もやっていたので…だから私ってトータルビューティー的なの(笑)。でもその経験があったから、例えば本番前にダンサー仲間がけがをしても、一時的なケアをしてあげられる。そういう要員として指名が来たこともあります。
きちんと知識が欲しいので研修にも行きましたし、やはりストレッチが大事と感じてヨガの資格も取りました。自分がダンサーだからこそ、ダンサーの要望が分かるんです。マッサージを始めたのも、自分がよくけがをする人間だったから。最初は自分のために得ようと思った知識でしたが、結果として仲間の役に立った。本当に全てが繋がっていて、ご縁だなと感じます」

――ドラァグクイーンとして踊るようになったきっかけは?

「大阪にドラァグクイーンのお姉さま方がやっているバーがあり、そこに踊りに行った時、ドラァグクイーンメイクを教えてもらいました。自分でも研究するうちに、お姉さま方から『あんた覚えが早いわね』『日に日に美しくなってるわよ』と言ってもらえるようになって…それが魔法の言葉よね。どんどん楽しくなって、『あ、私こっちの方かも』と。
そしてその時、お姉さま方に、『龍ちゃんは東京の人だけど、根っこの部分が関西人ね』と言われたんです。確かに東京にいた時は、どこか無理していた部分もあったので、なんだかとっても腑に落ちました。東京だけに縛られず、複数の拠点を持つのが自分の性に合っているみたいです」

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――義理人情に厚い関西の気質が合っていたのかもしれませんね。

「そうだと思います。実は人と接するのも喋るのも苦手なんですよ。だけど根本的には人が好きだった。美容師時代もお客様がきれいになるようにいろいろな提案をしましたし、マッサージもその人が少しでも良くなるように最善を尽くしました。目の前にいる“その人”のために、何かをしたいんです」

――恋愛面でも尽くすタイプですか?

「恋愛に関しては…冷めてる方かも(笑)。プライベートで指図されるのは嫌だから、恋愛だけは自分が自由にできる方がいい。だから、心が休まるような人と一緒にいたいですね。でも昔は、ダメンズに引っかかることが多かったです。見た目はちゃんとしてて仕事は真面目だけど、酒癖が悪かったり(笑)」

――なるほど~。そんなダメンズを含め、恋愛経験は豊富?

「どうかしら~。1週間で別れた人も含めるとしたら、人数は多いと思う。出会いの場も多かったし、ステージに立つと目立つから」

――初めて本格的な恋愛をしたのはいつですか?

「18歳くらいだったと思います。当時は今ほどLGBTQに関する情報もなくて、自分は病気なんだと思っていました。ようやくパソコンや携帯電話が普及し始めた頃、LGBTQに関する情報を得て、男性同士が出会えるSNSの先駆けのようなものを見つけました。私も登録して、1人の男性と連絡を取り合うようになりましたが、当時はビデオ通話もないので文章のみのやり取り。写真を送ったりは出来たので、相手の雰囲気はなんとなく分かりました。
会ってみたら好みのタイプで、晴れてお付き合いすることになりましたが、1週間後に『俺、やっぱり女の子が好きだわ』って…。彼はバイセクシュアルでした。
そこから別の人と付き合いましたが、長続きしませんでしたね。経験が乏しかったので、恋愛するのが下手だったんです。でも、歳を重ねるにつれて徐々にお付き合いできる期間も伸び、今は人並みの恋愛ができるようになったと思います」

――先ほどお店のお客さんも、龍子さんに会うなり「この間会いに来たのにいなかったんだよ~」と話していましたね。龍子さんとお話していると本当に楽しいし、初対面の人でも心を開いてしまうような人間力があると思います。仕事をする上で大切にしていることがあれば教えてください。

「そもそも人を笑わせることが好き。よく喋るしよく飲むので、お客様からは『お前、楽しいな』と言われます。ひとつだけ言うとすれば、お客様に楽しんでもらうために、まずは自分が心から楽しむ。自分が楽しいからこそ、お客さんがついてきてくれると信じています。
だから自分がやりたいことをやりたいし、『みんなに楽しんでもらいたい!』という気持ちは常に持っています。ダンス教室の生徒さんからの提案に乗っかってイベントを開くこともありますが、『やってみたら、私の方が楽しくなっちゃった!』なんてことも多いです(笑)」

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――何でも心から楽しむという精神が素晴らしいですね。頑張り屋の龍子さんですが、今後の展望があれば教えてください。

「いつか自分のお店を持ちたいという夢があります。昼間はカフェで夜はバー。ポールを設置して、ダンスショーもできるお店なら最高ね♡ 大阪と東京で開店するのが夢です」

――六拳龍子さん、ありがとうございました!

老若男女問わず、また会いたくなる人…ドラァグクイーンのポールダンサーはまだ珍しく、最初はイロモノ的に注目する人も多いのかもしれない。しかしその人柄に触れて分かったのは、楽しいキャラクターだけではなく、繊細な優しさと心遣いだった。
取材中、龍子さんが何度も口にしていたのは「人との繋がり」という言葉。仕事を心から楽しみ、「私は人間テーマパークなの!」と笑顔で答えてくれたのが印象的だった。

【六拳龍子 プロフィール】
神奈川県出身。美容師などを経てダンスの世界に進み、パフォーマーへと転身。ジャズヒップホップを学び、イベントや舞台などで活動する傍ら、2014年からポールダンサーとしても活動開始。ジャズダンスとポールダンスの融合を目指し、様々なイベントに出演中。
2017年「ALL JAPAN POLE PERFORMANCE CONTEST」アマチュア部門優勝
2019年「国際アジア太平洋ポール&空中アクロバット」プロフェッショナルメンズ部門準優勝
その他受賞歴多数。

熱海のNEWエンターテイメントショークラブ「GOLD RUSH(ゴールドラッシュ)」、「SWAG OSAKA」でポールダンサーとして出演中。
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ポールダンサー・龍としても活動。「e'mbellir poledance studio」、「PoleDanceBeautyFitnessStudio Liteez」では、インストラクターも務める。
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(取材・文/みやざわあさみ)

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