名門校の知られざる姿を、生徒や親、教師など、さまざまな視点を通して紐解く情報ドキュメンタリー「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東 毎週月曜夜10時)。「名門とはいったい何か?」常識を打ち破る教育現場に密着する。
この春、新学期が始まり夢に向かってスタートを切った学生も多いのではないだろうか。番組では、昨年末から名門中学を受験する少年とその家族に密着し、「合格までの物語」を見届けた。果たして少年はどのような受験生活を送り、家族はどうサポートして複数の名門校合格を達成したのか? 今回は「家族で戦う!難関中学受験の道...僕はこうして合格しましたSP」と題し、受験生を持つすべての保護者に贈る特別編の一部を紹介する。
昨年12月中旬、中学受験を間近に控えた親子に出会った。受験勉強の追い込み真っ最中の杉江和真くん(取材当時12歳)だ。和真くんが通っていたのは、「希学園」。高い進学実績を誇る中学受験専門塾で、和真くんは連日、山﨑信之亮学園長直々の熱血指導を受けてきた。志望する6校はいずれも全国屈指の難関校ばかりだ。和真くんが自分の意志で中学受験を決意したのは小学4年生のときだった。
これが受験生当時の和真くんの1日だ。食事と寝る時間以外はすべて学習時間にあてられている。1日の勉強時間はなんと15時間! 両親との約束はただひとつ、「1日7時間は睡眠をとること」。
そして迎えた受験本番。ラスト1カ月は大好きなゲームも封印、勉強漬けの毎日で塾からの帰りが深夜11時を過ぎることもあった。それでも毎日最寄り駅まで迎えに来てくれたお母さんと、和真くんの帰りを待って一緒にお風呂に入り励ましてくれたお父さん。妹や弟たちも協力し、家族一丸となってこの受験に挑んできた(昨年12月当時の詳しい内容はこちらの記事で)。
いよいよ1校目の合格発表日。両親からもらった合格祈願のお守りに祈りを込め、パソコンで合否照会する。結果を見て、思わず和真くんを抱きしめるお母さん。母と子の涙の理由は...番組で。
6校受験した和真くんだが、4校もの難関中学に見事合格! 多くの東大生を生んだ名門校「開成中学校・高等学校(以下、開成)」にも合格した。受験票と合格発表の番号を何度も照らし合わせ、喜び合う家族。家族にとっても中学受験と向き合った2年間だった。合格を祝って家族で食卓を囲んだ夜、和真くんは幼いきょうだいに「今までいろいろなことを我慢してきてくれてありがとう」と、感謝の気持ちを伝えた。
改めてご両親に2年間受験生の親として一番大変だったことについて伺った。
お母さんは「親である自分をコントロールできないことが一番つらかった。イライラして、だんだん子どもの受験が親の受験に変わってきてしまって。それはいけないとわかっていながら、『和真が勉強しないのは自分のせい』と思ったり、必要以上に声を荒げてしまったり...」と、当時の正直な思いを明かしてくれた。
そんな時期を乗り越えることができたのは、和真くん本人に「受験をするという意思があった」からだという。「そこは父親として大事にしたかったところです。子どもをサポートするために時間を使って準備して、その行為に対して親がリターンを求めてしまい、子どもにあたってしまうという構図が出来上がる。それは仕方ないと思うが、だからこそ本人の受験したいという意思がないと、家族のフォーメーション自体が崩れてしまう。我が家には本人の意思があったから、受験を乗り越えられたんだと思います」。
悩んだ末に、開成に入学することを選んだ和真くん。決め手となったのは、自由な校風だという。開成といえば中高一貫の男子校で、東大合格者数は41年連続日本一。伝統行事の運動会も有名だ。
和真くんも楽しみにしている運動会は、すべて生徒たちによって運営され、組織やルール作りまで1年がかりで準備する。名物の「棒倒し」をはじめ、進学校のイメージを覆す激しい団体競技が繰り広げられるため、万一に備えて医師が待機するなど、その対応まで配慮されている。
入学までの準備として、スクワットと腹筋を始めた和真くん。実は、開成の合格者説明会で配られた「入学式までの準備」というしおりを見ると、運動会に向けた体力づくりの指示が記載されていたのだ。
制服の採寸を終えた日、お父さんから和真くんへ合格祝いとしてスマートフォンが贈呈された。大好きなゲームも存分にできそうだが...ここでお父さんから「使える場所と時間を決めよう」と提案が。話し合いの結果、ルールをまとめた誓約書にサインする和真くん。「時間」と「場所」。シンプルな約束事は受験時の「1日7時間は睡眠をとること」という約束と共通している。親子で相談し、約束事を決めたら、あとは子どもに委ねて見守るという信頼関係があったからこそ、受験も乗り越えられたのかもしれない。和真くんならきっとこの先もご両親との約束を胸に、充実した学生生活を送るにちがいない。
そして迎えた入学式。コロナ禍とあって入学式に出席できる保護者は1人だけ。入学式にはお父さんが参加し、お母さんは正門前で父子を送り出した。開成の制服は昔ながらの詰襟の学ランだ。開成のシンボルともいえる「ペンと剣」の校章入り黒ボタンをつけた制服姿の和真くんは、少し誇らしげで頼もしくなったようだ。「中学受験をして良かった。苦しかった時もあるけど、もう大丈夫です!」。
夢を育む名門校での日々が、幕を開けた。
番組では他にも、受験当日や合格発表後の和真くんの様子、入試前日に希学園の山﨑学園長が贈った言葉、祝勝会のもようなどを紹介する。
次回の「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東)は、「神奈川・栄光学園...3割が東大へ!英語討論日本一の頭脳も」と題して送る。
今回の名門校は、栄光学園中学高等学校。「神奈川御三家」のひとつに数えられる、創立75年の伝統校だ。毎年、約3分の1の生徒が東京大学へ合格することでも知られている。栄光学園があるのは神奈川県鎌倉市。大船駅から徒歩15分。山に囲まれた自然豊かな環境に建築家・隈研吾氏の監修で建てられた開放感あふれる校舎がそびえている。敷地面積は東京ドーム2個分以上というから驚きだ。
校内に入ると、心落ち着く聖堂や蔵書数4万5000冊を誇る図書室、漫画コーナーもあるリラックススペースなど充実の環境が整っている。そして栄光学園らしさがにじみ出ているのが職員室。廊下と直結している部屋には文字通り壁がなく、生徒と教師が気軽に会話を交わしている。授業以外でも様々なアドバイスをしてくれる教師との近さが生徒の自主的な学びをサポートしているのだ。
そんな中、カメラは英語ディベートの強豪として知られる英語部に注目。キャプテンは英検一級の資格を持つ、3年生の岡村隆聖くん(取材時は2年生)。栄光学園に入学したことで英語の面白さに目覚めたそうだ。目下の目標は高校生活最後の英語ディベート大会で、日本一になること。高1の時に別の全国大会で優勝したが、最近はチームが不調だという。その原因は? そして迎えた大会当日...、果たして結果は?
どうぞお楽しみに!