活火山に指定されている富士山。
南太平洋のトンガで発生した大規模な噴火は、ようやく支援物資が到着し、インフラの復旧が本格化しつつあります。ただ、こうした火山災害は、日本もひと事ではありません。国内には111もの活火山があり、中でも、富士山が噴火した場合は、首都圏など広いエリアに甚大な被害が及ぶ可能性が指摘されています。噴火への備えは万全なのか、現場を取材しました。
日本一高い山、富士山。実はいつ噴火してもおかしくない、活火山に指定されています。実際、富士山は何度も噴火を繰り返しています。最後の噴火は、1707年の宝永噴火でした。そして今、再び富士山噴火のXデーが近づいていると、マグマ学の専門家である神戸大学の巽好幸客員教授は警鐘を鳴らします。
「富士山はバリバリの活火山。マグマだまりが満杯で、2011年の巨大地震以降、地盤の様子などから考えて、富士山の噴火はいつ起きてもおかしくないような状態だ。もはや臨戦態勢に入っていると考えた方がいい」(巽客員教授)
富士山が噴火した場合、首都圏にはどんな影響があるのでしょうか?
「東京23区は、2センチから数センチ程度の火山灰が降る。ライフラインは一時的に大きなダメージを受ける」(巽客員教授)
政府がまとめた富士山噴火を想定した報告書では、火山灰がたった3ミリ積もるだけで、交通の麻痺や大規模停電、断水などが起きる可能性を指摘しています。では、企業はどんな対策をしているのでしょうか?
去年、防災マニュアルを見直したのがJR東日本です。
「レールに列車位置を検知する信号の電流が流れている。(火山灰が)0.2ミリとか、1ミリ以下でも影響が出てくると考えている。そういった影響が考えられるときには列車の運行を中止する」(JR東日本 安全企画部の本廣竜三さん)
もし富士山の噴火が起こった際には、数日から数週間、鉄道が止まる可能性があるといいます。そこでJR東日本が開発したのが、レールに積もった灰を除去する専用のカートです。首都圏を中心に44台を配備しました。
さらに、企業活動の維持に備えているのが三菱地所です。
「新丸ビル、丸ビルには数万人程度が働いている。富士山噴火時にどう対応するか『行動手順書』を作成しました」(三菱地所 管理・技術統括部の宮島啓成さん)
特別に案内してもらったのがビルの空調施設。
「こちらは空調機の中のフィルターになります。(入居企業の)電子機器がいろいろ入っているが、そこに灰が付着すると、故障の原因になると思われる。必要なのは部屋に灰を入れないこと」(宮島さん)
通常フィルターの交換頻度は年に1回程度ですが、噴火時には最短30分ごとに交換できるよう、予備のフィルターを備蓄する予定です。
「噴火はあまり経験がない事象ですので試行錯誤で進めています。なるべく早く作り上げたい」(宮島さん)
首都圏より大きな被害が想定されるのが富士山周辺の地域です。静岡県富士市は噴火した場合には溶岩が流れ込む可能性があり、早い場所では噴火から数時間で溶岩が到達するといいます。
去年、国や自治体のハザードマップが改定され、大規模噴火で想定される溶岩の噴出量がそれまでの2倍に引き上げられました。そこで、地元のハウスメーカー小野田産業では津波洪水用シェルターの開発を進めていました。価格は250万円で、既に個人や保育園などに15個売れたといいます。
「アメリカの国防総省で塗られている塗料と全く同じものを使用しています。衝撃に強い」(小野田産業の小野田良作社長)
本当に強度は十分なのでしょうか? 実験映像を見ると、10m以上の高さから車を落としても、シェルターは潰れません。ただ、火山が噴火すると、このような火山弾が降り注ぐことも考えられます。そこで小野田産業では火山弾にも耐えられるよう、シェルターを改良中です。
「この上に緩衝材を置いてはねのける。第一次噴火に耐えられればいい。溶岩が収まった時に逃げる。そこをどう耐えられるか」(小野田社長)
同社では3月の試験で成功すれば、火山シェルターとして正式に販売を開始する予定です。
相次ぐ自然災害。富士山噴火への備えも待ったなしです。