抗議活動を行うケロッグの従業員。
日本では、コロナ禍の巣ごもり需要をつかんだほか、以前話題となった漫才のネタにもなったコーンフレーク。アメリカでは国民食となっていますが、実は今、食卓から消えてしまうかもしれない事態が起きています。一体なぜなのか、取材しました。
アメリカ・ペンシルベニア州ランカスター。トラのキャラクターで有名なコーンフレーク「ケロッグ」の工場前で、男性が持つプラカードには「賃金と手当の闘い」と書かれていました。この工場では従業員によるストライキが1ヵ月にわたって続いています。ケロッグの従業員約1400人がアメリカの4つの工場でストライキを実施。24時間体制で会社への抗議活動を行っていたのです。
ストライキ中のケロッグの従業員ジョンソンさんは「(コロナ禍で)従業員たちはアメリカの朝食を支えてきた。当初ケロッグはわれわれをヒーロー扱いしたが、何かを求めた途端にゼロ扱いだ」と話します。
ケロッグは、コロナ禍の厳しい状況でも多くの工場を稼働し、好業績を上げました。工場で働き続けた従業員たちは、雇用条件の見直しを求めていましたが、会社側と折り合いがつかず、先月、ストライキに突入したのです。
ケロッグは工場の稼働を続けるために「オフィス従業員や外部の労働者を雇い対応している」としていますが、ジョンソンさんは「工場は今は何も作っていないと思う。建物の屋根から出ている蒸気が少ないし、コーンのにおいもしない」と話します。一部の工場は十分に稼働していないとみられ、今後数ヵ月間フレークなどの供給が制限されるとの懸念が広がっているのです。
ストライキの背景には経済再開とともに進んだインフレもありました。アメリカでは物価が5ヵ月続けて5%以上上昇。その中で賃金が上がらないことへの不満がたまっているのです。
「物価は3〜4%まで上がっているが、賃金は2%しか上昇していない」(ジョンソンさん)
今月1日、業を煮やしたケロッグの従業員たちが、バージニア州にあるホテルに集まりました。ストライキから約1ヵ月。初めて会社側と従業員が交渉の場につきました。交渉は2日間続きましたが決裂し、組合はストライキの続行を決めました。
実は今、賃上げを求めるストライキは全米に拡大しています。その件数は今年に入って189件。特に10月から急増していて、今後もその勢いは続きそうです。