老舗の染物屋さんがピンチに
羽織袴に使われる反物を“黒”に染める、江戸時代から伝わる伝統技法「黒染め」。明治時代に定着し、最盛期には100軒以上の工房がありましたが、現在は10軒ほどになっています(※2020年3月時点)。
その中の一つに、「馬場染工業」があります。

創業は明治3年。敷地内には千利休も茶の湯に用いたと言われる名水で、鉄分が多く染物に適している「柳の水」が湧き出ており、それを使って染物業を代々営んできました。
一番のウリは“秀明黒”という色で、一般的なものと比べるとその差は歴然。“黒よりも黒い、カラスの濡れ羽色”と称され、各界の著名人にも愛用されました。

“秀明黒”の反物は、かつては一か月に3万反ほど売れたこともあり、そのおかげで「馬場染工業」の最盛期の年商は4億5,000万円にも上りました。
しかし、とあることで同業者に技術が流出してしまい、結果的に4,500万円もの赤字を背負うことになってしまいます。
そのピンチを救ったのは、五代目として工房を引き継いだ女社長の“女性ならではのアイデア”でした。
ピンチを救った女社長のアイデア
そのアイデアとは、“洋服の黒染め”。
日焼けしたり、シミができた洋服を黒に染め直すというサービスです。
依頼を受けると、生地の素材・重さ・寸法などを測ってカルテを作成。
それから染料で染まらない革などのパーツを取り外した後、洋服に合った配合の染料を作り、その中に“水洗いした洋服”を沈ませていきます。

さらに企業秘密の染料を投入し、染料がなじむまでひたすら手を休めずに1時間半ほど回し続けます。
「黒染め」された洋服は、美しい色合いになり、まるで新品のような仕上がりに。

シルクなら“深い黒”、綿なら“白っぽい黒”…のように、その洋服が持つ最大の黒を引き出す技術により、お店には依頼が殺到。お客さんからも「より一層オシャレになる」などと評判です。
今では月に100着ほどの依頼があり、年間1,200万円を売り上げるようになった「馬場染工業」。その裏には、確かな技術と“女性ならではのアイデア”がありました。
坂上&指原のつぶれない店
日曜よる7:00~