TBSで放送中の金曜ドラマ「フェルマーの料理」で、高橋文哉が演じる天才数学少年・北田 岳は、志尊 淳演じる天才シェフ・朝倉 海との出会いで料理の道へと進んだ。そこは二つ星レストラン「K」。オーナーシェフの海をはじめ一流の料理人ばかりが集まっているが、数学的思考で彼らを驚愕させるレシピを導き出していく。
では素人でも、タイミングや温度、分量などを守れば、失敗せず、ちゃんとおいしいものをつくれるのだろうか? そんな素朴な疑問を本作で料理監修を務める田村浩二さんにぶつけてみた。
プロのレシピ通りにつくったら、完璧に再現できる?

――料理人の皆さんは、食材を見ると岳のように数式が浮かんでくるのでしょうか?
僕自身、数字や数式が思い浮かぶことはありません(笑)。ただ、食材の香りを感じたり食べたりすると、パッと料理が思い浮かぶことは多々あります。それは僕が料理人として多くの食材に触れ、香りの情報を蓄積していることが大きいかもしれません。また第3話でも触れていたように、食材のうまみは数値化されているのですが、僕はその成分を調べることも好きで。そのような情報があるので、食材を見ただけで「この食材とこの食材は合いそう」と頭の中でレシピを構築できる感覚はあります。岳のすごさは、それらを言語化する力があるということだと思います。
――ではレシピ通りに料理をすれば、素人でもちゃんとおいしくつくれるのでしょうか?
タイミング、温度、分量などを守れば、そのレシピの8割は再現できると思います。
ではなぜ2割が欠けてしまうかというと、食材には“変数”があるからです。たとえばスーパーの特売で購入したものと、とれたてのものでは、同じ種類の魚でも脂の乗り方や味の感じ方は異なります。そんな変数があることが料理の難しさであり、楽しい部分でもあります。
また料理には文字化されていない、共通認識が多いのも事実。たとえば塩を振るタイミングや量を厳密に、細かく説明しているレシピはほとんどありません。しかし実は、塩をするタイミングを変えるだけで、味は大きく変わるんです。こういう部分を細かく説明するだけでも、料理は確実においしくなると思っています。
――やはり確実においしい料理をつくるには、膨大な知識が必要なのでしょうか?
いろいろな食材を食べた知識が頭の中にインプットされているから、食材を食べたときに感覚的に組み合わせを思い付く。これは多くの料理人が無意識にしていることですし、“欠けている2割”を補うためには必要な感覚だと思います。
いつもの料理が数倍おいしくなるコツを伝授!

――そこがプロと素人の差なのですね。やはり素人が、いますぐ簡単に、おいしい料理をつくるのは難しいのでしょうか?
いつもと同じ食材、同じ料理工程でも、料理が格段においしくなるコツ。それは、しょうゆ、酒、塩など、いつもの調味料を、“ちょっといいもの”に変えること。これだけです!
“いい調味料”をいつもと同じタイミングで同じように入れると、劇的においしくなるはずです。
いわゆる高級食材をそろえるよりも、時間も予算もかからないと思います。しかもそれ以外の材料やつくり方はいつもと同じでOK、というのは、結果としてコスパがいいのではないでしょうか。
もしそれで味の違いや料理の楽しさが分かったら、次は肉や魚、野菜などの食材にこだわってみてもいいですし、さらに腕を磨くために料理教室に通うなど新たなチャレンジをしてもいいと思います。

――なるほど! おいしい料理がつくれるようになったら、料理が楽しくなりそうです。
近年、コロナ禍の影響などで、飲食店から離れる人が増えてしまいました。お店を訪れる人だけでなく、調理師という職業を志す人も減ったと聞いています。このドラマを見た方が、料理の楽しさやすばらしさはもちろん、“料理人ってかっこいい仕事だな”と思ってもらえるといいなと思います。
■番組概要
[タイトル]
金曜ドラマ『フェルマーの料理』
[放送日時]
毎週金曜よる10:00~10:54