『VIVANT』のセットに込められた“日本らしさ”と“引き算”の発想

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TBSでは毎週日曜よる9時から日曜劇場『VIVANT』を放送中。堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、二宮和也、松坂桃李、役所広司ら豪華俳優陣が集結した、限界突破のアドベンチャードラマだ。

前編に続き、『VIVANT』の世界観を支える美術プロデューサーのやすもとたかのぶ氏、美術デザインの串岡良太郎氏に、セット制作の裏側について話を聞いた。

日曜劇場『VIVANT』美術スタッフインタビュー後編日曜劇場『VIVANT』美術スタッフインタビュー後編

――謎の組織・“テント”のゲル(遊牧民の住居)の製作秘話を教えてください。

やすもと:この作品に関しては、海外での展開を見据えて“日本”というものを前面に出したいという福澤監督の思いがベースにありました。商社マンでありながら乃木さんの自宅は日本家屋だったり、外で食事をするシーンは、もんじゃ焼きや甘味処だったり。劇中の料理も和食に注力しました。ゲル内で食事をとるシーンも、モンゴルの食材を混ぜながら、日本人であるベキに合わせた料理を工夫してあります。
串岡:リーダーであるノゴーン・ベキ(役所広司)が日本人であることからも、“和”を織り交ぜたセットにしたいという意図があります。日本とモンゴルの融合を念頭におきつつ、“城”をモチーフにしたデザインプランを構築していました。モンゴルでのロケハンやロケを経てさらにイメージを固め、最終的に今の形になりました。“テント”は武装勢力でもあり無防備にはしたくなかったため、内側に柵の役割を果たすルーバーを入れ、馬防柵のように敵が簡単に攻め込めないような構造にしました。2階部分の窓も外部を見てそこから攻撃もできる城の要素を取り込んでいます。色を多用せずモンゴルの自然な木の感じを出し、なるべくシンプルにしています。

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――“テント”が残すマークのデザインにはどのような意味が込められているのでしょうか?

やすもと:“テント”のマークは“乃木家”というキーワードをベースにしながら、オーソドックスなデザインでスタートし、いろいろなパターンをデザインしました。ありそうで、どこにもないマークというのは難しく、こうしたデザインは少し変更するだけでかなり印象も変わってくるので、福澤監督と打合せを重ねながら、試行錯誤を繰り返しました。結果、複雑な形のものはやめて、シンプルかつインパクトのあるイメージということで、最終的にあのマークになりました。どこにもないオリジナルの乃木家の家紋です。

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――モンゴルの空気がセット制作において活かされたところはありますか?

串岡:モンゴルに行っていなかったら、今回のデザインは半分も描けてなかったと思います。実際に行ってみると、日本で得られる現地の情報(ゲルの内装や生活環境、空気など)とは違う部分も多かったですし、やはり実際に見ることでイメージが湧きました。
やすもと:言語も理解できず、文字も読めないので、向こうの空気は感じるしかありませんでした。でも、結局それが良い発想につながったのだと思います。
串岡:急な悪天候など自然現象に触れた経験も発想のヒントになりました。ウランバートル郊外で何度か食事をしたのですが、強風のため店内にも砂が吹き込んでいて床も窓も砂でザラザラでした。でもそれが日常なんです。そうした風情は絶対に持ち帰ってセットに反映したいと思いました。日本の感覚だとどうしても綺麗なセットになりがちなのですが、あえて床に砂や枯れ草を撒いたり、窓際に砂の吹き溜まりを作ったりして、異国であるということを表現しました。

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――『VIVANT』という作品で感じたことを教えてください。

串岡:「こんな空間を作ってみたい」という思いを、かなり実現させていただけたので、美術としての“充実”を、画面から感じていただけたら嬉しいです。バルカのレンガ壁や乃木の家の玄関アプローチの石、その他目立たない部分まで力を入れています。
やすもと:『VIVANT』では、絶対に撮影ができない場所を、セットで上手く作れたということは、作品を構築する上でも大事な要素だったと感じています。今回の経験で、やろうと思えば意外とできないことはないんだなということを再確認できました。もちろん、照明部さんの灯や、撮影部さんの撮り方などのお力も必要なのですが、僕らのように空間を作りたいと思っている人間にとっても、とても興味深い作品だと思います。

『VIVANT』の壮大なスケールを支えている美術スタッフたち。そうした支えの上に成り立つ物語。そのクライマックスに注目だ。

■番組概要
[タイトル]
日曜劇場『VIVANT』
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[放送日時]
毎週日曜よる9:00~9:54
※第9話は79分SP

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