9月4日放送の『クレイジージャーニー』(月曜よる9時)に出演したバーテンダーの鹿山博康さんに、お話を伺いました。
鹿山さんは「バー・ベンフィディック」を経営しながら、畑で植物を育て、海外旅にも出る。時間配分などはどのように?
もちろんバーがメインで、畑に行くのは週1~2回です。バーが夜中1時に終わったら帰って寝て、朝7時に起床。8時から午後2時頃まで畑仕事をして、少し仮眠をとってからまた店へという感じです。海外に行くのは月1回くらいで、その時は店を閉めています。

今回の旅の目的の一つインドネシアの伝統的ハーブ飲料・ジャムウに興味を持ったきっかけは何ですか?
カクテルに似ているんですよね。あちらでは日常的に飲むようで、作っているのは大抵おばちゃんたち。家でハーブやスパイスの液体を混ぜて独自のジャムウを作り、それを市場などに持って行って、お客さんの症状(体の不調など)に合わせてさらに調合して完成させます。ちょっとバーテンダーみたいでしょ?
僕はバーテンダーなので、いったいどうやって作るんだろうと非常に興味があって、今回ジャムウおばさんに弟子入りするつもりで行きました。漢方のようなジャムウをヒントに唯一無二のお酒ができたら面白いなって。僕が海外によく行くのは、そんなふうに自分の目で見て、試して、そのインスパイアを持ち帰るためです。
実際にジャムウを味わっていかがでした?
にが、あま、うまかった(笑)。甘味が強いものや、酸っぱいものなど味はいろいろあるんです。その中に苦いだけの液体もあって、それが僕はすごく理にかなっているなと思いました。人の味覚の中でも苦味と感じる種類はとても豊富で、酸味や甘味、塩味よりもはるかに多い。毒=苦いので、人間が本能的に持っているセンサーなのかもしれません。苦味を1滴足すことで味に奥行きが出るんですよ。

ジャムウおばさんに弟子入りして印象的なことは?
彼女の仕事ぶりを見て、僕がふと「バーテンダーみたい」と言ったんです。そうしたら現地の通訳が「バーテンダーをどう思う?」って僕のことをおばさんに聞いたら、その答えが「ジャムウみたいね」でした。名言でしょ?お互いの印象がピッタリ合ったのがうれしかったですね。
そのジャムウおばさんは10代の頃からずっと同じ市場でジャムウを売っているそうです。場所を点々と移す人もいるようですが、彼女は「私がここにいれば、私のジャムウを飲みに来てくれる人がいる。『おかげで健康になったよ』と言ってもらえるのがうれしい」って。それこそバーテンダーと一緒で僕が店を構えているのと同じなんですよね。常に自分がそこにいることで、また行ってみようかと思ってもらえる。バーテンダーとジャムウおばさん、すごく似ています。
今回の旅のエピソードはありますか?
いっぱいありますが・・・飛行機に乗り遅れちゃったことかな。ジャカルタからジョグジャカルタへのフライト時間をおそらくスタッフの方が1時間勘違いしていたんです。僕は海外で飛行機に乗り遅れたことが何度かありますけど、あれは本当に悲しい気持ちになりますよ(笑)。今回は代替便がなくてスケジュールも詰まっていたので、次の目的地まで9時間かけて車で移動しました。それはそれで道中にいろいろあって有意義だったし楽しかったですよ。

現地の珍しい食べ物にもトライされたそうですね。
水色の玉子を食べました。お酒やハーブに関係ないものが新しいカクテルのヒントになることはよくあるし、僕は普通の人よりもお腹が丈夫で、何でもいけちゃう口なんです。それに、明らかにまずそうなものを食べてみたいタイプなので(笑)。
若いバーテンダーや、これからバーを楽しみたいというお客様にも「まずいものをたくさん飲んで」ってよく言うんです。まずいものを知らないと、何がおいしいかの比較ができないから。例えばいろいろなマティーニを100杯飲めば、自分の中においしさの軸ができるし、バーに行くのがより楽しくなるでしょう?そうして最高においしい一杯に出会えた時は感動しますよ。
僕は店でも面白いなと思いついたら営業中に作って、お客様に出します。さすがに合格点を下回るものは出しませんが、味見して「たぶん、いける」と思えば出す!そこから微調整でレベルアップしてくということを人知れずやっています(笑)。
今回も即興でカクテルを作りましたが、ひらめくのでしょうか?
そうですね。ジャムウを軸に何ができるかなと考えていたら降ってきました。似ている飲み物はやはり相性がいいので、「ジャムウに近いものは何があったかな?」と連想ゲームのように頭の中で組み合わせていくと新しいものが生まれます。知識も経験もアップデートされているので、数年後にはまた違う味のカクテルになっているかもしれませんね。
番組情報
『クレイジージャーニー』
毎週月曜よる9時から放送中