TBSでは、毎週火曜よる10時から福原遥&深田恭子のW主演ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』を放送中。福原が演じるのは、キュレーターになるという夢に向かって歩き始めた直後に予期せぬ妊娠が分かった18歳・仲川有栖。そして深田が演じるのはアラフォーで仕事に生きて恋を後回しにしてきたアートスペシャリスト・成瀬瞳子。この2人が年の差を超えた"シスターフッド(=女性の絆)”を築き、それぞれが訳アリ男子と恋に落ちるというラブストーリーだ。
今回は、本作の美術史監修を務める、成城大学・文芸学部芸術学科・教授、喜多崎親氏にインタビュー。有栖が目指しているキュレーター、アートにまつわる仕事や勉強内容について話を聞いた。
学芸員とキュレーターに違いはある?
学芸員とは、博物館や美術館、そして動物園などにおいて、その資料の収集、保管、展示などを行う高い専門性を必要とする職業を指します。
学芸員になるためには、資格の取得が必須。取得するには「学士の単位を有し大学で博物館に関する科目の単位を修得した者」などの決まりがあります。ただ専門性が高い仕事なので、資格のほかに、普通は歴史学や民俗学、美術史など、自分の専門分野で大学院の修士課程まで修了していないとなかなか学芸員として採用されません。県立や国立の美術館などに勤めている方は、公務員や財団の職員の場合がほとんどです。
一方のキュレーター(curator)は、もともと「世話や保管をする人」と言う意味の言葉。
王室や貴族などが集めた美術品や書籍などのコレクションを管理する人たちを指す言葉として17世紀くらいから使われはじめました。近代になって一般の人にそれらのコレクションが公開されるようになると、公開に関連する業務もキュレーターが行うようになったのです。
つまり、学芸員とキュレーターはもともと同じ職業を指していました。ところが最近、両者に違いが出てきたのです。

最新のキュレーター事情
近年、インデペンデント・キュレーター、つまり美術館や博物館に属さずにアート関係の企画展を行っている人たちの活躍が目立つようになりました。インデペンデント・キュレーターには資格はありませんが、アーティストやコレクターとの人脈、交渉力や社交性、コミュニケーション能力が必要なため、彼らの多くは、美術館などで学芸員としての経験を積んでいます。
インデペンデント・キュレーターには、アーティストとコンセプトを相談しながら、屋外に一時的に展示する作品や自然の変化を組み入れた作品など、美術館に所蔵して永続的に保管をする必要がない作品を中心に企画展を行っている人も少なくありません。
またキュレーターの役割を突き詰めたとき、「企画のコンセプトに合うアーティストやアート作品を選定し、多くの人に伝える」という意味から、近年、インターネットで情報を選択して発信するような人たちのこともキュレーターと呼ぼうという流れも出てきました。
ちなみに嵐莉菜さん演じる光峯綾香は、大学院生ながら展覧会のキュレーターとしてデビューするという設定で、学部生から一目置かれていますが、それは経験と人脈がものをいうキュレーター業界では現実にはなかなかない話です。祖父の画廊で行われる展覧会とはいえ、相当優秀だという設定になっているのでしょう。

キュレーターとも違う? アートスペシャリストの存在
深田恭子さんが演じている瞳子はアートスペシャリストという肩書きになっています。一般に広く用いられているものではありませんが、アート関連のオークションを運営する会社や美術展を企画する会社などで、アートにまつわる専門的な仕事をしていることをわかりやすくするために用いられているのでしょう。
瞳子は、広告代理店で活躍していたところ、アート関連の事業を立ち上げるタイミングで社長・黒澤祐一(髙嶋政宏)から引き抜かれたという設定。大学卒業後も独学でアートの勉強をしていたというエピソードが語られていますが、学芸員やキュレーターのように美術品の内容を熟知しているというよりも、高いコミュニケーション能力を生かしてアーティストや美術館との人脈を築き、マネージメントしているのだと思います。
「美術史」と「博物館学」の違いは?
福原遥さん演じる有栖が大学で専攻しているのは美術史。これは絵画や建築、彫刻、そして工芸などの美術作品を歴史的に考察し研究する学問です。たとえば、ひとつの絵画について、いつ、誰が、どこで描いたのかだけでなく、モデルは誰なのか、どんな目的で描いたのか、どうしてそのように描いたのかなどの謎に迫っていく。同じモチーフを描いた作品だとしても、画家が影響を受けた文化や流行、価値観などが違えば、構図も色使いも筆運びもまったく変わります。わかりやすく言えば美術史はその理由を探求する学問です。
一方、博物館学というのは、博物館や美術館での実務に必要なことを学ぶ、学芸員資格取得に必要な学問です。博物館や美術館の理念や収集品の管理、施設の運営、また展示の方法などを学びます。

喜多崎氏曰く、「学芸員やキュレーターは美術作品についての幅広く、深い知識が求められる専門性の高いうえ、常に募集があるわけではないことから狭き門の職業です」とのこと。しかも有栖の場合、子どもを育てながら夢をかなえようとしているのだから、かなりのいばらの道となるだろう。それでも、子どもを産むことも亡き母と語った夢をかなえることも、諦めない有栖。瞳子をはじめとする周りの人たちの力を借りながら、歩む有栖を、最後まで応援したい。
■番組概要
[タイトル]
火曜ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』
[放送日時]
毎週火曜よる10時~10時57分